
女性読者からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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明治生まれの母 さいたま市桜区・大塚康子(主婦・78歳)
2023/4/2 02:00 536文字我が家には使うことのできない1枚の雑巾がある。離れて住む母が、訪ねてくるたびに古いタオルで縫ってくれた雑巾である。刺し子のように縫い目がそろった雑巾は、使い勝手がよかった。母が亡くなり、最後の1枚になったとき、娘から「形見にしよう」と言われ、大事にしまってある。 明治生まれの母は、戦前戦中にかけて
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ミモザ咲く 奈良県大和郡山市・畠中達子(無職・88歳)
2023/4/1 06:53 553文字もう4、5年前になるでしょうか。「女の気持ち」欄でミモザの花を知りました。イタリアにミモザの村があり、プロポーズの際に男性がミモザの花束を贈る習慣があるとのこと。興味を持ち、さっそく近所の花屋で苗を注文し育てることにしました。 1年目は水をあげすぎて枯らしてしまいました。再度注文して育てる中、私は
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新しい制服 秋田県大仙市・児玉まゆみ(自営業・38歳)
2023/4/1 02:05 530文字3姉妹の末っ子の私は、学生時代に「新しい制服」を着たことがない。身長が高くふくよかな5歳上の姉と、同じく身長が高く細身の3歳上の姉が着た「選べるお古のセーラー服」が、中学へ上がる前には用意されていた。 私の学生時代を知らない夫に「新しい制服っていいよね。一度も着たことがないよ」と話したことがある。
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夜桜の思い出 長崎県諫早市・村山多江(教員・62歳)
2023/3/31 05:08 548文字桜の季節が巡る度、母と一緒に見上げた夜桜の美しさを思い出す。 40年前の冬、母は食道がんの手術を受けた。約2カ月に及ぶ入院生活から長崎県島原市の自宅に戻ったのは、桜の開花予報が届く頃だった。ふくよかだった体は、めっきり痩せ細っていた。元気になってほしかった。 ある夜、思い立って母を私の車に乗せ、自
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マスクを外す日 東京都目黒区・山本尚子(会社員・53歳)
2023/3/31 02:00 525文字勤めている会社のマスク着用のルールが国や東京都の方針に準じることになり、全体周知があった。「着用は原則不要。13日から任意とする。会議や交渉の場などは臨機応変、適切に判断すること」という内容だった。 任意なので、同調圧力を感じやすい人たちは「しばらく周りを様子見する」と話し、愛社精神のある人たちは
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友情の橋わたし 北九州市門司区・内山昌子(82歳)
2023/3/30 05:35 556文字姉の三回忌を迎えた。仏壇にはNさんのお供えがある。 両親が早く逝って兄と2人で早くから家計を支えていた姉に学生時代の友人は少なかった。その中で何かと気にかけ、連絡を取ってくださっていたNさん。私は電話の取り次ぎをするだけだったが、明るい話しぶりは控えめな姉と気が合っているようだった。 姉の介護、入
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怒りを力に 兵庫県西宮市・浅賀宏子(会社員・65歳)
2023/3/30 05:35 562文字3月11日付本紙「人生相談」を読み、我が家と同じ経験の人がいると思いました。娘の成人式で着付けを頼んだ業者のお粗末に怒る内容でした。 18年前、私の長女の成人式。前年8月に予約し、当日は予約時間よりも早めに娘を連れて行きました。ヘアセットとメークの後、なかなか動きません。気が気でなく店側に聞いてみ
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終わってた! 千葉県印西市・笠井令子(パート・65歳)
2023/3/30 02:01 537文字お子さんの卒業式に思いを寄せた17日と21日の本欄の投稿を拝見し、20年も前の長男の卒業のときのことを思い出しました。 私が息子の卒業式に気づいたときは、すでに式が終わった後でした。日程を教えてもらえなかったのです。私もうっかりしていましたが、大学入試を控え登校する日もまちまちだったので「今日も休
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出発進行! 山口市・田中梨恵子(45歳)
2023/3/29 05:12 558文字自動車に乗ったら必ず遠くの景色を眺めます。またはまぶたを閉じるか。そうしないとすぐに酔ってしまいます。 長くバスで通学、通勤していましたが周りの人のようにはできませんでした。向かい合って会話したり、テストがあるからと教科書を読んだり文庫本に没入したり。同じことをやれば、目まいと共に嫌なものが込み上
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侍Jに刺激受け 滋賀県守山市・長尾幸子(無職・81歳)
2023/3/29 05:11 568文字野球の侍ジャパンが投げて打ってレベルの高い試合を見せてくれた。しかし頂点に立つ人はほんの一握りで、どの世界でもどんなに頑張っても頑張っても報われない現実があることも確かである。 私も74歳で一念発起、スイミングを始めたが、初めは水に浮くことすら大変で「もうだめだ」「クロールが泳げるようになったらや
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ゆるゆると走る 千葉県東金市・中村真澄(主婦・55歳)
2023/3/29 02:00 527文字地元でハーフマラソン大会が開催されると聞き、参加受け付けが始まってすぐに申し込んだ。20年以上ブランクがあり久しぶりの挑戦だ。 といっても、エントリーしたのは3キロの部。体を動かす習慣をつけるのよ、と言うと子どもたちはふふんと笑った。親のことをよくわかっている。格好いい理由を掲げたが1年で一番寒い
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くじけない 兵庫県姫路市・富田和恵(無職・61歳)
2023/3/28 05:14 565文字家にこもる生活が3カ月続いている。昨年12月、総合病院に入院し親知らずの抜歯手術を受けた後、めまいで歩けなくなった。退院前、同じ病院の耳鼻科を受診したところ良性のめまいとされた。 しかし、いつまでたっても歩けない。他の耳鼻科や神経内科でも原因不明。脳外科で、重度に近い睡眠時無呼吸症候群と診断された
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からすたろうへ 神戸市北区・池田かずこ(主婦・81歳)
2023/3/27 05:21 558文字私の目覚ましは、時計ではなくカラスである。朝早くから「カー、カー」と鳴き、その声でいや応なしに目が覚める。季節によってその鳴き声は変わり、今は「カー、カー」に加え「グワーッ、グワーッ」が混じる。子育て時期の赤ちゃんガラスと母さんガラスのひっきりなしの会話には、理解できないもどかしさと騒々しさにうん
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おいの成長 福岡県粕屋町・佐伯知香(派遣社員・62歳)
2023/3/27 05:20 545文字おいが遊びに来てくれた。社会人になり、関東の家を離れて1人暮らしをする彼と会ったのは約2年ぶりだった。 仕事のこと、関西での生活のこと、1人で近隣の小旅行をしていることなど、たくさんおしゃべりをしてくれた。業界の専門的な話には「へー」「そうなんだ」と学ぶことが多かった。 赤ちゃんの時から知っている
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人事の憂鬱 埼玉県飯能市・小川智子(会社員・39歳)
2023/3/27 02:00 553文字3月、憂鬱なことがある。会社の掲示板に貼り出される「人事」の文字だ。勤めている中小企業は社員が少なく、皆知り合いで居心地はよい。定年まで勤められることを望んでいるが、毎年3月の人事の掲示を見ると気持ちが沈み、もう嫌だと思ってしまう。 私は、産休や育休を取得して復職する女性社員がまだ少ないころに長女
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ルビーの指輪 福岡市城南区・小森百合子(無職・99歳)
2023/3/26 02:00 573文字小雨降るぬかるんだ赤土を踏みしめ、着の身着のままの引き揚げ者の長蛇の列。敗戦後の旧満州(現中国東北部)の奉天(現瀋陽)でのこと。 ソ連兵による検査の番が私に回ってきた時、巨体の女兵士が私の小指にはまった指輪を目ざとく見つけ、私の手を取って放さなかった。小さなルビーを横に3個並べた可愛い指輪。中国系
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年を重ねても 徳島県小松島市・那賀川恵子(主婦・69歳)
2023/3/25 05:22 565文字年老いた母の手がふと私の頭に触れ「ようけ白髪が増えてきたなあ。可哀そうに……」と独り言のようにつぶやきながらいとおしく髪の毛をなでた。ああ、母にとっては69歳の私も子供なのだ。丸く小さくなった母の背中を私がさすってあげなければいけないのに。何だか切なかった。 97歳になる父も母と同じでいつまでも私
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傘寿桜 山口県下関市・先本和恵(書道講師・79歳)
2023/3/25 05:21 558文字桜の便りが聞かれる季節になった。桜は3度、楽しめるという。まず開花近くになると木全体が淡いピンクになり、艶っぽい。そして次が開花し、満開を迎えるころだ。 一昔前のこと。東京に嫁いだ娘に孫が生まれた。「神田川沿いの桜が満開でとてもきれいよ」。娘のその一言で夫と喜々として上京。孫を抱っこして3人で散策
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やってしまった 埼玉県川口市・田中雅子(主婦・77歳)
2023/3/25 02:01 519文字友人と東京へ遊びに行く約束をし、当日いつものように「駅に着いた」とメールをしたら折り返し電話がかかってきた。「今日じゃない。明日よ!」 あまりのショックに、ベンチに座り込んでしまった。腹立たしさ、情けなさ、くやしさ、恥ずかしさ……一気に湧き上がってきた。いつかこんな日が来るのではないかと恐れていた
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「卒業」程遠く 山口県田布施町・大村玲子(87歳)
2023/3/24 05:22 560文字「さあ、お夕飯の支度に取りかかろう」と私は張り切って材料をそろえ始めた。 まずはレタス。あ、私は大の虫嫌い。だから葉物野菜は自分で洗ったことがなくて、それは専ら夫の担当。しかし、夫は気持ちよさそうにうたた寝している。どうする、主婦? せっかく、くつろいでいる夫を起こすのも気の毒だし、かといって虫は
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