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クラシックナビ インタビュー

ソプラノ歌手 角田祐子インタビュー~東響とリームの「道 リュシール」を日本初演

リュシールを演じる角田祐子

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 ナチス・ドイツへの抵抗運動がテーマのウド・ツィンマーマン「白いバラ」を日本初演し、昨年話題を呼んだ、飯森範親率いる東京交響楽団とソプラノ歌手の角田祐子。その両者が来年1月、ヴォルフガング・リームのソプラノと管弦楽のためのオペラ「道 リュシール」を日本初演する(25日・サントリーホール)。本作はゲオルク・ビューヒナーの「ダントンの死」を題材にしており、リュシールはフランス革命下にジャーナリスト・政治家としてダントンとともに活動し、命を落としたカミーユ・デムーランの妻の名である。捕らわれの身になった夫を救おうとするも、暴動の嫌疑をかけられた末、夫に続いてわずか24歳で処刑されてしまうこのリュシールを、角田が演じる。インタビューでは角田の作品への思い、また現在の活動について、話を聞いた。

 ――今回演奏される「道、リュシール」はほとんどの方が初めてお聴きになると思いますが、作品の魅力はどんなところにあるとお考えですか? またリームはこの作品で何を伝えたいのでしょう?

 角田 私は、革命の狂気の中にあり、リュシールが狂っていたのではなく、彼女こそが正気を保っていた人だと原作者ビューヒナーは言いたかったのだと捉えています。多くの女性がそうであるように、彼女は彼女の夫がギロチンにかけられて死んだことを名誉だと思っていません。彼を失ったこと、そして、その死が彼女にとって全く無駄でしかないことを悲しんでいます。リームの書いた高音の連続は、狂乱ではなく、叫びです。どこにぶつけても誰も理解してくれない苦しい叫びだと思います。

 ――前回、ツィンマーマンの「白いバラ」でも飯森さんが指揮する東京交響楽団と協演されています。どのような印象を持っておいでですか?

 角田 こんなにも多彩に素晴らしい響きを奏でるオーケストラを聴いたことがないと思うほどに、素晴らしい演奏でした。ドイツで「白いバラ」を何度も歌っているバリトンのミードルも「ここまでのレベルの演奏は聴いたことがない」と言っていましたが、私も歌いながら感動し、最後に泣いてしまったほどです。飯森先生はテキストをとても大切にされ、繊細に表現されます。またオーケストラの響きをとても大切にされますので、最強のコンビ!と言えるのではないでしょうか。

再び角田と協演する飯森範親 (C)s.yamamoto

 ――これまでシュトゥットガルト州立歌劇場で12年、ハノーファー州立歌劇場で5年間専属ソリストとして歌われるなど、オペラの世界でもご活躍です。ドイツとオーストリアで優れたオペラ歌手に贈られる「宮廷歌手」の称号もお持ちですが、この称号を授与された日本人はごくわずかですね。

 角田 宮廷歌手という名誉な称号を、ドイツの中でも規模の大きいバーデン・ビュルテンベルク州から頂いたことは、本当に私の歌手人生の中で信じられないほど最高の出来事でした。この称号はその州の歌劇場に貢献したという印だそうです。称号を頂く時に文化庁長官と支配人、そして前支配人も駆けつけてくれ「どんな役を歌ってもあなたは常にお客さんの一番のお気に入りの歌手だ」とおっしゃってくださいました。脇役専門ですが(笑い)、それでもずっと見てくれていたのだ、認めてくれていたのだということが本当にうれしかったです。

 ――最近では昨年6月に日本で「魔笛」の夜の女王を演じられたほか、この9月にはハイデルベルク歌劇場ツアー公演で同役を演じています。一方で、今回のリームをはじめ、マルク・アンドレ、ヘルムート・ラッヘンマンなど現代の作曲家の作品にも積極的に取り組んでおいでです。

 角田 作品に積極的に取り組んでいるというよりも、オファーが増えてきているというのが正直なところです。きっかけは、ハノーファー州立歌劇場にいた時に、ルイジ・ノーノのオペラと、ヘスポスという作曲家のオペラの主役の一人にキャスティングされたことでした。「お前は現代音楽で新しい世界を開く力がある……絶対にやれ!」と言って私をキャスティングしたのは、先日ハンブルク州立歌劇場でも彼の作品が初演された、指揮者で作曲家のヨハネス・ハルナイト、もう一人はベテランのコレペティトゥアで劇場のプログラム制作にも力量を発揮し続けるシュテファン・シュライバーです。

 さらにシュライバーは、シュトゥットガルト歌劇場の現代音楽プログラムシリーズの目玉公演、ラッヘンマンの「ゴット・ロスト〝Got Lost〟」(演出付き)に私を起用しました。その時にラッヘンマンご夫妻が公演を見にきてくださり、のちに「マッチ売りの少女」のソリストをやってみないかとオファーをくださったことから、ラッヘンマン氏、そして奥様でありピアニストである菅原幸子さんとの現在の活動に続いています。

 私にとっては、現代音楽はクラシックオペラを歌うときとなんら変わりはありません。モーツァルト歌手とよくいわれていましたが、彼の音楽の中で自由になれるのとはまた違い、腹の底から湧き上がるものをダイレクトにぶちまけることができる自由さが、私が今まで歌わせていただいた現代作品の多くにありました。現代音楽の私にとっての魅力はそこにありますね。多くの作品の内容がとてもアクチュアルであるので、今の自分にとても響くことも魅力の一つです。

第660回定期演奏会 ウド・ツィンマーマンの歌劇「白いバラ」(演奏会形式/字幕付き・日本初演)より=2018年5月26日・サントリーホール 撮影:池上直哉 提供:東京交響楽団

 ――夜の女王のアリアやラッヘンマンの「ゴット・ロスト」、また今回のリュシールなどは、歌い手に高い技術が要求されるのではないでしょうか。

 角田 いいのか悪いのか、高い技術を駆使しているとは全く思っていません。作品に要求される声を単に出しているだけと感じています。これまで、日本では井上敏典先生に声楽の基礎を、三井ツヤ子先生には表現とドイツリートの世界を、そしてボイストレーナーとして多くの優秀な歌手を輩出された故・今泉道隆先生にイタリア発声の基礎を、そしてベルリンではジュリー・カウフマン先生にスーブレット・ソプラノの技術を教えていただきました。ただ、不器用なので、教えていただいたことをわかって使っているというよりも、気がついたら、先生がおっしゃっていたことになっていた……という方が正しいと思います。

 今後は、ドイツにおける現代音楽の祭典「ECLAT音楽祭」へ出演するほか、B・A・ツィンマーマンの大作「ある若き詩人のためのレクイエム」をシュトゥットガルトの教会で歌うことも決まっている。ソプラノ歌手として現代音楽で真価を発揮する角田の今回のリュシールは、作品の日本初演にふさわしい鮮烈な印象を残してくれるだろう。

     ◇   ◇   ◇

 なお東京交響楽団では年末から年始にかけて、現田茂夫の指揮でソプラノの森麻季がオペラの名曲を紡ぐクリスマスコンサート(12月25日・横浜みなとみらいホール)、音楽監督ジョナサン・ノットによる「第九」公演(28、29日・サントリホール)、桂冠指揮者秋山和慶によるジルベスターコンサート(31日・ミューザ川崎シンフォニーホール)やニューイヤーコンサート(1月4日・横浜みなとみらいホール、5日・サントリーホール)など、注目の公演が続く。詳細は楽団ホームページで確認を。

公演詳細

【東京交響楽団 第677回 定期演奏会】

2020年1月25日(土)18:00 サントリーホール

指揮:飯森範親

ソプラノ:角田祐子

 

ラッヘンマン:「マルシェ・ファタール」

アイネム:「ダントンの死」管弦楽組曲 op.6a(日本初演)

リーム:「道、リュシール」(日本初演)

R・シュトラウス:「家庭交響曲」 op.53

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