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磐城・センバツへの軌跡

Play Hard 「佐々木食堂」店主 選手にご飯、炊き続け たくましく成長、朗報に涙 /福島

磐城のセンバツ出場を喜ぶ佐々木建一さん=福島県いわき市平で
佐々木食堂で炊いてもらった白飯をほおばる選手たち=福島県いわき市平で

 第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)出場を決めた磐城ナインを、「食」で支えてきた人がいる。同高近くで食堂兼商店を営む佐々木建一さん(66)は、選手たちが練習中に食べる白米を毎日のように炊き続けてきた。たくましく成長した選手たちがもたらしてくれた朗報に、涙が止まらなかった。【磯貝映奈】

     磐城高の各部活が合宿所としている「百年記念館」の食堂に、練習中の野球部選手たちがぞろぞろと入ってきた。食堂には30合炊きの釜が二つ。炊きたての白飯の香りが広がる。「はい、たくさん食べてね」。マネジャーの遠藤百恵さん(2年)に、丼いっぱいによそってもらうと、選手たちはお気に入りのふりかけをかけ、勢いよく口の中にかきこんだ。選手たちは毎日自宅から2合分の米を持参し、「食トレ」の一環として、練習の合間に食べている。

     佐々木さんが営む「佐々木食堂」は、同高正門から200メートル先にある。木村保監督が就任した2015年からほぼ毎日、選手たちのために米を炊き続けている。朝、全員分の米を集め、店に持ってくるのは1年生の仕事。店主の佐々木建一さん(66)は「お駄賃代わりに揚げたての唐揚げをあげると喜んでくれるんだよ」と笑った。そして「入学した時は野球ができるのか不安になるくらい細いけど、1年たつと見違えるように体格がよくなるからすごい」と成長ぶりに目を細める。

     センバツ出場校が発表される24日の朝、野球部員たちが店に寄り、いつものように栄養ドリンクを買っていった。「やっぱりこれがないと1日が始まらないな」。選手たちはいつもと変わらない話をしているが、顔は引きつっていた。「緊張しているのかい?」。問いかけると「気を抜かないでしっかりやらないといけないんですけど……。なんだか勉強が手につかなくて」と困った様子。「あんな顔されちゃ、こっちまで緊張しちゃうよ」(佐々木さん)

     午後3時すぎ、センバツ出場決定の朗報を聞いた瞬間、佐々木さんは涙が止まらなかった。「大したもんだよ。野球部の練習を続けるだけでも大変なこと。東日本大震災があって、台風19号があって、いわきは自然災害に苦しめられてきた。みんな正直つらくて暗い気持ちになっていたよ。こんな明るいニュースが届いて、どれだけ救われることか」

     建一さんも磐城高の卒業生だ。半世紀前、夏の甲子園で磐城が準優勝をした時、3年生だった。当時、隣の席は決勝まで無失点で抑え「小さな大投手」と呼ばれた田村隆寿さんだった。たわいもない話をしたり、一緒に昼ご飯を食べたりした仲だという。「受験を控えていた3年生は甲子園に連れて行ってもらえなかったんだけど、学校も地域も祭りみたいにものすごく盛り上がった」と当時を振り返る。

     24日午後7時ごろ、選手たちは佐々木商店に立ち寄った。「センバツ決まりました!」「甲子園に行けます!」。佐々木さんは「よかったね、本当によかった」とうれしそうだ。「気負わず、持てる力を100%発揮してほしい。一つでも勝ってくれたら、みんなが元気になるだろうな」

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