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音のかなたへ

楽器が教えてくれる

東京都品川区で=尾籠章裕撮影

 アメリカのバイオリニストのジョシュア・ベルが初めて名器ストラディバリを弾いたときの感動を「楽器が僕に教えてくれる」と語っていた。

 「名器は僕の弾き方をすぐに理解して、でもこういう弾き方のほうがいい、ここはこのような音も出せる、とリードする。楽器自体にこれまで接してきた名手の音楽が積み重なっているのだろう。弾いていると、技術面だけでなく、深い音楽的な発見をもたらしてくれる」と分析していた。名器に魅せられた彼は入れ替えを重ねて現在、3台目のストラディバリを弾いている。

 楽器に関して、基本的には、弘法筆を選ばず、という言い方は成り立たない。いかなる名手でも悪い楽器で弾いた場合は十分に実力は発揮できない。しかし、録音でしか聴いたことはないが、神童と言われた渡辺茂夫が昭和20年代に子供用の楽器で演奏した記録は、信じられないほど美しく神々しい音を響かせていた。そこが楽器の不思議なところでもある。奏者が愛して、一体となっている楽器ならば、その奏者が弾くときには名器になる…

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