メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

越える

センバツ90/中 泥臭く考え抜いて 漫画家・三田紀房さん(60)

「勝つことにこだわってほしい」と球児にエールを送る三田紀房さん=東京都内のアトリエで、青木純撮影

 <第90回記念選抜高校野球>

     デパート社員、家業の衣料品店経営を経て漫画家としてデビューしたのが30歳のとき。それから7、8年が過ぎ、出版社から持ち込まれる仕事で食いつなぐ生活を続けていた。

     「漫画雑誌って、面白い連載が3本くらいあれば後はそこそこの作品で構わない。その作品を描くのが仕事だと思ってたんです」

     そんな時、編集者から「読者の人気投票で1位を」と求められた。当時、漫画雑誌「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で高校野球の監督が主人公の作品を始めたばかりだった。

     「1位という目標ができて、どうすれば達成できるか真剣に考えた。感覚だけで描かず、読者の反応を分析し、試行錯誤しながら描くようになった」

     数カ月後、1位を獲得。この経験が、東大受験の「ドラゴン桜」や、大人たちの願望を逆手に取って、チームを強くするしたたかな高校球児を描いた「砂の栄冠」などのヒットにつながっていく。

     観客を味方にしないと初出場校の初戦突破は難しい--。甲子園のバックネット裏に十数年間通うと、勝ち進む秘訣(ひけつ)を常連客や強豪校監督、プロのスカウト担当から聞くようになり、砂の栄冠にもふんだんに盛り込んだ。現役の球児にも、主人公のように勝つための情報をかき集め、強くなってほしかったからだ。

     「他の競技にない『間』がある野球は、選手が考え抜いた末にひらめいたアイデアをぶつけられるスポーツ。最近は長打力重視のチームづくりが主流で大味の試合が増えているが、体格のいい選手がひしめく世界で戦っていくのなら、日本人が積み上げてきた緻密な野球、考える野球に回帰した方がいい」

     かつて編集者に課された「1位」のように、「甲子園で優勝」という目標は「360度どこから見ても正しく、すべての球児が全身全霊で目指す価値がある」と信じている。だからこそ、今以上に勝つことにこだわり、最後の最後まで諦めないプレーをしてほしいと願っている。

     甲子園は数え切れない人たちの手で守られ、育てられてきた。「その舞台を目指せる球児は世界一幸せ。高校野球の未来のため、そして日本の未来のためにも、選手たちは一分一秒を大切にしてプレーしてほしい」

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    関連サイト