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オーケストラのススメ

~46~ ウィズ・コロナのシーズン、始まる

弦楽オーケストラのためのプログラムに組み直し、指揮者なしで公演を行った紀尾井ホール室内管弦楽団(中央はコンサートマスターの玉井菜採) (C)Kioi Hall / Tomoko Hidaki

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山田治生

 9月、新型コロナウイルス感染拡大対策とともに、秋のコンサート・シーズンが始まった。しかしながら、外国人の入国が厳しく規制されているため、国際的なアーティストの来日は不可能となり、各オーケストラは、指揮者・ソリストの変更、プログラムの組み替えなどに苦慮している。舞台上や楽屋での密を避けるため、大編成の作品は避けられ、飛沫(ひまつ)の危険性が高いといわれる合唱との共演もキャンセルされた。また、9月前半の段階では、政府の要請により、座席数の50パーセント以下しか客を入れることができず、その座席の割り振りもオーケストラ側の負担となった。NHK交響楽団が2020/2021シーズンの定期公演の中止を決め、同日に新たな主催公演を行うこととしたのは、使える客席が半分以下では定期会員の座席の振り分けが困難なことが影響しているに違いない。そしてプログラムもコンパクトに組み直された。東京都交響楽団が、定期演奏会を含む12月までの主催公演のチケット代金をすべて払い戻しにした上で、あらためて主催公演のチケットを発売し直したのも、定期会員を50パーセント以下の客席に収めるのが不可能であったからであろう。

 9月に新シーズンが始まったが、オーケストラ・ファンに人気の高いマーラーなどの大曲はすっかり影を潜め、小編成の作品や弦楽器合奏曲を中心としたプログラムが目立った。たとえば、日本フィルはラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」、新日本フィルはプーランクのシンフォニエッタ、NHK交響楽団はブラームスのセレナード第2番やR・シュトラウスの組曲「町人貴族」など、通常ならば演奏会のメイン・プログラムにしにくい小ぶりな作品を、定期演奏会(あるいはその代替公演)の最後に置いた。読売日本交響楽団は、G・ウィリアムズの「海のスケッチ」、ペルトの「フェスティーナ・レンテ」、オネゲルの交響曲第2番など、弦楽合奏を中心とするプログラムを組み、予定していた指揮者の来日が不可能になった紀尾井ホール室内管弦楽団は、指揮者なしで、弦楽合奏作品だけによる定期演奏会をひらいた。これらのレパートリーに光が当てられるのは、長い目で見れば、不幸中の幸いといえるかもしれない。

 また、外国人の入国制限によって、すべての演奏会の指揮を日本人指揮者が担うことになった。9月だけでも、沼尻竜典は、神奈川フィル、山形交響楽団、新日本フィル、大阪フィル、秋山和慶は、新日本フィル、広島交響楽団、日本センチュリー交響楽団、広上淳一は、京都市交響楽団、N響、札幌交響楽団、尾高忠明は読響と東京交響楽団の定期演奏会(あるいは代替公演)に登場。実績のあるベテラン勢の活躍が目立った。下の世代では、山田和樹が日本フィルとN響を指揮。阿部加奈子の広響定期デビューも特筆されよう。

 9月後半からイベントの人数制限が撤廃されることになるが、クラシックの演奏会においても、そのまま客の数を増やせばいいわけではなく、新たな対応が必要となる。これからの展開が注目される。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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