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明日を呼ぶ・滋賀学園

第88回センバツ 第1部 新チームの軌跡/上 「脅威の存在」から仲間に /滋賀

声をそろえて筋トレをする1、2年生=滋賀県東近江市川合寺町で、森野俊撮影

 <第88回選抜高校野球>

    3年生からの手紙、心一つに

     新チーム発足直後の昨年7月、滋賀学園の寮で目を覚ました主将の今谷真一郎選手(2年)は、枕元に1通の手紙があるのを見つけた。差出人は引退したばかりの前副主将、滝廉太さん(3年)。いつも厳しい先輩には怒られた記憶しかなかったが、読み進めるうちに涙が止まらなくなった。「野球はチームでするスポーツだ。これから先は正直苦しいことばかりだと思う。もしつらくなったら何でも相談してくれ」

         ◇

     2年生にとって、昨年4月に入部した1年生たちはずっと「脅威」だった。後に不動のレギュラーとなる神村月光(ひかり)投手、後藤克基捕手をはじめ、技術的に優れている選手が多かったからだ。

     「レギュラーの座を奪われるかもしれない」という心配から、2年生は1年生を過剰に意識するようになった。それまでより練習量が増えた半面、1年生がミスをしてもあえてアドバイスをしなかったり、自分たちだけで全体練習後のトスバッティングをしたりすることもあったという。松岡立城選手(2年)は「チームメートを『敵』と見てしまった。自分のことしか考えていなかった」。これに対し、武井琉之(りゅうじ)選手(1年)は「困っても2年生でなく、3年生に相談していた」と振り返る。

     昨夏の滋賀大会。滋賀学園は2回戦で強豪・北大津と対戦。引き分け再試合の末、3対5で敗れた。泣き崩れる3年生を見ながら「必ず甲子園に行く」と誓った1、2年生たちだが、新チームの主将となった今谷選手の心の中は不安でいっぱいだった。「今後どうやってチームを引っ張っていこうか」。そんな時に届いたのが滝さんの手紙だった。

     すぐに2年生だけのミーティングを開いて語りかけた。「俺たちは3年生を頼りにしていたし、頼りにされていた。2年生と1年生も、そんな関係にならなくちゃいけないんじゃないか」

     新チームの歯車が動き出した瞬間だった。

         ◇

     滋賀学園の校歌には1、2番とも「明日を呼ぶ」という言葉が盛り込まれている。初めてのセンバツ出場を決めた硬式野球部だが、その道のりは決して平たんでなかった。もがき苦しみながら、見事に「明日」をつかみとった選手や関係者の姿を追う。

     (この連載は森野俊が担当します)

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