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必聴!

コロナ禍における都内の年末「第9」公演

昨年の東響による「第9」公演。今年の開催にあたっては医師が感染対策の監修を行い、医師と事務局長との対談を楽団のウェブページで公開している 撮影:平舘平 提供:東京交響楽団

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 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、ベートーヴェンの第9交響曲の季節が到来した。在京オーケストラ各団体は今秋以降、感染対策を徹底しながら演奏会を開催し、感染防止のためのノウハウを蓄積してきた。そのうえで年末恒例の第9公演についても海外アーティスト招へいを含めての実施が相次いで発表された。そこで東京で開催される今年の第9の中から注目の公演をピックアップして紹介する。

(宮嶋 極)

【読売日本交響楽団】

 読売日本交響楽団は常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレが指揮台に立つ。ヴァイグレは先月19日に来日し、14日間の隔離措置を経て12月9日の定期演奏会(サントリーホール、ブルックナー交響曲第6番ほか)を指揮し、そのまま滞在を続けて第9公演も振る。東京公演は16日から20日までの間に4回予定されている。ヴァイグレの読響への来演は今年3月と7月に予定されていたがコロナ禍のため中止となり1年3カ月ぶりの共演となる。フランクフルト歌劇場音楽総監督などとしてドイツを拠点に活躍する正統派の名匠が第9の魅力をどのようなアプローチで解き明かしてくれるのかが聴きどころといえよう。

【NHK交響楽団】

 NHK交響楽団はスペイン・グラナダ出身で現在、マドリード・レアル劇場の首席客演指揮者であるパブロ・エラス・カサドが指揮を務める。カサドはベルリン・フィルやウィーン・フィル、メトロポリタン歌劇場へ客演するなどの活躍を続ける傍ら、近年フライブルク・バロック・オーケストラと緊密な関係を構築し、作曲家在世当時の楽器や演奏方法を再現するピリオド(時代)スタイルにも積極的に取り組んでいる。今年、同オーケストラと第9をレコーディング、リリースした。ネット上に公開されている練習風景を収めたPR動画を見たところ、最新のベートーヴェン研究をベースにしながらアーティキュレーション(音と音のつなげ方)を見直して旋律の流れを重視した音楽作りに力を入れていることが分かる。N響のステージへは2009年に初登場、2019年には定期公演を指揮しチャイコフスキーの交響曲第1番などで精緻な作りの中にあふれる情熱を内在させた演奏を繰り広げ好評を博すなど両者の相性はよいようだ。一方のN響はロジャー・ノリントンやトン・コープマンらピリオド・スタイルの指揮者との共演を重ねていることに加えて首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ、桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットも古典派作品を演奏する際、ピリオドの要素を取り入れた解釈を標ぼうしている。今回のカサドとの第9も新たな角度から作品に光を当てるような演奏が行われることだろう。なお、サントリーホールの公演(27日)ではバッハの組曲第3番ニ長調BWV1068 「アリア」と同じくバッハ(デュリュフレ編)のコラール「主よ、人の望みの喜びよ」も演奏される。

N響では3度目の客演となるパブロ・エラス・カサドが指揮を務める (C)Dario Acosta

【バッハ・コレギウム・ジャパン】

 日本を代表するバロック・オーケストラ&コーラスであるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)もベートーヴェン生誕250年を締めくくる第9公演の開催を急きょ決定した。指揮はBCJの創始者で音楽監督の鈴木雅明。公演は12月27日、東京オペラシティ・コンサートホールで昼夜2回開催される。

 鈴木とBCJは同ホールで19年1月に第9を演奏しているほか、17年2月には同じベートーヴェンのミサ・ソレムニスを披露し高い評価を得ている。同ホールのアコースティックとバロック・オケとの相性は抜群で、シンプルかつ精妙な響きが美しくホールを満たす。ベートーヴェンの脳裏に響いていたものに近い形で再現される第9の調べが約200年の時を経て、コロナ禍で苦しめられた2020年の日本の聴衆にどのようなメッセージを伝えてくれるのだろうか。なお、同公演ではバッハのパッサカリアとフーガハ短調 BWV582も演奏される。

2019年1月のBCJの「第9」公演。この時のライブ録音はBISレーベルよりリリースされており、ナクソスでも聴くことができる (C)大窪道治 提供:東京オペラシティ文化財団

【東京交響楽団】

昨年、ピリオド奏法の要素を取り入れた現代オーケストラによるベートーヴェン演奏の進化形ともいえる鮮烈な第9を聴かせてくれたジョナサン・ノット指揮による東京交響楽団は今年も12月28日と29日の2回、サントリーホールで公演を行う。海外から招へい予定だった4人のソリストの一部交代を余儀なくされたものの、ノットらは入国後2週間の経過観察を条件に入国ビザを取得することでスケジュール調整を済ませたという。作曲家在世当時の演奏法を最新の研究結果を参考にして取り入れることで、現代感覚にあふれた第9に仕上げるノットの手腕は目を見張るものがある。それを再び聴けることに期待は膨らむ。

【ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会】

 大みそか恒例のベートーヴェンの全交響曲の連続演奏会。今回で18回目、そのうち小林研一郎が13回指揮台に立った。今年傘寿を迎えた小林だが、毎年この演奏会を聴くことで彼の円熟の度合いが次第に深まっていくことが分かる。19年末取材した第9公演の中で唯一旧版(ブライトコップフ版)を使用、ヴィブラートをしっかりかけての演奏であったが、古びて聞こえることはなく温かみにあふれた「歓喜の歌」は、理屈を超えて聴衆の心を大きく揺さぶるのに十分な力があった。演奏は今年も篠崎史紀(N響第1コンマス)をはじめとするN響メンバーを主体に全国のオーケストラの腕利き団員やソリストによって編成される岩城宏之メモリアル・オーケストラ。コロナ禍により世界中で多くの人が苦しめられた2020年の最後に、聴衆の心にどんな訴えかけが行われるのかじっくりと耳を傾けたい。

いまや大みそかの恒例行事となった「ベートーヴェンは凄い!…」公演。10時間を超える公演ながら固定ファンも多く、近年はチケットの完売も続くほどの人気ぶり (C)MichikoYamamoto

公演データ

【読売日本交響楽団】

12月16日(水)19:00 東京芸術劇場コンサートホール

18日(金)19:00 サントリーホール

19日(日)14:00、20日(日)14:00東京芸術劇場コンサートホール 

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ

ソプラノ:森谷真理

メゾ・ソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー

テノール:AJ・グルッカート

バリトン:大沼 徹

合唱:新国立劇場合唱団

【NHK交響楽団】

12月23日(水)19:00、25日(金)19:00 、26日(土)15:00 NHKホール

27日(日)14:00 サントリーホール(※)

指揮:パブロ・エラス・カサド

ソプラノ:髙橋絵理

メゾ・ソプラノ:加納悦子

テノール:宮里直樹

バリトン:谷口 伸

合唱:新国立劇場合唱団

オルガン:勝山雅世(※)

【バッハ・コレギウム・ジャパン】

12月27日(日)14:00、18:00 東京オペラシティ・コンサートホール

指揮:鈴木雅明

ソプラノ:森 麻季

アルト:林 美智子

テノール:櫻田 亮

バス:加耒 徹

オルガン:鈴木優人

管弦楽&合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン

【東京交響楽団】

12月28日(月)18:30、29日(火)14:00 サントリーホール

指揮:ジョナサン・ノット

ソプラノ:ジャクリン・ワーグナー

アルト:中島郁子

テノール:笛田博昭

バスバリトン:リアン・リ

合唱:新国立劇場合唱団

【ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会】

12月31日(木)13:00~23:25 東京文化会館大ホール

指揮:小林 研一郎

ソプラノ:市原 愛

アルト:山下牧子

テノール:錦織 健

バリトン:青山 貴

合唱:ベートーヴェン全交響曲連続演奏会特別合唱団

お話:三枝成彰

管弦楽:岩城宏之メモリアル・オーケストラ(コンサートマスター:篠崎史紀)

筆者プロフィル

 宮嶋 極(みやじま きわみ) 毎日新聞グループホールディングス取締役、番組・映像制作会社である毎日映画社の代表取締役社長を務める傍ら音楽ジャーナリストとして活動。「クラシックナビ」における取材・執筆に加えて音楽専門誌での連載や公演プログラムへの寄稿、音楽専門チャンネルでの解説等も行っている。 

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