2018自民総裁選/3 河野太郎外相(55) 政権主流へ、脱・異端児 「3年後」進次郎氏を意識

毎日新聞

地元の新年会で外交について語る河野太郎外相=神奈川県茅ケ崎市で2018年1月8日、加藤明子撮影

 昨年8月の外相就任以来、寸暇を惜しんで海外を飛び回ってきた河野太郎も、年明けの8日は地元・神奈川県茅ケ崎市にいた。

 「先輩方が本当に丁寧に海外の国に援助してきた。それが今、日本外交の大きな財産になっている」

 市役所のコミュニティーホールで開かれた河野を囲む新年会。集まった支援者を前に河野は従来の外交路線を継承・強化していく姿勢を冗舌に語った。外務省に政府開発援助(ODA)の半減を求め、「害務省」と腐したこともある河野の君子豹変(ひょうへん)が際立つ。

 支援者からは「閣僚の中で一番活躍しているのが河野大臣だ」「政界でトップを取る準備ができた」などの声が上がったが、河野は今年9月の自民党総裁選には触れずじまい。かつては「湘南から未来の総理を」と鼻息の荒かった「跳ねっ返り」(地元関係者)の威勢のいい発言を期待した会場は肩透かしを食った。

不戦敗ショック

 自民党の政策に真っ向から逆らう脱原発を掲げ、消費税を財源とする年金制度改革を主張するなど「異端児」として知名度を上げてきたのが河野だ。特に行政改革には若手時代から熱心に取り組んできた。

 昨年の内閣改造前、党行革推進本部長を務めていた河野は「無駄撲滅」の旗を振り、党本部に省庁の職員を呼んでは怒鳴りつけていた。その河野が本部長代理だった平将明に漏らした。

 「そろそろカツ丼を差し出す役をやりたい」

 行革本部での自身の役回りを、容疑者を厳しく取り調べるこわもての警察官に重ねた例え話だ。昔の刑事ドラマなら、容疑者にカツ丼を勧めて自供を引き出す敏腕刑事が登場する。官僚に恐れられる異端児から、官僚を使いこなす政治リーダーへ。河野は脱皮の機会をうかがっていたようだ。

 何が河野を変えたのか。地元関係者らが指摘するのが2012年総裁選での不戦敗ショックだ。

 河野が初めて総裁選に立候補したのはその3年前。09年衆院選で大敗した野党・自民党の総裁に選ばれたのは元財務相の谷垣禎一だったが、河野は党員投票による地方票で健闘した。

 そして、満を持して臨んだ12年総裁選。民主党政権の迷走で自民党は政権奪還前夜の興奮に包まれていた。河野は「『超日本』宣言 わが政権構想」を出版し、党改革の旗手に名乗りを上げようとした。

 だが、立候補に必要な推薦人20人が集まらない。前回、河野を支持した議員の多くはこぞって安倍晋三の支援に回った。現官房長官の菅義偉からは「河野は安倍の次だ」と諭された。

菅氏が後押し

 河野は父洋平から副総理兼財務相の麻生太郎が引き継いだ麻生派(59人)に所属する。一方で、自民党内の長老支配や世襲政治を批判し、派閥解消などの党改革を唱えてきた。

 現実主義と理想主義の二つの顔。当面は現実主義に徹し、麻生派メンバーの選挙応援にも汗をかく。持論の脱原発や年金改革は首相になったらトップダウンで実行に移そうともくろんでいる。そのときはブログのタイトル「ごまめの歯ぎしり」を「鶴の一声」に変えるつもりだという。

 河野が派閥を軽んじる一匹オオカミのままだったら、安倍内閣の行革担当相、さらに外相に重用されることはなかっただろう。「安倍の次」と言った菅の後押しもあり、かつての異端児は政権主流派の中から「ポスト安倍」の有力候補とみなされるようになった。

 ただし、それは安倍が今年の総裁選で3選を果たすのが前提。15年総裁選に出馬しなかった河野が我慢できるのか。心配する周囲は「今度(3年後の総裁選)は本当の総裁候補になるかもしれない。慎重にやってくれ」と自重を促す。「今までだって本当だ」と減らず口をきく河野だが、置かれた状況はわかっている。

 3年後をにらみ、河野がライバルとして意識するのは同じ神奈川県選出の小泉進次郎だ。小泉はまだ30代だが、世代交代の歯車が大きく回れば、一気に追い越されかねない。

 昨年の衆院選で河野が本音をのぞかせた場面があった。埼玉1区の村井英樹の応援に駆け付けたときだ。

 「いずれ小泉進次郎対村井英樹で総裁選をやるときが必ず来る。その前に私にやらせてください」【加藤明子】(敬称略)=つづく