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センバツ90 強さ以外にも光 作家 あさのあつこさん(63)

作家のあさのあつこさん=岡山県美作町で、青木純撮影

 <第90回記念選抜高校野球>

     高校野球って、幅のあるスポーツだと思うんです。他のスポーツなら、普通は「強さ」こそすべて。ひたすら練習して、試合で驚異的なプレーをして、そして勝つのが素晴らしい。プロ野球なんてまさにそうですよね。でも、高校野球は「強さ」以外の要素にも意識的に光を当てようとしている。それがよく表れているのがセンバツの21世紀枠じゃないかな、と思っています。

     実力や試合成績では見劣りするかもしれないけど、困難を乗り越えてきた学校が21世紀枠に選ばれます。そういう学校が甲子園の常連校、強豪校に勝つのはやっぱり難しい。でも、相手も高校生だから未熟なんです。一瞬のすきを突いて流れを引き寄せ、勝つこともある。たとえ大差で負けたとしても、弱い者なりの戦いをちゃんと見せてくれる。結果がどうであれ、彼らのプレーは人々の心に強い印象を与えるんです。

     なぜなんでしょうか。それはきっと、多くの人が「21世紀枠のチームと自分は似ている」と感じているからだと思います。学歴の高低。家柄の良しあし。財力の有無。都会に住んでいるのか田舎に住んでいるのか。そういう尺度で評価されてしまえば、「勝ち組」なんて一握り。「強さ」ばかりもてはやされ、予定調和が尊ばれるこの国で、閉塞(へいそく)感や生きにくさを抱えている人は多い。そんな人たちにとって、21世紀枠のチームは「強さがすべてではない」「勝つことだけに意味があるのではない」と教えてくれる存在です。

     生きていると、21世紀枠で出場、みたいなことがあるんですよ。「あなたのこういうところがすごい」と言われたり、「あなたにこの役目を果たしてほしい」と頼まれたり。そんな時、どうせ僕なんか、私なんかと逃げちゃ駄目なんです。自分の中で勝手に限界をつくってはいけないし、何かをやり切る前に諦めてはいけない。とことんまでやってみて、見つけたものを大切にしてほしい。私は、それが21世紀枠の精神なんだと思っています。【聞き手・青木純】=随時掲載


     ■人物略歴

    あさの・あつこ

     岡山県美作市出身で、現在も市内で暮らす。小学校講師を経て作家になり、中学野球がテーマの「バッテリー」がベストセラーに。2007年からセンバツの21世紀枠特別選考委員を務めている。

    毎日新聞のアカウント

    8月10日の試合

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