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ときにはぶらりと音楽を

アマオケの選曲:その肆

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遠藤 靖典

 前回まで、選曲の制約条件として挙げた、①団員のしたい曲、②団員の技術、③団の編成、④会場の規模、⑤指揮者の好み、⑥ソリストや特殊楽器奏者の目星――のうち、①から③を中心に書いた。今回は残りの④から⑥についてまとめて書いてみようと思ったが、やはりアマオケの選曲として比重が大きいのは①から③までであろう。④以降も重要ではある。しかし、④については、選んだ曲ができる会場を借りればいいだけの話であり、⑤についても、選んだ曲を振ってくれる指揮者を探せばいいので、シビアな制約条件ではない。⑥については、選んだ曲を弾いてくれるソリスト、特殊楽器奏者は案外なんとかなるものである。

 これで話は終わり、とこの原稿を書く少し前までは思っていた。が、あと一つ、重要なファクターを漏らしていたことに気付いた。いや、これまで言及してはいるので、漏らしたわけではないが、制約条件に入れてはいなかったのは当方の落ち度である。それは⑦予算。「なにを当たり前のことを」とお叱りを受けそうだが……。

 それを改めて考えさせられた契機は、この7月にエキストラで某アマオケの舞台に乗ったことである。そのアマオケ自体と言うより、演奏会後の、聴きに来てくれた友人たちとの会話であるが。そのアマオケは団員を90人前後擁しており、特に管楽器が充実しているので、しばしば大編成の曲を手掛ける。筆者が主に活動しているアマオケとは比べるべくもない。いつも素晴らしい会場で練習を行い、本番と同じ会場で本番前日のGP(ゲネラルプローベ、最後の総練習のこと)を行う。そのためにはそれなりの予算を計上せねばならない。そのアマオケの日常のたゆまぬ努力と団員の協力あってのものであるが、団員の数も大きく影響しているであろう。と言うのも、団員が多ければそれだけ大規模な予算を立てることができるからである。そして、予算規模が大きくなれば、特殊楽器が必要となっても手配することが容易となり、そもそも管楽器を含めた団員数が多いので、大規模な曲において必要な演奏者が確保できないということがない。一方、筆者のアマオケは団員が30人前後である。そこでざっくりと予算を考えてみた。

 練習が12回としよう。その練習のために自治体所有の会場を使うとして、会場費を1回1万5000円とする。それに本番のホールが15万円。全て本番指揮者が練習してくれるとし、1回3万円の指導費、それに本番に10万円と仮定すると、ここまでで79万円。他にもろもろの雑費を6万円とすると85万円の支出となる。一方、団費を3万円とすると収入は90万円であり、エキストラ(トラ)代として使用できるのは5万円となるので、トラに交通費として5000円(アマオケの相場)を渡すとすれば10人のトラを確保できる計算になる。しかし会場費が1万5000円では収まらないこともあるだろうし、指導費が3万円以上のこともあるだろう。そうすると、実際のところ通常のトラはなかなかお願いしにくくなり、団員と交通費なしでご協力いただけるトラだけで演奏会をしなければならなくなる。結果、そのメンバーでできる曲しか候補に挙がらない。端的にいうと、ない袖は振れぬ、のである。そして、そのような曲は以前に言及した作曲家のうち、ハイドン、モーツァルト、ベートーベン(「運命」「田園」「合唱付き」を除く)、シューベルト(「未完成」「グレート」を除く)、それに技術的には難しくはなるがメンデルスゾーン(「讃歌」「宗教改革」を除く)に限定され、この中で演奏会のメインとなる曲を探さなければならなくなる。選曲が予算に完全に依存してくるのである。これを解決する方法は団員を増やすことであるが、増やしたら増やしたで、今度は別の意味で選曲が制約を受けることになる。だからどの楽器を増やすかはそのオケの将来構想をしっかり見極めたうえで決定しなければならぬ。

 ここまで数回に分けてアマオケの選曲事情について見てきた。結局は金という世知辛い話になってしまったが、オケではなく室内楽をする分には、もっと気軽に曲を選ぶことができる。うん、アマチュアの室内楽選曲という話題もありだな。ということで、次回はアマチュアの室内楽における選曲について書いてみるかもしれない。違う話題になるかもしれませんので、その際にはご容赦ください。

筆者プロフィル

 遠藤靖典(えんどう・やすのり) 大学教授。専門はデータ解析。教育・研究・学内業務のわずかな間隙(かんげき)を縫ってヴァイオリンを弾き、コンサートに足を運ぶ。

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