不登校や中退に悩む高校生を支えるNPO法人「高卒支援会」(東京都)には、全国から年間約450件の相談が寄せられる。うち1割をスポーツに関するものが占めるという。杉浦孝宣代表(57)は「野球しかしてこなかった子が一度そのレールを外れると、高校を卒業するのは本当に大変」と指摘する。
杉浦代表は10年以上前に同会に通っていた元球児の「高校野球は教えるところじゃない」という一言が今も忘れられない。元球児は中学時代に投手として全国大会で優勝した実績を買われて、入学金や授業料免除の特待生として東北地方の私学に入学した。だが、連投を強いられ、6月に肩をケガして戦力外となった。すると、学校からは来年から授業料を払うように言われたという。その後、他の部員とけんかして退部し、高校も中退した。
特待生やスポーツ推薦で入学すると寮生活であることも多く、部員たちは一日中、生活を共にする。しかし、退部すると他の部員が近づきにくくなり、今まで輪になって食べていた弁当も校庭の片隅で食べるようになるなど、学校に居場所がなくなる。杉浦代表は「特待生やスポーツ推薦で入学した生徒は、部活を辞めることが学校を辞めることになることが多々ある」と話す。
野球にすべてをささげてきた球児が、その道を閉ざされてしまうと立ち直るのには時間がかかる。途中で辞めざるを得なくなった生徒こそ、その後のケアが大切だ。【長田舞子】