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野球を諦めない

/5止 中高年「球児」青春再び

「500歳野球」の仲間と談笑する松本友夫さん(中央)=京都府亀岡市で、小松雄介撮影

 <第88回選抜高校野球>

     半身になってフライを追うと、思わず笑みがこぼれる。還暦を過ぎた「球児」たちが京都府内の球場でノックを受けていた。2月11日開幕の「京都500歳野球大会」を前に気合が入る。

     大会は29回目。高校球児だった50歳以上なら出場でき、9人の合計年齢が常に500歳以上でなければならない。1988年の第1回大会は7チームが出場したが、昨年は25に増えた。

     発祥地とされる秋田県では79年、8チームが出場して第1回全県大会が開かれた。昨年の37回大会には過去最多の184チームが出場。同県大仙市を中心に来年夏にも全国大会を開く構想を温める。「もう年だから」と野球を諦めかけていたシニアの心をつかみ、各地で中高年球児が増えている。

     京都府北部にある宮津高OBクラブの松本友夫さん(67)は、府警木津署長だった56歳の時に入部した。高校時代の先輩に誘われ、一度は「無理です」と断ったという。母校の校章が左胸に輝くユニホーム姿で鏡の前に立つと「早く野球がしたい」と頬が緩んだ。

     高校時代は4番の中堅手。足に自信があり、プロも夢見た。ところが、平安(現龍谷大平安)の捕手が放つ矢のような送球に目が覚めた。後に「鉄人」と呼ばれる衣笠祥雄さんだった。母校の監督になる道も考えたが、卒業後は、殺人や強盗などの事件を担当する刑事に。白球ではなく犯人を追う生活になった。

     野球の経験が生きたことがある。2002年、NHK京都放送局で男が女性を人質に立てこもる事件が起きた。機動捜査隊長として現場を指揮した松本さんは盗塁をヒントに作戦を練った。「ハンカチで口を拭いたら突入」とサインを決めた。バッテリーの隙(すき)を突くように、男が油断した一瞬を狙い、警察官が次々と建物内へ。事件は無事解決した。

     仕事に追われ、硬球は40年近く握っていなかった。久々にグラウンドに出ると峰山高OBクラブの堂本茂さん(67)がいた。学校が近く高校時代はライバルだった。今は「堂本さん」「まっちゃん」と呼び合う。練習が終わると、峰山の先輩、荒田五郎さん(70)とビールを飲む。いいプレーが出た日は格別うまい。

     体の衰えは感じる。足がもつれて転ぶこともあれば、山なりの送球がワンバウンドすることも。そんな時は大声で笑い飛ばす。「いくつになっても俺らは野球少年やなあ」と思う。体が動く限り続けるつもりだ。【黄在龍】=おわり

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