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高校野球・新世紀

第3部 生き残り懸けて/2 県立高「裁量枠」で実績

母校の東海大会の試合を観戦する静岡野球部OB会の鈴木会長(手前)=田中将隆撮影

 今夏の甲子園に出場した49校のうち、公立はわずか8校で史上最少だった。49代表が定着した1978年は29校で、半数以上を公立が占めていたのと比べると大幅に減っている。私学隆盛の中で出場を果たした公立は、徳島県立校で初めて体育科を設置した鳴門渦潮や、独立リーグ出身の監督が就任した香川県立の三本松など特色のある学校が多い。

 今秋、東海大会で連覇を果たした静岡は県内で最難関とされる県立校だ。決勝では優勝候補の筆頭に挙げられていた私立の東邦(愛知)をも破った。トップクラスの進学校でありながら、野球でも好成績を残せる背景には、静岡県独自の入試制度「裁量枠」がある。

 スポーツだけでなく文化、学業など学校側が自由に指定した分野の実績や能力を入試で大きく考慮する制度。静岡は県内で唯一、野球部だけに適用している。旧制静岡中時代の26年夏に全国優勝し、60、73年にも準優勝という伝統校。野球を国技ならぬ「校技」と位置づけ、裁量枠で毎年、10人前後の選手が入学する。

 野球の実技検査と中学時代の実績をもとに選考されるが、学業成績や学力テストの結果も重視される。入学後は一般入試組と同じ授業を受けるためだ。基準は明らかにされていないが、学校関係者によると中学時代の成績が5段階評価でオール4でも厳しいという。

 東大や京大など難関大の合格者を出す一方、甲子園に春16回、夏24回の出場を誇る「静高」の県内でのブランド力は高い。裁量枠で入学した主将で捕手の黒岩陽介(2年)は「静岡県で野球をするなら、どうしても文武両道の静高でやりたかった」と語る。

 また、伝統的な進学校は卒業生のネットワークも強固だ。県内の中学教員にOBが多く、有望選手がいれば「静高に入れたい」となる。中学側としても、「静高」への進学実績は高評価につながるため、自然な形で選手の情報が集まってくる。野球部OB会長の鈴木和幸さん(65)らOBも試合を見に行くなどして情報を収集。直接声をかけることはないものの、学力も勘案して、周囲に受験のアドバイスをすることもあるという。

 ただ、裁量枠はあるものの、現在のエース・春翔一朗(2年)や黒岩ら部員の半数以上は中学の軟式出身だ。シニアやボーイズなど中学硬式出身者が占める私学の強豪とは毛色が異なる。鈴木さんは「軟式出身者が進学する公立高校に元気がなければ、野球をする子供の数が減っていく。だからこそ、静岡も含めて公立が頑張らんと」という自負を持つ。【田中将隆、岸本悠】=つづく

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