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三浦雅士・評 『鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史』=片山杜秀・著

 (講談社・3456円)

 もう二昔前にもなろうか、レコード会社、ナクソス・ジャパンの企画「日本作曲家選輯(せんしゅう)」に収録された作曲家の新鮮な顔ぶれに惹(ひ)かれ、出るCDを次々に買い集めたことがある。戦前戦中の日本人作曲家の活動が分かる企画なのである。だが、買い始めて驚嘆したのはこのシリーズの解説を担当していた片山杜秀というライターの文章で、次第にむしろその文章のために買い求めるようになった。みな、細かい字でぎっしり数頁(ページ)も続く、四百字詰めで四十枚にもなろうかという力作評論で、調査の緻密と博識に圧倒された。拡大コピーして自分なりに製本したが、そのまま一冊の立派な作曲家論集になった。

 大澤壽人の「神風協奏曲」も深井史郎の「ジャワの唄声」もこのシリーズで初めて聞いた。いや、初めて知ったのである。疑いなく、戦争協力が露(あら)わになるのを恐れて戦後長く隠蔽(いんぺい)されてきたのだ。ちなみにCDの演奏はともにヤブロンスキー指揮のロシア・フィルハーモニーで、日本人でも日本の演奏団体でもない。21世紀になってなお抑圧が続いていたということなのだろう。大澤の協奏曲など特攻隊とはまったく…

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