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高校野球

過疎の町 創部契機、地域の要に 高知・檮原

野球教室で小学生にキャッチボールを教える檮原高校の選手たち=高知県檮原町で、川平愛撮影

 高校野球は、我が町のチームとして地域に根付いたことで人気スポーツとして発展してきた。それだけに、少子化や都市への人口集中など日本社会に表出しているさまざまな問題は今、高校野球にも色濃く影響を与えている。18年には選抜大会が90回、全国選手権大会が100回の節目を迎える。さらに100年、200年と新しい世紀を紡いでいくには何が必要なのか。

 愛媛県との境にある“雲の上の町”高知県檮原町。標高1455メートルの四国カルストを擁し、現在の人口は約3600人。半世紀で半減するスピードで過疎化が進んでいたこの町を、高校野球が救った。

高知県檮原町

 町内唯一の高校である1934年創立の県立檮原高に初の野球部が誕生したのは2007年。高校生の町外流出は加速度的に進行し、06年の新入生は定員80人に対して17人で、統廃合の危機を迎えていた。その流れに少しでも歯止めをかけられないかと、校長だった横川剛史さん(63)が生徒からの要望を受け、野球部設立を計画。当時の中越武義町長(故人)も「野球部を作るなら金は出す」と支援を申し出た。高校が消えれば、過疎化に拍車がかかることは必至。町も野球部にいちるの望みをかけた。

 06年秋に同好会として4人でスタート。町長が後援会長に就任し、町民らから800万円超の寄付金が集まった。支援への恩返しに、選手たちは草刈りや冬場の除雪作業などを手伝った。かつては外国のように関わりがなく「大使館」と陰で言われていた高校は、野球を通じて地域と結びついた。翌07年、49人が入学し、統廃合は回避された。同好会には12人が入り、野球部となった。

 10年後の今、生徒数は92人から128人に。49人の大所帯になった野球部は今年6月、地元小中学校と野球のイベントを開いた。「ナイスボール」。山あいのグラウンドに明るい声が響く。横川さんはしみじみと言った。「野球が持つ力は恐ろしいね」

町を挙げ部活支援

 高知・檮原高の高橋志治校長(54)と野球部の横川恒雄監督(64)は今年6月初旬、隣町の東津野中の校長を訪れた。高橋校長の学校紹介後、横川監督が「一昨年の主将は野球をやりきってから一生懸命勉強して(国立の)高知大に進みました」と野球部を紹介した。少子化が進む中、地元の町立小中一貫校・檮原学園だけでは生徒確保は厳しく、毎年、愛媛県も含む近隣25中学へあいさつに行く。

中学生と中学生野球人口の増減

 現在の49人いる野球部員のうち、44人が町外出身だ。エースの浅井大地(3年)は高知県南西部に位置する土佐清水市出身。檮原に進学した理由を「横川監督の指導を受けたいのと、設備面が良かったから」と話す。

 横川監督は檮原町出身。母校の伊野商コーチ時代の1985年にセンバツ優勝を経験し、監督では2007年に室戸で春8強の実績を持つ。その後、伊野商の監督を務めていたが、当時の校長や町の教育長、住民が何度も檮原の監督に、と勧誘した。その熱意に心を動かされ、13年に町の臨時職員となって監督に就いた。

 町は設備面でも支援する。寮運営に年200万円の補助を出す。昨年は閉園になった幼稚園を改修し、第2寮とした。練習場所も人工芝だった町民グラウンドに土を入れて整え、照明設備も完備。遠征用のバスも購入し、無償で貸し出す。

 バッティングマシンは、地元の建設業者の寄贈。寮の米が不足すれば住民が差し入れ、昨年は約1200キロが集まった。手厚い支援の理由を矢野富夫町長(62)は「選手の明るい声が地域に元気を与えている。街づくりの一環」と話す。

 高校野球の部員数は14年度の17万312人をピークに減少。17年度は16万1573人で前年度比で調査開始以来最多の6062人減となった。中学生ではさらに深刻だ。日本中体連と日本野球連盟の各調査によると、16年度の軟式と硬式を合わせた中学生野球人口は23万4316人で、06年度に比べて31.6%減った。減少幅は中学生の生徒全体数の5.4%減よりもはるかに大きく、子どもへの普及は喫緊の課題だ。

 行政や地元住民と一体となった檮原の取り組みは、その解決策の手がかりの一つといえる。【安田光高】

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