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音のかなたへ

「ソからド」だけで

東京都千代田区の日本橋川で=尾籠章裕撮影

 あるバイオリニストからのメールの最後に、ソからドと弾いて、それだけで不意に涙がにじんだ、とあった。ソとドでこんなにも感動するなんて、コロナ騒動でかつえていたからかもしれません、と書き添えてあった。新型コロナウイルス禍で、演奏家は演奏会で弾けず、先生も生徒も対面レッスンもできず、私たちも演奏会を聴けない。実際に目の前で生まれる良い音、良い音楽から、私たちは限りなく遠ざけられた。

 メールでは曲も何も分からなかったが、ソとドのつながりから、ふとパガニーニの《モーゼ幻想曲》が思い浮かんだ。ピアノのハ短調の分散和音の上に、バイオリンが一番低いG線のソからドを経てゆっくり上行してゆく哀切に満ちたフレーズである。G線1本で弾くように指示されているので、高い音はフラジョレット(倍音奏法)などを用いて弾かなければならない難曲である。正式名は《「エジプトのモーゼ」の「汝(なんじ)の星をち…

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