メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

高校野球・新世紀

第5部 変わる常識/4 体罰 暴力阻止へ撲滅宣言

指導者に向けて体罰撲滅について講演する日本高野連の常本審議委員長=福岡市の九産大で

 約200人の指導者を前に日本高校野球連盟の常本明・審議委員長が強い口調で訴えた。「高校野球の指導に殴る蹴る、暴言を吐くというメソッドはない」。福岡市内で23日、春季大会の抽選会に合わせ、「体罰撲滅」をテーマにした講演が行われた。例年1件程度だった指導者の体罰が、今年度はすでに3件。福岡県高野連の野口敦弘理事長が「異常事態」と見たためだ。

 福岡県高野連では昨年4月、「体罰撲滅宣言」を採択した。高知や奈良、香川でも宣言し、指導者が体罰をしないと約束する取り組みが広がっている。それは根絶できていない裏返しでもある。

 体罰は相手の人格を否定する行為で学校教育法で禁じられている。だが、高校野球の現場では長く「愛のムチ」という名で行われてきた。大きな転換期になったのは2012年12月、大阪・桜宮高バスケットボール部の選手が指導者からの体罰を苦に自殺した事件だ。文部科学省が体罰調査に乗り出し、日本高野連も翌年2月に加盟校に指導者の体罰根絶を通達した。軽微な事案も含めて報告は増え、日本学生野球協会による処分は00年度の10件から13年度は75件に。その後は減少傾向にあるが、今年度は2月現在で42件にのぼる。

 いまだになくならないのは、暴力は一切許されないという急激な時代の変化を理解しながらも、対応し切れていない実情がある。

 ある指導者は、肩を押した行為が暴力とされ謹慎処分を受けた。寮から無断で外出した選手を指導する際、「しっかりしろよ」との思いから手で押したことが、保護者からの指摘で問題となった。「肩を押すのも駄目なのは分かっている」とその指導者は反省する。

 一方で、自身には成功体験もある。高校時代、監督から殴られ「緊張感のある練習を乗り越えられたからこそ、甲子園に出られた」という。体に染みついているだけに、「『何で分かってくれないんだ』と興奮した時にコントロールするのが難しい」と明かす。同じような経験をした指導者は多いといい、「暴力をなくすにはとっさに手が出ないよう、日ごろから強く意識しなければならない」と自戒を込める。

 体罰撲滅宣言は、選手だけでなく指導者を守る目的もある。常本委員長は「暴力で職や家族を失いかねない。宣言したことで心にブレーキをかけてほしい」と願う。誰も幸せにならない暴力行為。今こそ、あしき習慣を断ち切る時だ。【安田光高】=つづく

関連記事

あわせて読みたい

毎日新聞のアカウント

4月4日の試合


話題の記事

関連サイト