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夕暮れの学校の駐車場に続々と車が入ってきた。練習を終えたユニホーム姿の高千穂(宮崎)の部員たちが乗り込んでいく。
山間部にある学校は自転車通学がしにくく、バスも数時間おきにしか運行していない。午前6時半からの朝練習と午後7時までの放課後練習の部員の送り迎えは、保護者が交代で車を運転する。戸高裕貴監督(33)は「(保護者に)協力してもらわないとどうにもならない」と説明する。
近年はチームと保護者との適度な距離を保つため、監督と保護者の接触を減らす傾向があり、保護者会や後援会を廃止する高校もある。だが、高千穂では戸高監督ら指導陣と保護者が毎日のように顔を合わせている。
野球部OBで15年前から外部コーチを務める甲斐優さん(66)の存在が大きいと思う。グラウンド近くに住むため、練習後に選手や保護者が気軽に立ち寄れる。甲斐さんは退部を申し出た選手を、親子で自宅に泊めて説得したこともあった。「技術は監督に任せ、人としての心構えやマナーを教えている」と明かす。監督と保護者の橋渡しを務め、部の円滑な運営につながっている。【長宗拓弥】