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令和に歴史を刻め

選抜2校の進撃 第2部/上 大分商 原点回帰で強豪に対抗 /大分

打撃練習をする選手たち

 「もしかしたら今回が県立高校最後の甲子園出場かもしれないですよ」。渡辺正雄監督が腕組みをした。今回のセンバツで出場する公立校は、21世紀枠を除くと29校中4校のみ。九州勢では23年ぶりにセンバツの切符を手にした大分商だけだ。

     渡辺監督が嘆くのには、理由がある。一つは今年度から始まった「働き方改革」の影響だ。これまでは午後9時過ぎまでの練習が当たり前だったが、指導する監督や部長らの残業時間が限られるため、大分商では原則午後7時に指導を終えるようになった。週1回の休日も義務づけられている。

     大分商が久しく甲子園で活躍できない背景には私立校の台頭がある。中学時代に鳴らした選手を県内外からそろえる私立の強豪校に対して、大分商はほぼ全員が県内出身者。実家通いの地元の高校生だ。

     施設面でも私立に劣る。グラウンドは1面しかなく、サッカー部と共用。体育館は他の部活動が使用するため、雨の日には生徒が下校した教室で筋トレをしている。

     極めつきは、今回のセンバツから導入される投手の球数制限だ。投手が1週間に投げられるのは500球。絶対的なエースの川瀬賢斗投手(2年)を擁する大分商だが、甲子園で勝ち進めば、全試合で川瀬投手が出場することはできない。

     選手の肘を守るための措置だが、優れた投手を複数はそろえられない公立校は、どうしても不利になる。

     公立校の苦しい台所事情の中で、どうセンバツの切符を手にし、どう歴史を塗り替えるか。大分商が見いだした勝機は、原点回帰。つなぐ野球だった。

     長打を狙うのではなく、選手全員が単打やバントで必ず塁に出る。昭和40年代の「津久見・大商時代」からの伝統に磨きをかけたのだ。

     その成果は、センバツ出場を決めた昨秋の大会で現れた。地区予選と九州大会を通じて本塁打は3本。それも主軸ではない1番と6番打者だった。だが、上位から下位まで切れ目ない打線は、チーム打率3割2分を誇った。

     「つなぐ野球」が本領を発揮したのは、九州大会の準決勝の鹿児島城西(鹿児島)戦だ。四回表0―2からの場面。2点を追う展開から、6~9番が走者を還し、一挙に4点を取って逆転。下位打線が単打を中心に得点し、センバツ出場を確実にしたのだ。

     つなぐ野球のためには、まず塁に出ること。1番を任される渡辺温人選手(同)は「必ず塁に出て、足で相手チームをかきまわす」と力を込める。9番の神田泰佑選手(同)も「1番の渡辺につないでみせる」と負けてはいない。

     プロ入り候補の強打者をそろえて、長打で派手に打ち勝つことがトレンドの昨今の甲子園。だが、大分商は、地味でも、こつこつ、つなぐ野球での勝利を目指す。川瀬投手は「大分商らしい野球で初のベスト4以上を目指したい」と話す。【白川徹】

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