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東京都響が演奏会再開のあり方を検討するための試演会を実施

東京文化会館で行われた試演会の様子=東京文化会館で6月12日

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 東京都交響楽団が今月11、12の両日、東京文化会館で〝ウィズ・コロナ〟〝アフター・コロナ〟における演奏会再開のあり方を検討するための試演会を行った。海外のオーケストラや研究者による科学的な調査・実験の結果を踏まえて、エアロゾル測定の専門家や感染症専門医らの立ち合いのもと、同団音楽監督で指揮者の大野和士や演奏者の意見も取り入れて、必要な感染防止対策と音楽的成果をどのように両立させていくかを検証したもの。取材したのは12日の回の前半、測定データ等の詳細は近日中に行われるであろう都響からの発表を待つとして、本稿では試演会から受けた筆者の印象を報告したい。

 11日は弦楽器セクションのみで、いわゆるソーシャル・ディスタンスを確保しつつ、いかに音楽的効果を維持できるかを検証。翌12日は専門家の立ち合いのもと管楽器から出る飛沫(ひまつ)の測定を行った後、全パートがそろってモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲などを演奏し、飛沫の飛散具合と奏者間の距離の取り方、それを受けての演奏効果などを確認した。

 会場での専門家の説明によると金管、木管ともに楽員間で感染が危惧されるほどの飛沫量はほとんど測定されず、奏者と奏者の間隔を1.5~2メートル離さなくても大きな問題はないという。これに伴い弦楽器のプレーヤーは必ずしもマスクを装着しなくてもよい、との説明がなされていた。

 最初に管楽器の各プレーヤーが互いの距離を保つためにステージいっぱいに広がって配置された様子を見た時には今後、演奏会が再開されたとしても当分の間はマーラーやリヒャルト・シュトラウスのような大編成を必要とする作品を聴くことはできないだろうと思ったが、今回の検証によって通常のセッティングとさほど変わらぬ距離を保てば大丈夫ということが分かり、ひとまず安心した。

専門家の立ち合いのもと適切な距離を検証する

 残る問題は声楽入りの曲と観客・聴衆をどうするかだろう。先ごろ、ウィーン・フィルが本拠地のムジークフェライン(楽友協会)大ホールで行った再開第1弾の公演では、定員約2000人の同ホールに5%にすぎないわずか100人の聴衆しか入れなかったという。感染者が欧米に比べて少ない日本でもソーシャル・ディスタンスを保つためには客席をいっぱいにすることは難しいだろう。仮に一席ずつ空けるとして、定員2006席のサントリーホールを想定した場合〝満席〟でも1003人以下の聴衆しか収容できない計算となる。これでは事業者にとって採算をとるのは困難であろう。それを補うためにはチケット代を暫定的に値上げするのか、それと並行して有料のライブ配信を行うなどさまざまな対策を策定していかなくてはならないだろう。また、密閉を避けるため換気をどうするのも検討する必要がありそうだ。

 声楽については、最も飛沫が飛ぶことが容易に想像できる。ただ、実力のあるオペラ歌手がろうそくの前で大きな声を出しても炎が揺れないといわれるように、ソリストについては一定の対策を講じれば問題をクリアできる可能性はありそうだ。しかし、合唱についてはそう簡単ではないだろう。100人以上の合唱団がオーケストラの後ろで声を張り上げると、楽員や客席に向かってかなりの量の飛沫が飛ぶのは避けられないはずだ。特にアマチュア・コーラスではその危険性が高くなるのではないだろうか。まさか、マスクを着けて歌うわけにもいかないだろうし、オケとの間にアクリル板などの仕切りを設けたとしても音響や合唱団員間の感染の危険性などの問題が想定される。そうなると今年は年末恒例の第9公演は例年通りに開催するのは難しいのではないか、とも思えたりもした。

ロビーにもソーシャル・ディスタンスを保つ工夫が

 とはいっても今回のような実験や検証などを重ねながら一歩一歩、慎重に歩みを進めていくほかないだろう。そのようにして〝ウィズ・コロナ〟における新たな公演スタイルを確立、実践しながら月日が経過していくうちにワクチンや特効薬が開発され、それが世界に普及して元の日常の演奏スタイルを取り戻せるようになる日が訪れることを待つしかない。

 それにしても約3カ月ぶりに聴いた大きなホールに響きわたるオーケストラの生のサウンドは実に素晴らしかった。大野と都響メンバーも久しぶりに一堂に会してのアンサンブルに本番さながらの気合の入った演奏を披露。聴いていて実際、鳥肌が立つほど心に訴えかけるものがあった。一日も早く心おきなく音楽を楽しむことのできる日々が戻ってくることを願わずにはいられなかった。

筆者プロフィル

 宮嶋 極(みやじま きわみ) 毎日新聞グループホールディングス執行役員、毎日映画社社長、スポニチクリエイツ社長を務める傍ら音楽ジャーナリストとして活動。「クラシックナビ」における取材・執筆に加えて音楽専門誌での連載や公演プログラムへの寄稿、音楽専門チャンネルでの解説等も行っている。

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