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甲子園交流試合・2020センバツ32校

あなたの高校生活は一つも欠けていない 漫画家・ひぐちアサさん(50)

ひぐちアサさんの自画像=本人提供

 累計販売部数1700万部(電子版含む)以上のベストセラーを記録し、野球漫画の代表作になった「おおきく振りかぶって」(講談社)。作品を通じて甲子園出場を目指す高校球児の日常を描いた作者のひぐちアサさん(50)に、新型コロナウイルス感染拡大により春夏の甲子園が中止になった球児たちへの思いや、救済措置として開催される交流試合について聞いた。【聞き手・岸本悠、藤田健志】

     ――新型コロナの影響で春夏の甲子園が中止となりました。

     ◆当事者ではないんですけど、私もお先真っ暗みたいな気持ちになりましたね。

     ――その後、各地の独自大会、交流試合開催が決まりました。

     ◆球児たちはすごく喜んだのではないでしょうか。普段の練習を球場でやれるだけでも特別なこと。甲子園となれば、なおさらですよね。

     ――「おおきく振りかぶって」を描いたきっかけは?

     ◆出発は「ドカベン」(秋田書店、作・水島新司)です。ずっと大好きで、小学生の時から自分でも描きたいなという思いがありました。高校3年だった1988年の夏に近所の浦和市立高校(現・さいたま市立浦和)が甲子園に出場し、「さわやか旋風」で話題になり、こういう野球漫画が描きたいと思ったんです。

     ――3年生ばかりがクローズアップされますが、下級生にとってもコロナ禍の練習自粛などで大事な時間が失われました。

     ◆1、2年生が3年生を見て学ぶことって、実はすごく多いんですよね。例年でも1年生が入部してから3年生がいなくなるまで、一緒にいられるのは3カ月ほどしかない。今年はそのうちの2カ月がなくなってしまった。可哀そうですよね。

     ――選手たちは「お世話になった人に感謝してプレーしたい」とよく口にしています。

     ◆コロナの影響で一度、野球ができなくなった。そこで、みんな考えたんだと思います。「どうして野球をやってきたんだろう」とか、「今までなぜ野球をやることができたのか」とね。そして、再び野球ができることになって「終わりじゃなかった。家族にもう一回、試合を見てもらえる」と思ったんでしょうね。

     ――交流試合はトーナメントではない異例の甲子園です。どんなところに楽しさを見いだしますか。

     ◆まずは好カードが多いこと。確かにトーナメントではないですが、球児たちにとって甲子園での一試合一試合が決勝みたいなものでしょ。それだけで十分楽しめる。それに選手たちにとっては、真剣勝負であることは変わりません。

     見ている側は「どちらが勝つか」といったことに固執してしまいがちですが、選手たちにとっては人生の一つの通過点。「あなたの高校生活は一つも欠けていない」と言いたいです。

     ――ひぐちさんにとって高校野球とは。

     ◆一言でいうなら、こんなに楽しいものはない。ずっと見ていられるし、感動し元気になる。これからもずっと、高校野球が続いてほしいと願っています。

     ――最後に交流試合への思いを。

     ◆試合は各校1回だけですが、みんな、それを楽しみにして頑張っていると思います。ただただ、滞りなく試合が行われてほしいですね。


     ■人物略歴

    ひぐちアサ(ひぐち・あさ)さん

     さいたま市出身。高校野球をテーマにし、テレビアニメにもなった「おおきく振りかぶって」で手塚治虫文化賞・新生賞、講談社漫画賞・一般部門を受賞。中学、高校ではソフトボール部に在籍した。

    毎日新聞のアカウント

    8月17日の試合

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