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高校野球・新世紀

第5部 変わる常識/1 セオリー 犠打より強打

昨夏の甲子園で6本塁打を放った中村奨成(広陵)。1大会通算68本塁打の新記録も誕生し「パワー野球」の全盛は続く=徳野仁子撮影

 日進月歩で変化と進化を繰り返してきた高校野球。今年は春のセンバツが90回、夏の全国選手権は100回の節目を迎えるが、長い歴史の中でかつての常識が非常識に、非常識が常識になっていることも珍しくない。第5部では、技術や戦術、食事やトレーニング、ルール、道具など、野球現場で起きている変化を探る。

 今春のセンバツに初出場する日本航空石川はバント練習をほとんどしない。中村隆監督(33)は「バントでアウト一つあげるより、強打で好機を広げて一気に畳みかける」と狙いを語り、小技が使える打者を置くのが定石の2番打者にもパンチ力を求める。打撃に自信があるからだが、その背景には高校野球のトレンドの影響もある。「手堅く1点とっても強打ぞろいの今の甲子園では勝てない。積極的に打った方が、勝つ確率は高い」

 1973年夏、決勝でサヨナラスクイズを決めて春夏計6回目の優勝を果たした広島商に代表されるように、かつて、バントは攻撃の要だった。しかし、74年夏に金属バットが登場すると、風向きが変わる。82年夏の決勝では、金属バットを生かしたパワフルな猛打で、池田(徳島)が広島商に圧勝した。以降はバットを振り切って外野に飛ばす「パワー野球」が徐々に浸透。90年代以降、帝京(東京)、智弁和歌山、駒大苫小牧(北海道)など強打のチームが次々と頂点に立った。

 強攻策も増え、2007年春、常葉菊川(静岡、現常葉大菊川)は大会通じてわずか1犠打で優勝した。当時の監督で、現在は御殿場西(静岡)を指揮する森下知幸監督(56)は「1、2点取っても後半ひっくり返された。そこでバントよりビッグイニングを作る野球を目指した」。実際、犠打は逓減傾向にある。1大会通算68本塁打の新記録が誕生した昨夏の通算犠打数は165(犠飛を含めると185)で、塗り替えられる前の60本塁打を記録した06年の238(同269)から約3割減った。

 投手も対抗して変化する。83、85年夏を制したPL学園(大阪)のエース桑田真澄は直球とカーブだけで勝負。しかし、パワー野球が広まるとスライダーやフォークなど球種は増え、チェンジアップなど緩急でタイミングを外す技は一般的になった。00年代後半からはツーシームやカットボールなど打者の手元で小さく動く「速球系変化球」の使い手も増加。横に滑るスライダーは肘、肩を痛めやすいのが速球系変化球が増えた一因だ。

 パワー野球による「打高投低」の傾向が続くが、一方で「落とし穴」を指摘する声もある。高校日本代表の小枝守・前監督(66)は「1点が必要な時には、やっぱり作戦が必要」と強調する。送りバントやスクイズなど小技の精度が勝敗を分けると見る。将来的にはデータ分析で人工知能(AI)などの活用も予想されるなか、高校野球の定石はさらなる変化を遂げるのか。【新井隆一、浅妻博之】=つづく

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