◆『ドナルド・キーンのオペラへようこそ! われらが人生の歓(よろこ)び』=ドナルド・キーン著、中矢一義訳・構成
(文藝春秋・2160円)
日本文学研究の巨大な存在だったドナルド・キーンは、クラシック音楽好きで、とりわけオペラの熱狂者(ファン)だった。メトロポリタン歌劇場(米ニューヨーク、略称メト)は、自分の第二の家といってもいい、というほどである。この本は、そういう熱愛者のオペラへの愛着の記録であるいっぽう、オペラの魅力を読者も享受するように、と語りかけている、心やさしい勧誘の本でもある。
第一章オペラとの出会い、第二章オペラ徒然草は、自分の熱中が他人にも受け継がれることを願って、近年語った事どもの断片を中矢一義氏がていねいに翻訳したものであるようだ。言葉の端々に、オペラへの熱中がにじみ出ている。
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