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新型コロナ 過去2回中止、そのとき球児は 夏の甲子園、府高校野球史振り返る /京都

全国高校野球選手権大会の中止が決まった阪神甲子園球場=兵庫県西宮市で、本社ヘリから木葉健二撮影

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の「夏の甲子園」の中止が決まった。何世代にもわたり記憶に深く刻まれる、数々の場面が生まれた大会の中止。報を受け、無念の思いをかみ殺す3年生部員や天をあおぐ関係者の様子がメディアで伝えられると、多くの人々が胸を打たれ、いかに大きな意味を持つ大会であるかが改めて実感させられた。1915(大正4)年に始まる100年を超える歴史の中、大会の中止は米騒動の18(大正7)年と、戦局が拡大した41(昭和16)年に次ぎ3回目。太平洋戦争中の42~45年は大会としてカウントされず、中断している。過去の中止の際、当事者たちは何を思い、行動したのか。京都の高校野球史を記した書物から振り返り、今後を考えてみたい。【矢倉健次】

第4回・京都二中(1918年)

第28回全国中等学校優勝野球大会(1946年)の決勝で浪華商と対戦した京都二中の攻撃=京都高校野球史より

 1918年の第4回全国中等学校優勝野球大会は、現在の兵庫県西宮市にあった鳴尾球場で8月14日から開催される予定で、代表14校も既に集結していた。京津(京都・滋賀)代表には、第1回大会で全国優勝を果たした京都二中(現鳥羽)が決まっていた。

 同中の野球部記によると、1日の京津大会決勝で京都一商(現西京)を破って2年ぶり3回目の代表となった後、「12日に尼崎に宿所を定め、全国大会に多大の希望を持って待っていたが、米騒動のため(14日の開幕が延期となった後16日に)中止となり、むなしく16日夜に帰京し解散した」との旨が記されている。その後は私学勢の台頭もあり、同中にとってこれが戦前最後の「全国大会出場」となってしまった。

 しかし、黎明(れいめい)期の強豪の伝統は死んでいなかった。終戦後の46年に復活した第28回大会に、京都二中は京津大会を勝ち抜いて復活出場。阪急西宮球場(西宮市)であった全国大会でも、決勝で浪華商(大阪)に敗れたものの、準優勝を果たし京都勢の存在感を示した。

 同球場で戦後初の選手宣誓もした、京都二中の田丸道夫主将は「戦争が激化し42年に野球部が解散した際、当時の部長が余った部費をすべてボール約200個などに代えておいてくれた。そのおかげで45年秋の部再建後、投球練習を十分できた。だから予選から11試合を1人で投げ抜けた」との旨を京都高校野球史に記している。同中は48年にいったん廃校となったが、流れをくむ鳥羽が2000年のセンバツ以降、春夏合わせて5回、甲子園に出場。ユニホームの左袖には、京都二中のユニホームの胸にあしらわれていた「KSMS」のロゴを入れ、在りし日の古豪の栄光を今に伝えている。

第27回・平安中(1941年)

戦前最後となった1941年のセンバツに出場した平安中のメンバー。ユニホームの胸のロゴが漢字になっている

 1941年の平安中(現龍谷大平安)は、京津大会を順調に勝ち上がり、滋賀代表・膳所中(現膳所)との決戦を前にしていた。実績、実力差は明白だったとみられ、平安野球部100年史には以下の旨記されている。「平安中の甲子園出場は決まったも同然だったが、第27回の夏の甲子園は何の理由も公表されないまま中止となった。同時に5年生部員の夏も終わりを告げた」

 既に旧文部省(現文部科学省)から、事実上の都道府県外の試合禁止が通達され、兵庫県などは夏の地方大会を中止。開催したのは33道府県だったという。38年夏の優勝など甲子園での輝かしい戦績を刻み始めた昭和初期から現在に続く、胸に「HEIAN」とロゴの入った伝統のユニホームはこの時期、右から左へ漢字で「平安」と記されるスタイルに変更。ローマ字を使えない時代に入って「敵性スポーツ」への風当たりが日増しに強まり、野球部を廃止する学校が続出していたが、決して明るさを失わない「平安野球部魂」を心の支えに部活動は続けられた。

 戦時下の42年、旧文部省主催で一度だけ実施された「幻の甲子園」と呼ばれる全国大会に出場し、準優勝。戦局が悪化した43年、ついに休部となるが、終戦5日後の45年8月20日には、部員たちが一面芋畑となっていたグラウンドに足を運んだ、と部史にある。ここから始まった再建の先に、51、56年夏、2014年春の全国制覇がある。

  ◇    ◇

 艱難(かんなん)辛苦が、人と組織を大きく育てることもある――。毎日新聞京都支局の書棚の片隅に置かれていた史料から感じられた。

〔京都版〕

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