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検証

高校野球 球数制限 健康管理、決着は500球 少人数校に配慮模索「各校が守れる答申」

甲子園大会で1週間で500球を超えた主な投手と大会終盤の投球数

 日本高校野球連盟が29日の理事会で「1人の投手が大会で投げられるのは1週間500球以内」などの球数制限の導入を決め、来春の第92回選抜高校野球大会を皮切りに都道府県大会や軟式を含めた高野連主催大会で適用される(3年間は罰則なしの試行期間)。この規制がなぜ導入されたのか。高校野球はどう変わっていくのか。【安田光高、石川裕士】

    医学会提言、根拠に

     「何とか、現場が納得できるものになったのかな」。球数制限を答申した「投手の障害予防に関する有識者会議」(座長・中島隆信慶応大教授)の委員の一人はそうつぶやく。球数制限導入賛成の世論と、少人数チームに配慮して「時期尚早」を訴える多くの地方高野連。「落としどころ」を探りながらの議論だった。

    投手の球数制限導入の決定について記者会見する日本高野連の八田英二会長=大阪市西区で2019年11月29日午後5時20分、木葉健二撮影

     日本高野連で球数制限が本格的に議論されるようになったのは2014年から。同年センバツ2回戦で延長十五回引き分け再試合があり、投手の健康問題が改めてクローズアップされた。日本高野連は同年7月、全加盟校を対象に健康管理策として球数制限や投球回数制限、タイブレーク制度などの賛否を問うアンケートを初めて実施した。

     その結果などを踏まえて昨年導入されたのが、延長十三回以降を無死一、二塁から始めるタイブレーク制度。球数制限については「タイブレークよりも投手の健康管理に効果がある」(竹中雅彦・日本高野連事務局長=当時)と認めながらも、少人数チームに不利との懸念が強くて見送られた。昨年の加盟校3971校のうち約10分の1が複数校からなる連合チームで、約4分の1が部員20人以下。現実的に少人数では複数投手育成は困難だ。

     ところが、新潟県高野連が昨年12月、「19年春季県大会で1試合100球の球数制限導入」を発表。プロ野球選手から賛成の声が上がるなど、社会を巻き込む議論になった。これに対し、日本高野連は全国で同じ規則を原則としており、実施見送りを要望。その代わりに有識者会議を設置し、富樫信浩・同県高野連会長を含む委員13人で球数制限を議論することになった。

     今年4月スタートの有識者会議は当初、少人数チームに配慮する方向で議論を進めた。6月の第2回会議では「1試合100球」は試合への影響が大きいことから見送られ、「大会終盤の一定期間に球数制限」との方針を発表。関係者によると、具体的には「決勝までの4試合で500球以内」というもので、上位進出チームのみを対象にしていた。

     だが、土日曜日だけに試合を行っている地方大会では日程間隔が空くため、地方高野連から「規制する必要があるのか」と反対意見が出た。また、4試合500球に医学的根拠がないという指摘も委員からあった。最終的には日本臨床スポーツ医学会が1995年に出した「全力投球は1週間500球を超えない」との提言を根拠に「1週間500球以内」に決まった。

     球数制限の対象が上位進出チームに限らなくなったことに中島座長は「少人数だからといって投手にけがをさせていいのか。3年間の試行期間中に複数投手を育成してほしい」と説明。その一方で「答申を実行してもらわなくては意味がない」と、各校が順守可能な内容にしたことを明かした。

    日程・戦術、課題山積

     「1週間500球以内」の球数制限は、大会日程によって不公平さが出てくるケースがある。

     既に発表された来年3月のセンバツ大会の日程(休養日2日を含む13日間)では、2回戦に進んだ16校のうち、第7日以降に登場する12校は2回戦から決勝までの4試合が1週間以内に行われるため、球数制限の対象になるが、第6日に2回戦を行う4校は準々決勝以降の3試合のみが対象となる。元来、1回戦を早く終えた方がその後の試合間隔が空いて有利な面はあったが、今回の球数制限によって試合日程の早いチームは規則面でも有利になる。

     また、球数制限導入を巡って当初から指導者の間で懸念されているのが、ファウル打ちなどで球数を投げさせる戦術が横行することだ。野球の魅力が失われかねないが、「ファウルを打たせる練習をする」と明言する指導者もいる。高校野球特別規則では、打者が意識的にファウルをするようなカット打法については審判員がバントと判断することができるとしており、日本高野連関係者は「明らかなカット打法はスリーバント失敗で三振にできる」と説明するが、「微妙なスイングもあり、判断は難しい」とこぼす審判もいる。

     日本高野連は球数制限に加え、「3連戦の日程回避」も決めた。これにより、日程変更や出場校数変更などの対応を迫られる地方高野連もある。

     センバツ大会出場校選考の参考資料となる秋季東北大会は現在、6日間(休養日1日を含む)連続で開催しており、3連戦が組まれている。8日間連続(同)の秋季北海道大会や6日間連続(同)の秋季九州大会は3連戦こそないが、1週間500球の規制にかかる投手が出てくる可能性がある。これらの地区大会で土日曜日だけの開催ができないのは、気候や旅費負担の問題があるためだ。秋季東北大会を来年開催する宮城県高野連の松本嘉次理事長は「今後、どうするか検討しないといけない」と頭を悩ませる。その一方、それ以外の地区大会についてある地方高野連理事長は「土日曜日だけの試合となれば、1週間で最大2試合。エースが全て投げられる。複数投手制の推進と逆行するのでは」と問題点を指摘する。

     日本高野連では3年間の試行期間中に課題などを検証し、ルール化を目指す。だが、課題は山積しており、先行きは不透明だ。

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