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オーケストラのススメ

~45~ コロナ禍でのオーケストラ(2)~演奏会再開への取り組みと現状

聴衆、奏者の過密を避けつつ行われたバッハ・コレギウム・ジャパンによる「マタイ受難曲」上演=東京オペラシティで8月3日(C)堀田力丸

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山田治生

 今年3月ごろから新型コロナウイルス感染症拡大防止のために世界中のほとんどすべてのオーケストラは活動を休止していたが、6月ごろから日本でも演奏会再開のための具体的な取り組みがさまざまな団体で始まった。それは、科学的な実験や飛沫(ひまつ)の計測によって、どのようにすれば、感染リスクを可能な限り減らして公演ができるのかというガイドラインなどの作成である。その代表的な例としては、東京都交響楽団が試演(6月11、12日)に基づいて策定した「演奏会再開への行程表と指針」、兵庫県立芸術文化センターが7月23、24日に「どんな時も歌、歌、歌! ~佐渡裕のオペラで会いましょう」を開催し、その結果をまとめた新型コロナウイルス感染対策報告書――などがあげられる。

 コロナ禍、日本で最初に聴衆を入れての定期演奏会を開いたのは、6月21日の東京フィルハーモニー交響楽団であった。密ができないように定期会員の座席を配置し直して、プログラムを短く変更しての上演。楽団員に演奏への喜びが感じられた。

 読売日本交響楽団や都響は、当初、予定された演奏会を中止して、小編成で短めのプログラムを新たに組んだ。読響は、鈴木優人指揮でモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」(7月5日)、原田慶太楼指揮でハイドンの交響曲第100番「軍隊」(7月14日)を、それで第1ヴァイオリンが6名という編成で演奏。一人ひとりの熱演で音量的に不足を感じない。都響は、音楽監督・大野和士が指揮を執り、12日にベートーヴェンの交響曲第1番とプロコフィエフの交響曲第1番「古典」ほか、19日にベートーヴェンの交響曲第2番ほかで、活動を再開。ブランクを感じさせない優れた演奏だった。

 また現在は外国人の来日が困難であり、東京交響楽団は、音楽監督ジョナサン・ノットがヨーロッパで事前に収録した指揮映像に合わせて、ドヴォルザークの交響曲第8番(7月18日)やベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」(7月23、25日)を演奏するという試みを行った。

 コロナ禍で最も影響を受けている音楽のジャンルは、合唱に違いない。バッハ・コレギウム・ジャパンは、例年4月に行っている「マタイ受難曲」を8月3日に延期し、1日2公演で聴衆を振り分けて、密を避けた。そして、舞台上も合唱、オーケストラの人数を通常よりも減らし、奏者間の距離をとって演奏を行った。

 再開後の演奏会では、楽員のマスクを着用しての演奏(本番ではマスクをしない楽団もある)や飛沫の拡散を防ぐためのアクリルボードの使用をよく見る。楽員たちは距離を取って演奏。指揮者と楽員は握手を避け、肘タッチ。聴衆が「ブラボー」などの大声を出すのも禁止となった。客席は密を避けるため、客数はホールの定員の半分以下に制限。プログラムもステージ上の密を避けるために、合唱付きや大編成の作品は避けられ、小編成の曲が中心となっている。ロビーでの感染防止のためプログラムを短縮して休憩時間を設けない演奏会も増えた。また現状では外国人の入国が厳しく制限されているので、海外のオーケストラが来日できないのはもちろん、指揮者やソリストも日本に入れず、日本人指揮者や演奏家が代役を務めている。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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