
カルチャー各分野をどっぷり取材している学芸部の担当記者が、とっておきの話を報告します。
-
村上春樹をめぐるメモらんだむ
他分野の創作者との付き合いから分かる村上文学の「親密さ」
2021/12/27 14:00 4199文字8月の当コラムで触れた通り、12月14日に発行された「世田谷文学館友の会会報60号」に、村上春樹さんの文章「安西水丸さんのこと」が掲載された。会報は数百人の会員に届けられるものだが、同館(東京都世田谷区)のウェブサイトにアクセスし、ページの下のほうにある「世田谷文学館友の会」をクリックすると、誰で
-
わざおぎ登場
中村勘九郎さん「一條大蔵譚」語る 周囲の目をくらまし続ける公家の思い=完全版
2021/12/25 13:00 3795文字中村勘九郎さんが、2022年1月、東京・歌舞伎座の「寿 初春大歌舞伎」第1部の「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」で「檜垣(ひがき)」と「奥殿(おくでん)」の一條大蔵長成をつとめる。平家全盛の世を生き抜くために、わざと愚かなふりをして周囲の目をくらまし続ける公家の役だ。 享保16(173
-
さらば「聖の青春」 将棋ファンの聖地「更科食堂」 22年2月に閉店
2021/12/23 11:00 2210文字「怪童丸」の異名を持ち、29歳で早世した将棋の村山聖(さとし)九段が通い、今では将棋ファンの聖地の一つとなっている大阪市福島区の食堂「更科(さらしな)」が、50年間掲げてきたのれんを下ろすことになった。JR東海道線支線の地下化工事に伴う立ち退きを機に決断し、2022年2月に店を閉める。近くにある関
-
さらば「聖の青春」 将棋ファンの聖地「更科食堂」 22年2月に閉店
2021/12/23 11:00 0文字 -
フィクションの書きにくい現代日本 文芸時評・田中和生×山本貴光
2021/12/19 19:00 7040文字新型コロナウイルスによって変化した日常が、人々の価値観を揺さぶった2021年。多様化が進む社会は、一方で分断も顕在化しつつある。不安定な世界と作家たちはどう向き合ってきたのか。毎日新聞「文芸時評」欄の執筆者で文芸評論家の田中和生さんと、文芸誌「文芸」(河出書房新社)で21年冬季号まで「文芸季評」を
-
-
「朝鮮人虐殺6000人を否定」のむなしさ 森健さんが見た集会とは
2021/12/19 07:00 2978文字9月1日、東京都墨田区で行われた関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式。その隣では、「朝鮮人6000人虐殺はなかった」と主張するグループが別の集会を開いていた。「『つなみ』の子どもたち 作文に書かれなかった物語」などの著書があるジャーナリストの森健さん(53)が当日の様子を初めて取材した。森さんの目に映っ
-
アートな時間
正反対の性格を演じる「1人2役」が3人! 米女性の強さ描く=濱田元子
2021/12/17 07:00 1297文字舞台 シス・カンパニー 「ミネオラ・ツインズ」 激動のアメリカ現代史 女性の視点から過激に=濱田元子 #MeToo運動もあって、ジェンダー問題への意識が日本でも高まってきた。とはいえ、各国の男女格差を測る世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」(2021年3月公表)で、日本は156カ国中120
-
デジタル作品が75億円? 美術界を席巻する「NFTアート」とは
2021/12/12 15:00 4431文字毎年恒例の「2021ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に「リアル二刀流/ショータイム」が決まった。大賞は逃したが、ノミネートの中でひときわ謎めいていたものがある。「NFT」だ。今年のデジタル業界を熱くしたキーワードだという。「耳なじみがない」とスルーしそうになるが、ちょっと待ってほしい。アート
-
終戦の見通し甘かった為政者たちの「失敗」 後世に残した教訓とは
2021/12/9 07:01 4218文字3年8カ月に及ぶ太平洋戦争により、300万人以上の日本人が命を落とした。敗戦の結果、国は崩壊し歴史上初めて外国に占領された。戦争の後遺症に苦しむ人は今も多く、海外で倒れた人の遺体と遺骨100万体以上が行方不明のままだ。さらに周辺諸国との歴史認識や戦後補償問題など、外交面でも多大な負の遺産を残してい
-
米国への通告前に真珠湾奇襲 国際法違反をあえて選んだか
2021/12/8 07:00 3110文字1941年12月8日、大日本帝国海軍の機動部隊が米ハワイの真珠湾を奇襲し、太平洋戦争が始まった。日本側は、攻撃直前に「最後通告」の文書を米側に渡すつもりだったが、実際は開始後となった。国際法に反する行動であり、今日に至るまで「だまし討ち」と批判されている。在ワシントン大使館の歴史的失態ということに
-
-
北極冒険家の荻田泰永さんが書店オープン その理由を聞いた
2021/12/4 09:00 3098文字北極冒険家として知られる荻田泰永さん(44)が今年5月、神奈川県大和市に小さな書店を開いた。その名も「冒険研究所書店」。冒険家が書店をオープンとは……。一体どんな本屋なのだろう。それになぜ?と疑問がわく。記者が実際に訪れると、手作りの木の書棚が並ぶ店内は、なんだか落ち着く雰囲気。荻田さんに思いを聞
-
戦後の前衛芸術育んだ大阪の「美研」 迫られる転換、その理由は
2021/12/4 06:30 2235文字戦後の混乱期にあった1946年、大阪市立美術館の専門教育機関として誕生した美術研究所(美研)。公立美術館が研究所として実技教育に取り組む例は他になく、前衛美術集団「具体美術協会」(具体)の白髪一雄をはじめ世界的なアーティストを多く輩出してきた。伝統ある学びの場はしかし、来秋以降の館の大規模改修に伴
-
常夏通信
その122 戦没者遺骨の戦後史(68)遺骨の帰還求める声に応えよ
2021/12/2 10:00 2943文字東京都心から1250キロ南の硫黄島では、米軍との戦闘で日本軍守備隊およそ2万1900人が戦死した。福岡県・昭代村(現柳川市)出身の近藤龍雄さんはその一人。遺族は昨年、遺骨の帰還を願い厚生労働省にDNA鑑定を申請していた。その返事が今夏、あった。遺族が提出した検体と、政府が保管していた遺骨との間に、
-
全身全霊で役に生きた「絶景かな」 中村吉右衛門さんを悼む
2021/12/2 06:00深掘り 1887文字吉右衛門さんは常に役の芯にあるはずの「心」をつかみ取ろうとしていた。そのために、若き日は先人の芸をとことんまねた。完璧にできるようになって、回数を重ねているうちに、初代吉右衛門や実父の初代松本白鸚が、なぜその表現をするようになったかがわかってきたという。すると演技がより深まっていく。 そうして会得
-
第71期王将戦リーグ特選譜
攻め切った羽生、「不調」感じさせぬ4勝目 全敗の糸谷は復活期す
2021/11/28 15:00 3024文字24日の王将戦リーグ最終局、羽生善治九段-糸谷哲郎八段戦は、羽生が快勝して今期成績を4勝2敗とした。糸谷は勝ち星のないまま6戦全敗でリーグを終えた。 渡辺明王将への挑戦者が藤井聡太竜王に決まり、羽生は王将戦での「獲得タイトル通算100期」への挑戦はならなかったが、リーグには残留。来期の活躍が期待さ
-
-
新作テーマは皇族の縁談 林真理子さんは眞子さん結婚で何を感じたか
2021/11/28 10:00 2502文字世間からは遠く、華やかに見える皇族の世界。だからこそ「ロイヤルウエディング」は国民の関心事だ。作家の林真理子さんは11月、長編小説「李王家の縁談」(文芸春秋)を刊行。戦前、娘たちの縁談に奔走した皇族の梨本宮伊都子(いつこ)妃を描いた。新作に込めた思いに加え、結婚を巡る現代の皇室のあり方について聞い
-
「神話感ゼロ」の育児エッセー 松田青子さん新刊「自分で名付ける」
2021/11/28 09:30 2041文字2016年刊行の短編集「おばちゃんたちのいるところ」の英訳版が21年11月、世界幻想文学大賞の短編集部門に選ばれた作家の松田青子さん(42)。そのジェンダー批評の目は、小説のみならずエッセーでも鋭い。新刊の育児本「自分で名付ける」(集英社)は、家父長制社会が敷く「普通」の一つ一つに突っ込みを入れな
-
第71期王将戦リーグ特選譜
負ければ「陥落」直接対決は近藤に軍配 猛追の豊島を振り切る
2021/11/28 06:30 2998文字24日に3局一斉に行われた王将戦リーグ最終局では、藤井聡太竜王と永瀬拓矢王座の対局以外にも注目の戦いがあった。今回取り上げる近藤誠也七段-豊島将之九段戦である。両者とも「勝てばリーグ残留、負ければ陥落」という、負けられない一戦となった。 両者は5期前の第66期王将戦リーグでも対局し、近藤が豊島を降
-
村上春樹をめぐるメモらんだむ
“スワローズ愛”と初期作品に込められた意外なメッセージ
2021/11/27 13:00 4146文字村上春樹さんに関わる最近の大きな話題といえば、やはりプロ野球、東京ヤクルト・スワローズの6年ぶりのセントラル・リーグ優勝ということになろう。ヤクルトはクライマックスシリーズを勝ち抜いて、日本シリーズでもパシフィック・リーグ覇者のオリックス・バファローズと好ゲームを繰り広げている(ウェブ版配信の27
-
わざおぎ登場
坂東玉三郎さん「信濃路紅葉鬼揃」の魅力を語る 拡大版
2021/11/27 06:00 3591文字能や狂言の名曲をアレンジした歌舞伎作品を松羽目物という。能舞台を模した松の絵が背景となるのが多いことからの命名だ。東京・歌舞伎座の「十二月大歌舞伎」(12月1~26日)第3部で上演される「信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)」もそのひとつ。能の「紅葉狩(もみじがり)」を題材に、小書(特殊演
-