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オーケストラのススメ

~48~ さまざまな編成やスタイルの〝交響曲〟の楽しみ

尾高忠明と読響。 9月8日には編成の小さなオネゲルの交響曲第2番などを演奏した (C) 読売日本交響楽団

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山田治生

 新型コロナウイルス感染症拡大のために中止されていた演奏会が夏ごろから再開されたが、現在も、飛沫(ひまつ)感染を防ぐために大編成の作品の演奏は控えられ、平常時以上に小ぶりな編成の作品が取り上げられる傾向が続いている。

 尾高忠明が指揮した読売日本交響楽団の9月の定期演奏会では、楽器編成の大きなウォルトンの交響曲第1番がオネゲルの交響曲第2番に変更された。オネゲルの同曲は、最後に任意で少しだけトランペットが加わるが、ほぼ、弦楽合奏曲である。そのような管楽器を含まない〝交響曲〟としては、ブリテンの「単純な交響曲」やメンデルスゾーンの「弦楽のための交響曲」などの例もあるが、番号が付くような本格的な交響曲としてオネゲルの同曲は、異例といえよう。

 逆に管楽器だけの〝交響曲〟なら、まずベルリオーズの「葬送と勝利の大交響曲」があげられる。これは野外で演奏する大編成の吹奏楽(軍楽隊)のための作品であり、任意で合唱を加えることもある。他方、グノーの「小交響曲」は九つの管楽器のための作品であり、室内楽曲ともいえる。ヒンデミットの「管楽器のための交響曲変ロ調」は吹奏楽である。

 実は、管楽器のための〝交響曲〟は、吹奏楽のレパートリーとして、20世紀後半以降、非常に数多く作られている。

 編成の小さな交響曲には、「室内交響曲」や「シンフォニエッタ」という名称がつけられたものがある。シェーンベルク、シュレーカー、ミヨーからジョン・アダムズ、西村朗、久石譲に至る「室内交響曲」には、編成の小ささを表す「室内(楽)」と多さや大きさを示す「交響曲」という対立する概念が結び付けられ、二つのジャンルの特徴が融合されている。

 「シンフォニエッタ」は、イタリア語の「エッタ」という接尾語に「小さな」という意味があり、「小さな交響曲」を表す。ヤナーチェクやプーランクのそれが有名であるが、ほかにツェムリンスキー、プロコフィエフ、コルンゴルトらも作っている。ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」は、演奏時間の長さでは「小さい」といえるだろうが、10人を超えるトランペットなどの別動隊を必要とする編成はむしろ「大きい」。

 また、交響曲のなかには、独奏楽器の活躍する協奏曲的な交響曲もある。まずは18世紀のハイドンやモーツァルトから20世紀のシマノフスキやイベールに至る「協奏交響曲」。ラロの「スペイン交響曲」やブリテンの「チェロ交響曲」は、〝交響曲〟のタイトルが付けられているが、協奏曲に分類される。ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」は、独奏ヴィオラが大活躍するが、内容としては、協奏曲というより交響曲である。ダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」やバーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」は、独奏ピアノが重要な役割を果たす。

 今回は、コロナ禍の現状から、いわゆるオーソドックスな交響曲とは異なる、さまざまな編成やスタイルの交響曲について思いをめぐらせてみた。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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