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オーケストラのススメ

~44~ コロナ禍でのオーケストラ(1)~ライブ配信への取り組み

コメントが飛び交う「ニコニコ東京交響楽団」のライブ配信 提供:niconico

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山田治生

 2月26日に安倍首相からイベント自粛要請が出され、以降、オーケストラの公演のほとんどすべてが中止された。聴衆を入れての公演が不可能な状況で、いくつかの団体は、無観客で演奏を行い、インターネットでそのライブ配信を行った。びわ湖ホールは、3月7、8日に無観客でワーグナーの楽劇「神々の黄昏」を上演し、それらを生で配信した。2日間で延べ約36万のアクセスがあり、最も多い時間帯で約1万2000人がその配信を視聴していたという。3月8日は、東京交響楽団がミューザ川崎シンフォニーホールでの無観客演奏会を無料配信。14日の公演と含めて、20万以上のアクセスがあった。そのほか、山形交響楽団、大阪フィル、京都市交響楽団が、定期演奏会のプログラムを無観客で演奏し、それを無料配信した。定期会員ら地元ファンへのサービス、及び、インターネットで広がる全世界の聴衆へのアピールという広報的な意味で、無観客であっても、無料配信であっても、演奏をする方がよいとオーケストラが判断したのであろう。

 その後、状況が悪化し、オーケストラとして集まること自体が「密」であるとしてできなくなった。4月7日には緊急事態宣言が出され(全国への発令は16日)、オーケストラは完全に活動を停止した。その間、多くの団体が、ホームページや動画チャンネルを使って、過去の公演の映像や録音をインターネットにアップした。また、新日本フィルは、有志によって、リモート合奏の動画を作成し、話題となった。バッハ・コレギウム・ジャパンは、インターネット上の音楽祭である「@調布国際音楽祭」において、世界中に暮らすオーケストラと合唱のメンバーの動画を集め、リモート合奏によるベートーヴェンの「第九」第4楽章の映像を作成した。

 5月25日に緊急事態宣言が解除され、6月になると、さまざまな団体が有料ライブ配信を始める。6月11日、日本フィルとサントリーホールが無観客での演奏会を有料配信。7月2日、新日本フィルは、聴衆を入れた演奏会を再開すると同時に、有料ライブ配信も行った。7月後半からのフェスタサマーミューザKAWASAKIは、600人に限定された入場者と有料ライブ配信によるハイブリッド開催となる。東響は、コロナ禍以前の2018年11月から「TSO MUSIC&VIDEO SUBSCRIPTION」というサイトを立ち上げて動画の有料配信事業を始め、今年6月には「ニコニコ東京交響楽団(ニコ響)」という動画チャンネルを開設した。

 インターネット配信の最大の利点は、聴き手が自宅で、(オン・デマンドであれば)好きな時間に、リラックスして演奏が楽しめること。事業としての難しさには、既に有料ライブ配信に本格的に取り組んでいるベルリン・フィルなどの世界的なオーケストラと同じ土俵で競争しなければならないことがあげられよう。

 インターネットでの動画配信が、日本中の、あるいは世界の音楽ファンから求められるようなオリジナルな内容を持ち、生の演奏会の代替物でなくなったとき、新たな道が切り開かれていくに違いない。今後もホールでの聴衆増加は望めない状況が続くだろう。そのようななかでオーケストラが有料配信にどのように取り組んでいくのか、大いに注目される。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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