秀岳館(熊本)の監督在任中、「ノーステップ打法」や「複数投手制」などを取り入れた鍛治舎巧氏(66)が、「唯一できなかった」というのが「髪形の自由化」だった。
青々とした丸刈り頭の高校球児。「高校生らしい。気合が入っている」など受け入れられ、当たり前のように考えられてきた。しかし、鍛治舎氏は「野球は修行ではない」と疑問視する。最終的には「刺激が強すぎる」と髪形を自由にすることは断念したという。ただ、私の周りにも、丸刈りにするのが嫌だという理由で、中学までで野球を辞めた人がいる。一考の価値はあると思った。
鍛治舎氏の考えの背景には常に、「野球人口減への危機感」がある。取材の中で、話は女子野球や幼少期の子供へ遊びとしての野球をどう広めるかというところにまで至った。「野球界は音を立てて崩れ始めている。何とかしたいという人が現れないといけない」。高校野球に縛られない考えを持つ鍛治舎氏だからこその視野だと感じた。
「遠い目標としては野球界に貢献したい。近い目標では自分の足でもう一度甲子園に行きたい」と語る鍛治舎氏。次はどんなチームを作るのか。「あそこのチームは長髪がOKだから」。そんな理由で選手が集まっても不思議ではない。【生野貴紀】