<2019 第91回センバツ高校野球>
とどめの一撃だった。5点リードの四回2死一、三塁。熊本西のエース右腕・霜上が投じた真ん中付近の直球を思い切り振り抜き、左翼席に運んだ。「最高でした」と満足顔だ。
「変化球に(ヤマを)張っていたが、反応で打てた」と振り返る。打線は1巡目は無安打に終わったが、2巡目から霜上を攻略して18安打で13得点。「強打の智弁」の対応力と地力の高さを象徴する3ランだった。
OBでドラフト2位でロッテに今春入団した勇輔投手を兄に持ち、自身は昨秋の公式戦でも2本塁打を放った強打者。さらに、捕手として遠投125メートルの強肩を誇り、前回も正捕手としてチームの準優勝に貢献した。
この日は打者として2安打4打点、捕手としてタイプの違う4投手をリードし、2失点で切り抜けた。だが、「まだまだ凡打も多いし、(投手陣は)いらないところでの四球も多いのでなくしたい」と大勝にも浮かれた様子はない。初陣の中谷監督に甲子園初勝利をプレゼントしたが、目指すのはさらに上だ。【新井隆一】
○…甲子園通算最多68勝を挙げ、智弁和歌山の監督を昨夏限りで退いた高嶋仁さん(72)が第2試合のテレビ解説のため球場を訪れた。初戦をスタンドから見つめ「ベンチにおるような気になる。変な感じや。うずうずする」と複雑な心境を吐露。大勝にも「打てなかったらイライラする」と苦笑いし、3ランを放った東妻には「本塁打を打った後にヒット2本打ったらほんまもんや」と辛口コメントを残した。
味方が先にスコアボードに得点を刻んでくれた。だからこそ、熊本西の先発右腕・霜上は集中して、ギアをもう一段上げていこうと思った。だが、相手打線が上手だった。
1点リードの三回。1死一塁で智弁和歌山の1番・細川に2球目の外角低めのチェンジアップを拾われた。二回まではうまくタイミングを外せていた変化球を見極められ、4連打と自身のけん制悪送球などで4点を失った。「2巡目に入ってから完璧に合わせられて、決め球も簡単に打たれた」と霜上。2回を無安打に抑えていただけに「何か油断があったのかもしれない」と悔やんだ。
部員は全員地元の中学出身で、清掃活動などの地域貢献が評価されて、今大会、熊本勢で初めて21世紀枠として出場を果たした。1985年夏以来2度目の甲子園で選手たちは11点差を付けられても、最後まで笑顔でのびのびとプレーした。横手監督は「ここまで来た過程を大事にしたい。最高の2時間21分でした」とねぎらった。【長田舞子】
○…1回戦…○
△午前9時2分開始(観衆3万人)
智弁和歌山(和歌山)
004702000=13
010010000=2
熊本西(熊本)