
女性読者からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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猫と私 堺市南区・瀬川淑恵(パート・59歳)
2022/5/27 05:56 566文字床の上に何かとがった物が落ちていた。何だろうと拾ってみたら猫の歯だった。 うちには5匹の猫がいる。どの猫の歯かを調べてみたら一番年長のバジルだった。バジルは11歳になる避妊した雌猫だ。実は一昨年、バジルは何か硬いものに歯を打ち付けたのか歯がゆがみ、動物病院で下の歯を1本抜いていた。ところが抜けた歯
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鏑木さんのこと 川崎市川崎区・遊佐ミチ子(無職・93歳)
2022/5/27 02:01 535文字没後50年ということで、近ごろ新聞やテレビで鏑木清方さんのことを見聞きします。 私は16歳のとき空襲で焼け出され、母方の実家で祖父の隠居所があった静岡・御殿場に、家族7人で疎開しました。そのとき母屋には、鏑木さんご一家が疎開していました。 そのときは、鏑木さんがどのような方かよく知りませんでしたが
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憧れの二重 福岡県古賀市・原淳子(43歳)
2022/5/26 05:24 557文字子どもの頃から一重の細目で、笑うと目がなくなり、笑いのネタに一役買ってきた。でも、この細目のお陰で突然の砂嵐に上手に対処してこられたことも事実だ。 二重でぱっちりの友達を羨ましく思う時期もあったが、父親譲りの自分の細目がチャームポイントのような気がして、ほぼ満足していた。 結婚し子どもが生まれると
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法事で願う平和 神戸市西区・竹中ヨシ子(無職・79歳)
2022/5/26 05:24 546文字新緑の但馬路を訪ねた。義兄の三十三回忌と義母の十七回忌を兼ねた法要のためである。 昨年10月にお坊さんを招いての正式な法要は義姉が少人数で済ませてくれていたので、コロナの合間を縫って親族12人が勢ぞろいした。 田舎なので、これまでの法要は故人とどういう関係なのか分からない全く面識のない人も見えてい
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グレーヘア 埼玉県川口市・矢島美穂(無職・61歳)
2022/5/26 02:01 548文字仕事をやめた1年前から、髪を染めるのもやめた。10代からの若白髪で、染め続けて45年にもなっていたことに衝撃を受けた。染めて2週間もすれば「あー染めなきゃ」と、白いものが気にかかる。美容室や自宅の浴室を行ったり来たりしながら染める生活だったような気がする。 グレーヘアの芸能人の存在を知り、「白髪染
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昭和の子 京都市右京区・河嶋智子(主婦・58歳)
2022/5/25 05:42 569文字「携帯変えるわ」。連休で帰省した娘がポツリと言った。「乗りかえ? 番号は変わらないんだよね?」と尋ねると、「機種変。ガラケーに」と言う。「ガラケー?」と驚く私に「携帯持つのやめようかと思ったけど仕事で必要な時があるからスマホをやめる」と。「へえー」となんとも間抜けな返事をしつつ、私はこの子らしいな
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最後の言葉 山口県周南市・椋木幸子(73歳)
2022/5/25 05:40 560文字そろそろエンディングノートを少し書いておこうと思った。もしもの時の子孝行も考えてだ。ノートで一番気になる「想(おも)いの整理」の項で52歳で逝った弟を思い出した。 19年前、母の三回忌を早めに済ませた弟は、年末に体調を崩して病院へ。即、入院であった。5日後、医師から余命の短い末期がんの説明を受けた
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本当に楽しい? 福島県南相馬市・渡辺真弓(主婦・56歳)
2022/5/25 02:01 544文字「まったく。もう連れてこないから」。そう言う母に対し「私は頼んでいない。もう行かない」。やっと言えた。 子どものころ、休みになると母は父をせき立て、どこかへ出かけた。たいていはハイキングをして少し高いところに登り、お湯を沸かしてカップラーメンを食べて帰るのだが、運動が嫌いな私にとって、山歩きは本当
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イソヒヨドリ 大阪府高槻市・矢野千恵子(主婦・74歳)
2022/5/24 06:30 545文字「きれいですねえ」。工場の裏手に咲いている桜を眺めていると、50歳くらいの女性が声をかけてきた。2人で桜を満喫した後、「イソヒヨドリという鳥をご存じですか。青い鳥で鳴き声もきれいですよ」と彼女が教えてくれた。ヒヨドリなら知っているがイソヒヨドリ? 早速、パソコンで調べてみた。もう5年ほど前のことで
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気がつけば2年 埼玉県鴻巣市・大野弥生子(主婦・66歳)
2022/5/24 02:01 528文字同学年の夫とは一緒に退職し、少しのんびりしようと話していました。普通に日々が過ぎるはずでした。 しかし、夫は2年前の6月、下顎(かがく)がんを患い亡くなりました。亡くなる直前まで家族のために風呂掃除をしてくれるような尊敬できる夫でした。なぜここにいないのか、なぜこうなったのだろうと自問自答の繰り返
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夫が残した宝 山口県下松市・濱田道子(80歳)
2022/5/23 06:05 568文字4年と数カ月前に逝った夫が可愛がっていた猫のチビ。今は太った老い猫だが、来たときはチビで哺乳瓶でミルクを飲ませた。 家の中だけを自由に走り回って育ったのでふすまはボロボロとなり、何度も張り替えた。爪研ぎ器は幾つも置いてあるのに大黒柱まで爪の痕で無残だが、あきらめている。 誰よりも夫に懐いていた。い
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1枚の写真 仙台市青葉区・石川初子(主婦・68歳)
2022/5/23 02:02 544文字1枚の写真がある。六十数年前の白黒写真だ。実家の古いアルバムから無理にはがしてきたので、表面に傷がある。この1枚を薄紙に包み、かばんの中に入れ、どこにでも持っていく。お守りのように。 その古い写真には、5歳の私と祖母、当時飼っていた犬が写っている。祖母はまだ50代だったはずなのに、地味な着物を着て
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新1年生 宮崎県都城市・塚野安枝(非常勤講師・48歳)
2022/5/22 02:01 549文字ピッカピカの1年生。思わず歌いたくなるほど、娘も私もこの日を心待ちにしていた。あいにくの雨模様。それでも真新しいランドセルに赤白帽、胸にリボンをつけて、浮き立つ気持ちを隠せない足取りで学校へ向かった。 小学校の校門をくぐった。「ご入学おめでとうございます」。この言葉を耳にするたび、娘の門出に合わせ
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バス旅行 京都府京田辺市・堺谷整子(主婦・67歳)
2022/5/21 05:40 538文字60歳で仕事を辞めた。「毎日自由だ。さあ何しよう」とワクワクした。でも……。外食ランチは三カ月で飽きた。ウオーキングは三日坊主。友人とのおしゃべりも楽しいけど、夫や子供の愚痴は聞きたくないなあと思ってしまう。面白い本や美しい所、そんな話をしたいのだがお高くとまっていると思われたり。ちょっと「うつ」
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最後の赤 長崎市・松本和子(76歳)
2022/5/21 05:38 526文字「んっ!」。思わず足が止まる。目に飛び込んできたのは赤いニットのカーディガン。平日で客もまばらな百貨店のショーケースでひときわ鮮やかな赤を誇示していた。 「わあー」と気持ちが傾き「でもねえ」とのぞき見た値札には6割引きの数字が記されていた。店員が遠くから見ている。 「欲しい」。でもねー。76歳の年
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母の昔話 埼玉県草加市・平井明美(無職・70歳)
2022/5/21 02:01 533文字98歳になる母は、歩くのもやっとのおばあさんだが、椅子に座って話をすれば、昔と変わらず口がよく動く。決しておしゃべりではないが、今でも新聞記事の読み聞かせをしてくれたり、昔の話をしてくれたりする。 ただし、同じ話を何度もするのも得意だ。またか、と思いながらも、その都度初めて話すかのような臨場感のあ
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太極拳 神戸市須磨区・北野寿枝乃(主婦・70歳)
2022/5/20 05:50 547文字今年の1月末、ある団体の太極拳の技能試験を受けた。古希を過ぎたこともあり、一念発起して挑戦した。 出会いは20年前。神戸元町の中華街で扇を持って優雅に舞っていた姿を見て心に留め、いつか私もできたらいいなあと思っていた。7年前、スポーツクラブに入会したのと同時に、無謀にも一人で飛び込んでしまった。
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よそのおばさん 福島市・松崎敦子(無職・58歳)
2022/5/20 02:01 552文字友人や知人と雑談していると、子や孫の話になる。私はついていけない。離婚して約20年。独りで暮らす時間のほうが長くなってしまった。 離婚後、子どもたちに会っていない。どんなふうに成人したのかもわからない。離婚当初、今風の「面会」ができるのではないかと簡単に思っていたが、そうではなかった。私と元夫の間
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わくわくを父に 堺市東区・西中くにこ(看護師・44歳)
2022/5/19 05:31 558文字「連れてってくれるん? うれしいな。ありがとう」と父は電話越しに言った。 父は74歳。脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症で腰痛を抱えているが、ひとりで歩いて身の回りのこともできる。 もともと車の運転が好きで、大阪から田舎の鹿児島まで家族を乗せて車で帰るような父だった。毎年、伊勢に旅行したほか
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花のご縁 長崎県諫早市・江川泰子(アルバイト・65歳)
2022/5/19 05:30 550文字朝6時の目覚ましと同時に夫はウオーキングを兼ねてラジオ体操に出かける。終了後高齢の女性メンバーたちが夫のエスコートで我が家にやって来た。 玄関先に咲いた甘い香りのピンクのスイートピーと白い花のノースポールをもらっていただいた。「女性って本当に花が好きなんだね」とうれしそうに言う彼を見て、私も朝から
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