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オーケストラのススメ

~41~ オペラハウスのオーケストラ

オーケストラピットで演奏する東京交響楽団=新国立劇場「セビリアの理髪師」2019年公演舞台稽古より

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山田治生

 オペラハウスのオーケストラといえば、まず、ウィーン国立歌劇場管弦楽団やスカラ座管弦楽団が思い浮かぶ。ウィーン・フィルがウィーン国立歌劇場のメンバーによって構成されているのは周知の話である。

 スカラ座管弦楽団も、コンサートのときは、スカラ・フィル(フィラルモニカ・デッラ・スカラ)の名称を使う時がある。スカラ座のオーケストラが固定メンバーで演奏するようになったのは、20世紀に入ってからである。19世紀のイタリアのオペラハウスのオーケストラは、今のミュージカルのオーケストラのように、シーズンや公演ごとに奏者が招集されていた。フリーのチェリストとして活躍していたアルトゥーロ・トスカニーニが、1887年、スカラ座でのヴェルディの「オテロ」の世界初演でチェロを弾いていたのもそのような事情からである。1920年ごろ、イタリア最高の器楽奏者たちを入団させて、現在のスカラ座管弦楽団の礎を築いたのは当時の音楽監督であったトスカニーニであった。

 近年は、座付きのオーケストラを持たず、既成のオーケストラが持ち回りでピットに入る、オペラハウスもある。東京の新国立劇場では、東京フィルや東京交響楽団など複数のオーケストラが交代で演奏を担当しているし、オランダ国立オペラも、2020~21シーズンには、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、オランダ・フィル(ネーデルランド・フィル)、オランダ室内管弦楽団(ネーデルランド室内管弦楽団)、ロッテルダム・フィル、ハーグ・レジデンティ管弦楽団がピットに入り、ヘンデルの「アグリッピーナ」を古楽オーケストラ、アカデミア・ビザンティーナが担う。

 最近は、バロック・オペラの上演でピリオド楽器のオーケストラがピットに入るオペラハウスが増えている。伝統あるベルリン州立歌劇場でも、今年11月のモーツァルトの「ポント王のミトリダーテ」ではルーヴル宮音楽隊、グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」ではベルリン古楽アカデミー、モンテヴェルディの「オルフェオ」ではフライブルク・バロック・コンソートが演奏を務める。その間、座付きのオーケストラ(シュターツカペレ・ベルリン)は音楽総監督ダニエル・バレンボイムとともにパリ、アテネ、ウィーンへ演奏旅行に出ている。

 オペラハウスの座付きのオーケストラの演奏を聴くのは、オペラの醍醐味(だいごみ)の一つといえるが、いくつかのオーケストラが交代でピットに入ることは、聴衆にとって興味深いし、それぞれのオーケストラにとってもプラスの経験になるだろう。そして、柔軟なオーケストラの起用が、オペラハウスのレパートリーの拡大にもつながる。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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