2018自民総裁選/1 石破茂・元幹事長(60) 非主流、深まる孤立 「安倍失速」待つ持久戦

毎日新聞

 「熱いお茶いかがですか」

 元日午前0時過ぎ、自民党元幹事長の石破茂は鳥取市の商店街にある自身の事務所前で道行く人に紙コップのお茶を配り、笑顔を振りまいていた。

 毎年の恒例行事だが、例年と違うのは9月に自民党総裁選を控えていること。事務所に集まった支援者約30人を前に地元選出の参院議員、舞立昇治が「天下取りに向けて微力ながら持てる力を出し切ってまいりたい」と気勢を上げた。

 お茶配りを終えた石破が事務所に入ると、男性支援者から声をかけられた。

 「今の自民党はいけんよ。石破さんだから応援しているんだ」

 昨秋の衆院選で自民党は勝利したものの、自民支持者の間にも「安倍1強」への不満がくすぶる。石破は「いけんよ。いけんけども、(党内の)国会議員は『はい、そうですね』と言っていた方が楽なんだろう」と応じた。

 党幹事長、地方創生担当相として安倍政権を支えた石破だが、2016年に閣外に出て以降は「物言わぬ自民党」に苦言を呈してきた。憲法改正や天皇陛下の退位特例法など重要な課題で十分な党内議論を呼びかけたが、反応は冷ややかだ。

 「自民党は国民政党なのだから、いろんな意見があるのは当たり前だ。それを言わなくなったら自民党じゃない。このままじゃ自民党はなくなるぞ」

 石破は危機感を募らせる。だが、これに共感する声は石破が会長を務める派閥「水月会」(20人)の枠を超えた広がりにならない。

支持集めも後手

 「おまえがやらないで誰がやるんだ」

 「森友」「加計」問題などで内閣支持率が急落した昨年6月末、石破派事務総長の古川禎久は、東京都内の焼き肉店に誘った無派閥の浜田靖一、小此木八郎、梶山弘志から発破をかけられた。

 石破が政界の多数派工作にたけていたら、12年の総裁選で安倍晋三に勝てたかもしれない。党員投票で圧勝しながら、国会議員による決選投票で安倍に敗れた。そのときに石破を支援したメンバーを中心に15年に結成したのが石破派だ。

 浜田ら3人は石破と一緒に「無派閥連絡会」をつくって「脱派閥」を唱えたこともある。石破派結成に反発し最近は距離を置いているが、石破にすれば総裁選へ向けて支持を期待したい面々だ。

 安倍はそんな石破の胸中を見透かしたように、昨年8月の内閣改造で小此木と梶山を入閣させた。石破派の孤立は深まる。

干される覚悟

 「『何年干されてもやるぞ』という熱気を(石破派の)20人にまだ感じていない」

 昨年11月、石破が都内のホテルで開いたパーティー。駆け付けた党総務会長の竹下亘があいさつで述べた言葉に、石破派内は「激励と受け止めていいのか」と色めき立った。

 竹下の所属する額賀派(55人)は安倍を支持する主流派の一角を占める一方、「ポスト安倍」を狙う有力な総裁候補を持たない。石破はかつて額賀派に籍を置いていた時期があり、隣の島根県選出の竹下は08年の総裁選で石破の推薦人確保に動いたこともある。

 石破は「竹下さんとは長いからな」と語り、額賀派からの支援に期待をにじませる。小渕恵三内閣の官房長官などを務め、政界引退後も額賀派に影響力を持つ青木幹雄の元にも足しげく通う。

 しかし、総裁選まで約8カ月。竹下は「そんな先のことを今考えたって無駄さ」と言うが、安倍1強に逆らって石破を支援するメリットは乏しい。

 「石破は安倍の『相対』。今は安倍のアンチテーゼでいてくれるだけでいい」と石破派幹部は漏らす。

 安倍の人気が下がったときこそ、石破の出番。言い換えれば、安倍の失速を待つ持久戦だ。「何年干されても」非主流を貫く覚悟が石破派にあるのか。その決断を迫る総裁選が刻一刻と近づく。【高橋恵子】(敬称略)=つづく

     ◇

 今年9月の自民党総裁選で安倍晋三首相が連続3選されれば、2021年までさらに3年間の総裁任期を手にする。昨秋の衆院選で勝って党内基盤を固めた首相は昨年の漢字に「挑」を選んだ。「ポスト安倍」をうかがう人々は新年の政局にどう挑むのか。