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高校野球・新世紀

第2部 少子・格差時代に/4 寮生活、時代で変化 球児に自由時間を

夕食後に電話をかける愛工大名電の選手

 高校野球の寮生活というと「野球漬け」のイメージが一般的だ。イチロー(マーリンズ)ら数々のプロ野球選手を輩出してきた愛工大名電(愛知)では、全部員が同じ部屋で寝泊まりする。携帯電話の所持は禁止で、外部との連絡手段は玄関にある灰色の公衆電話のみ。夕食後、テレホンカードを手に選手が次々と現れる。

     倉野光生監督は携帯電話を禁止する理由を「夜にネットで調べたり、友達に返信したりして、寝られなくなる」と説明する。ただ、今の球児は子どもの頃からスマートフォンに慣れ親しんでいる世代。「携帯禁止を理由に来てくれない選手もいた。彼らにとってスマホがないのは、我々が車を使えないのと一緒」と理解も示す。週1回のオフには帰宅を認め、自宅では自由にスマホを使える。

     一方、携帯電話を全面的に解禁している高校もある。岡山学芸館の寮はWi-Fi完備。部員たちは制限なくスマートフォンを使える。福原琉友(2年)は「家族や友人と連絡を取るので、スマホがないのはしんどい」と話す。

     同校では、2008年から学校全体で授業中や歩行中以外での使用を認めている。森健太郎校長は「禁止しても隠れて使う。建前だけの禁止は教育放棄のようなもの」とし、持たせた上でルールやマナーを教えている。懸念されるのはネット上での中傷や炎上などだが、福原は「ツイッターで嫌な言葉を見ることもあるので、つぶやかない」と自制。巨人・阿部慎之助らプロ野球選手の動画を見て、「打ち方を参考にしている」という。

     今春のセンバツ決勝で対戦した大阪桐蔭と履正社(大阪)。野球少年たちに人気のある両校だが、野球部員は全員が入寮を義務づけられている大阪桐蔭に対し、履正社には寮がない。センバツで履正社の1番を務めた石田龍史(3年)は進学に際して両校で悩んだが、最終的には「自宅通い」が決め手になったという。別の高校で寮に入った先輩から話を聞き、「ずっと一緒にいたら息が詰まりそう」と感じたからだ。

     ヤクルトに今春入団した寺島成輝も「家から通えて強い学校」として履正社を選んだ。「自宅の方が自分の時間が持てる。自主練習するのも遊ぶのも、治療に行くのも自由にできる」と語る。今時の高校球児は生活に「オン・オフ」を求める。

     寮か自宅か、スマホを使えるかどうか。時代とともに変わっている球児の気質。受け入れ側もハード、ソフト両面で対応しないといけない時代に来ている。【安田光高】=つづく

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