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高校野球・新世紀

第2部 少子・格差時代に/1 増える保護者の負担 費用・労力、家庭を圧迫

練習場所へ移動するため、車に乗りこむ小学生=青森県弘前市内で、安田光高撮影

 野球の足元が揺らいでいる。経済的、人的負担による野球離れや再チャレンジの難しさなど野球の裾野が狭まっている。その一方で、高校での「野球留学」が増加するなど、野球に積極的な層との二極化の傾向も見せている。第2部では少子・格差時代の選手、保護者の野球との関わり方にスポットを当て、「国民的スポーツ」の変容を追う。【長田舞子、田中将隆、安田光高】

     近所の原っぱでの遊びだった野球は、今では「投資」という側面も強まってきている。子どもの野球のための経済的、身体的負担を前向きに受け入れる親も少なくない。

     兵庫県内の中学の硬式野球の強豪チームでは、そろいのTシャツを着た保護者たちが、選手の補食や指導者の昼食を作るなど「当番」に従事。栄養学のテストまで課される。ある母親は「当番の日は足が棒になる」と笑う。バスの運転免許を取得し、送迎を担当する父親は「休みの日はありませんよ」。

     野球は道具類などが高く、硬式チームに入れば最初に10万円以上かかるのが一般的。大阪市内のある中学生の母親は息子のため、市の「塾代助成」を利用する。市内の中学生を対象に、学習塾やスポーツ教室などの費用を助成する制度で、所属する硬式野球チームも対象となっていた。扶養親族2人の場合、年収360万円未満であれば月上限1万円が支給される。「家計は厳しくても野球は続けさせてあげたい」と話す。

     四国地方のある保護者は、中学では部活で軟式をしていた長男が大学進学で苦労した経験を踏まえ、次男は遠方の硬式の強豪チームに入れた。「甲子園で勝ち進める高校に行かせたい」からだという。週末は片道2時間かけて送り迎えするなど、息子中心の生活だ。

     強豪チームの保護者たちは「特待生で強豪へ行ってほしい」「野球で有名大学や一流企業に入れるようになるかも」と真剣な表情で話す。息子の才能や可能性に懸け、野球エリートを目指す覚悟が、そこにはある。

     その一方で、高校球児の卵といえる少年野球人口は減っている。顕著なのが軟式だ。全日本軟式野球連盟によると、2016年の小学生年代の登録チーム数は1万2146で、5年間で2075チーム減った。

     大阪府内の軟式チームに孫を通わせる女性は「いつまで続けさせられるか……」と心配を隠さない。孫には父親がおらず、野球にかかる費用は女性の年金で賄っている。「この先、本気で野球をやりたいと言われたら正直困る」と漏らす。

     昨年、全国大会に出場した青森県の弘前河西スポーツ少年団は、子ども不足から五つの小学校の児童が集まる。平日は小友小で午後5時から練習するため、同校以外の児童は送迎が必要となる。そのため、三和小では、6人しかいない6年生男子のうち4人が自校で練習する卓球を選び、野球はゼロ。工藤長寿代表は「他の保護者が協力するので送迎ができなくてもいいと言っているが、できないことに親が気を使うようだ」と嘆く。

     親に負担をかけずに続けられる環境を整備していかなければ、野球は選ばれた子どもたちだけのものとなってしまう恐れもある。=つづく

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