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ときにはぶらりと音楽を

最近オケで手掛けている曲の話

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遠藤 靖典

 今回は室内楽の選曲について書いてみようとも思ったが、選曲ネタばかり続くのもなんなので、最近オケで手掛けている曲の話をしよう。

 筆者が今関わっているアマオケのうち、あるオケではハイドンの交響曲第101番「時計」とメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」、また別のオケではハイドンの交響曲第104番「ロンドン」とショスタコーヴィチの交響曲第15番というプログラムが組まれている。どちらにもハイドンが入っているのは偶然であろうが、どちらも交響曲2本だけ、という点は面白い。以前書いたことがあるが、オーソドックスなクラシックコンサートのプログラムは前プロ、中プロ、メインの3本立てで、前プロに序曲、中プロに協奏曲、メインに交響曲とすることが多い。料理で言えば前菜、パスタ、肉料理、というところであろうか。この二つのオケのプログラムはそうではなく、いうなれば魚料理と肉料理で終わり、という感じである。

 ハイドンのこれらの交響曲はどちらもフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの2管編成で、乗り番の点からバランスが良い。更に言うと、前者のオケのプログラムはどちらも第1楽章が6/8拍子だし、後者のオケのプログラムは両作曲家の最後の交響曲であるだけでなく、ショスタコーヴィチにはハイドンの「ロンドン」が引用されていることで、そのつながりも面白い。このように、プログラムを組む時に編成や難易度のみならず、曲同士の関連性や曰(いわ)くにも思いをはせると、聴衆に対しても訴求力が出てくる。

 ただ、難易度という観点から見ると、両者のオケのプログラムは共に大変である。まず前者のオケのプログラム。これは選曲に携わった筆者の責任でもあるのだが、6/8という拍子はアマチュアには正直キツイ。6/8拍子はギャロップのリズムになるが、一説によると、これは騎馬民族が得意とするリズムであり、4/4を得意とする農耕民族にはつらい、とのこと。民族の違いが影響しているかどうかは不明であるが、実際難しい。ハイドンはまだ何とかなるが(希望的観測)、メンデルスゾーンの方は本当に大変である。4分音符+16分音符+16分音符が延々と続き、同時並行で16分音符六つを入れているパートとキッチリはまらない。どうしても後ろの16分音符二つが詰まる。弦楽器の技術的には「弓を止めない」「4分音符で力まない」等あるのだが、技術的に制約の多いアマチュアのこと、頭では分かっていても……となる。

 実はメンデルスゾーンは相当に難易度の高い曲といえる。若い頃、複数のプロから「メンデルスゾーンは非常に難しいモーツァルト」と聞いたことがある。これはかなりデフォルメした言い方であり、要は、技術的にかなり難しいがその技術的困難さでメンデルスゾーンの音楽の持つガラスのような美しさを壊してはならない、ということなのであろう。確かに、管楽器はもちろん、弦楽器も各パートがむき出しになり、しかもそれが精妙に絡み合うので、メンデルスゾーンの素晴らしい演奏に接すると、透明な水の中を魚が泳いでいるように感じる。編成的には大管弦楽を必要としないので中規模のオケでも手掛けやすいとは言えるが、それがハイドンとの組み合わせで勝負!となると、ちょっと意欲的すぎたか、という気持ちも起きないではない。とはいえ、やると決まっている以上はやるしかないし、出た音に責任を持たないアマチュアのこと、恐れを知らず、でもよかろう。

 後者のオケのプログラムに入っているショスタコーヴィチの交響曲第15番も、これがなかなかに難しい。ショスタコーヴィチと言うと交響曲第5番や祝典序曲が有名なので、そのイメージが先行し、ついつい金管楽器が咆哮(ほうこう)し、打楽器がにぎにぎしく、と思ってしまうが、第15番までくると全然違う。オケというより規模の大きな室内楽曲と言った方がふさわしく、非常にデリケートな曲となり、精緻な音程と正確なリズムが要求される。つまり、ごまかしが利かない。ただし、弦楽器のうちセカンド・ヴァイオリンだけは正直暇なので、得てしてセカンド・ヴァイオリンに初級者の多いアマオケにとっては、その点は救いになる。

 そろそろ残暑も影を潜め始め、芸術の秋の気配が漂ってきた。これから演奏会シーズンに入り、特に筆者のように演奏の好きな人間にとっては大層に待ち遠しかった季節の到来となる。アマチュアにとってはうまくいってもうまくいかなくても演奏できればうれしい。今年はどんな演奏会となるのか、今から楽しみである。

筆者プロフィル

 遠藤靖典(えんどう・やすのり) 大学教授。専門はデータ解析。教育・研究・学内業務のわずかな間隙(かんげき)を縫ってヴァイオリンを弾き、コンサートに足を運ぶ。

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