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PMF芸術顧問クライヴ・ギリンソン氏特別インタビュー

インタビューに答えるギリンソン氏

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 今年で30回目の開催となったパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)。この創設に深く関わり、現在も芸術顧問を務めるニューヨーク・カーネギーホールの芸術監督兼総支配人のクライヴ・ギリンソン氏をインタビューしPMFの現在、そして未来について聞いた。取材はヴァレリー・ゲルギエフ指揮PMFオーケストラの東京公演(8月1日、サントリーホール)の翌日午後、東京都内で行った。(聞き手 宮嶋 極)

 ――昨晩、PMF芸術監督のゲルギエフ指揮によるPMFオーケストラの演奏会が行われました。メインはショスタコーヴィチの交響曲第4番、その感想からお聞かせください。

 ギリンソン(以下、G) ショスタコーヴィチの4番はどんなオーケストラにとってもかなりの技術とパワーを必要とする難しい作品ですが、素晴らしい演奏をしてくれたと思います。この作品は1936年、当時のソ連の市民が置かれていたさまざまな状況に対する思いが込められています。その時代の厳しさ、残酷さ、人々の苦しみなどすべてを網羅した曲だと私は考えています。中でも最大のテーマは平和への思いでしょう。昨晩の演奏はそれを力強く表現できていたと感じています。

 ――私の印象では毎年、世界各国からオーディションで選抜されるアカデミー生たちのレベルがここ数年、急速に向上してきたように感じています。創設当時から関わっているギリンソンさんはどう評価されますか?

 G 世界的に若い音楽家の水準は大きく向上してきています。私はチャイコフスキー国際コンクール(チェロ部門)の審査委員を務めていますが、チェロに限らずすべての楽器において、若い音楽家たちのレベルの向上ぶりは目覚ましいものがあると感じています。それはPMFでも同じです。PMFではマエストロ・ゲルギエフや素晴らしいコーチ陣による尽力も、レベル向上に寄与しています。さらに札幌の音楽施設の充実ぶりも実力のある若手を集めるのに大きな効果を発揮しているのではないでしょうか。札幌コンサートホール・キタラや札幌芸術の森などで音楽をやってみたいということが、若い音楽家たちの参加動機のひとつになっていることも見逃せません。この30年間におけるこれらの集積がPMFの世界的評価につながり、その結果、優秀なアカデミー生が集まるようになったのです。

 ――かつてクラシック音楽の世界においてアジア系のプレーヤーというと日本人が中心でした。創設時の1990年と比較するとPMFのアカデミー生の中にも韓国や中国からの優秀なメンバーがかなりの数を占めるようになりました。PMFに限らず米国のオーケストラの日本公演を見ても同様ですが、これはこの30年間で中国や韓国の音楽家のレベルが急速に向上したことの表れと捉えることができますか?

 G 現在、PMFオーケストラでは日本出身のプレーヤーの割合は全体の約20%で、国別では依然最多です。その後に韓国や中国系の方が続くようになりました。米国のオーケストラの状況を見ると分かりますが、中国や韓国から移住してきた方の子どもや孫が中国系、韓国系の米国人として幼少の頃から高度な音楽教育を受けられるようになりました。その結果、優秀な中国系、あるいは韓国系の米国人音楽家が増えたわけです。それが今の現象につながっているのでしょう。これはオーケストラプレーヤーに限ったことではなく、ソリストの分野でも同様のことが当てはまりますし、さらに米国だけではなく欧米のどこの国でも東アジア出身の方たちをルーツに持つ音楽家が増えています。

 ――来年2020年でゲルギエフの芸術監督の任期が満了となります。続投か否か、または新たな監督を選任するのか、間もなく検討が始まりますが、バーンスタインの理想を受け継いでいくという意味において、PMFの芸術監督にはどんな音楽家がふさわしいとお考えですか?

 G 最終決定は理事会で行われますが、私が考える重要なポイントは指揮者として、教育者として多大なるエネルギーと熱意を持っているかどうかです。若者の才能を見極め、教育をし、そしてよい音楽家に成長させるために支援することなどを大切に考え、それに熱意を注げる音楽家ですね。バーンスタインはまさにそうした芸術家でありました。若者の才能を見いだし、育んでいくのがとても巧みでした。

 ――前回お話を伺ったのは2017年ですが、この間、PMFに何か変化がありましたか? 良くなった、あるいは悪くなった部分も含めてお感じになっていることはありますか?

 G マイナスの方向へ後退していることはありません。すべてのプロジェクトは常に前進しなければ、あとは後退のみとなりますが、PMFについては確実に前進を続けています。例えば昨晩の演奏会。マエストロ・ゲルギエフは毎回興味深い作品をアカデミー生に課題として与えます。ショスタコーヴィチの交響曲第4番はどんなオーケストラにとっても難曲で、若者には非常にチャレンジングな課題でもありますが、とても素晴らしい演奏に仕上がっていました。指揮者が若い音楽家たちを魅了し、そこから素晴らしいものを引き出していくという理想が、昨晩の演奏にも実現されていました。これこそがPMFが前進し続けていることの証しといえるでしょう。

 ――PMFは日本で行われる大きな音楽祭のひとつです。そこで、日本ならではの特徴を前面に打ち出すために、例えば武満徹ら日本人作曲家の作品を取り上げるとか、邦楽楽器とのコラボレーションを行うなどの必要性についてどうお考えになりますか?

 G 日本文化の要素を反映させるのはとても良いアイデアですね。日本で開催ということを考慮すると武満を含めて日本の音楽の伝統を教育にも取り入れていくことは価値あることだと思います。

 ――カーネギーホールの総支配人に就任し14年が経過しました。この間、マネジメントの部分で多くのアーティストとの関わりがあったと思いますが、最も思い出深い出来事を教えてください。

 G とてもたくさんある中で、最も印象に残っているもののひとつは2010~11年シーズンにカーネギーホールで「カーネギーホール・ジャパン・フェスティバル」を開催したことです。小澤征爾さんが芸術監督を務めてくださり、一緒に仕事ができました。クラシック音楽だけではなくて日本のさまざまな分野の方々をお招きしてのフェスティバルでした。もうひとつ、6年前になりますが米国にユース・オーケストラを創設したことです。PMFより少し若い層の16歳から19歳の子どもたちが、毎年夏に5、6週間一緒に過ごし、2週間リハーサルをして2週間ツアーを行う。マエストロ・(アントニオ・)パッパーノの指揮でロンドンのプロムスやドイツ・ハンブルクなどヨーロッパ各地を回りました。台湾や香港にも行ったのですよ。私も明日からナショナル・オーケストラのジャズ・ツアーに同行するために北京、上海へと旅立ちます。こういうものを作ることができたのも私にとっては大きな出来事でした。

 ―—米国のユース・オーケストラ、いつの日か日本でも聴けるといいですね。最後にPMFの支援者やファンの方にメッセージをお願いします。

 G 運営の皆さんが尽力なさって成功に導いてくださっているわけですが、私も芸術顧問として関わることができ、とても光栄です。地域の音楽文化振興に大きな貢献をしていることに加えて、日米をはじめ国際親善にも多大な役割を果たす重要なイベントとして定着しました。日本の音楽ファンの皆さんには、PMFを誇りにしていただきたいと思います。

【略歴】

 クライヴ・ギリンソン 1946年にインドのバンガロールで生まれた。11歳でチェロを始め、ロンドン大学入学後、音楽を学ぶために英王立音楽院に入学し直しチェロを専攻。フィルハーモニア管弦楽団を経て1970年、ロンドン交響楽団にチェロ奏者として入団。1976年に同響の理事に選出され財政部長を務めた。84年に同響理事長に就任し、2005年に現職に就くまで務め、レナード・バーンスタインら大物アーティストとの関係構築に力を注ぎ、同響のブランド力向上に貢献した。一方、ニューヨークでは街をあげての大規模音楽イベントの創設や若手音楽家の育成を目的にした教育プログラムにも力を入れている。PMF創設にも深く関わり、現在も芸術顧問を務めている。

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