2018自民総裁選/4 野田聖子総務相(57) 「女性首相」へ長期戦 出馬ありき、勝敗二の次

毎日新聞

 安倍内閣の総務相として新年を迎えた野田聖子は元日、東京都内の自宅マンションで、重度の障害を持つ長男と初日の出に手を合わせ、中央区の日本橋郵便局で行われる年賀状出発式に向かった。長男は6日で7歳。2日のブログに「彼の生きるための困難は、鉄母(自分のこと)の些細(ささい)な悩み悲しみを、吹き飛ばす。だから今年もひたすら前を向くなり」と書いた。

 野田は2015年の自民党総裁選で出馬を目指したが推薦人20人を集められず断念した。今年9月に訪れる再挑戦の機会。野田は3日のBS日テレの番組収録で、推薦人を集める自信は「前回と比較すれば150%くらいある」と語った。

 前回総裁選では一時24人の推薦人を集めたと言うが、「迷惑をかけてはいけないから」と名前を公表していない。安全保障関連法の参院採決を控える緊迫した国会情勢の中、自民党内が選挙戦で混乱するのを嫌った菅義偉官房長官らの圧力で切り崩された。

中曽根氏の教え

 あれから野田は、前回推薦人になることに同意してくれた議員と会食を重ねている。野田自身は派閥に属さない自由な立場だが、支援に前向きな議員には「派閥の許可を得ておいて」と伝えてある。今年の通常国会後に出版できるよう政策集の執筆をほぼ終えた。

 野田を支持する議員の間には、勝敗は二の次でがむしゃらに総裁選出馬を目指すことへの疑念もある。

 昨年12月12日夜、東京・赤坂の料亭で有志が開いた「総務相就任を祝う会」。若手の男性議員が「首相になることが目的なら1回目で勝つのは苦しい。しっかりと戦略を立ててやった方がいい」と苦言を呈した。

 「3回目の総裁選で首相になった小泉純一郎さんや、4回目でなった麻生太郎さんをモデルにしたい」

 こう語る野田には、初挑戦は負けて当然という意識がある。だが、派閥の意向に反して支援する側には、その後の人事などで冷遇されるリスクが伴う。

 「祝う会」では別の男性議員から「みんなが覚悟して応援するのだから『勝つ』という気持ちでやってください」と言われ、野田は「皆さんのそういう思いは分かった」と引き取った。

 野田はなぜ勝算のない総裁選に出たがるのか。1993年の初当選時、中曽根康弘元首相から「国会議員はトップを目指さないと怠け者になる」と指導されたのがきっかけだという。

 首相を目指す女性議員のフロンティアを開拓してきた同志に、08年総裁選に出馬した小池百合子がいる。小池は前回総裁選で野田の推薦人になることを約束していた一人だが、東京都知事に転身した。「勝つ」ことを急いだ小池は希望の党を結成して昨年の衆院選に臨み、一敗地にまみれた。

 野田の選択は、政権内で改革を進める漸進路線。総裁選に出ることは女性議員の「ガラスの天井」を破っていくプロセスだ。それは時の政局に翻弄(ほんろう)される。

官邸の思惑

 昨年8月の内閣改造は大きな転機となった。「安倍1強」の政権運営を批判してきた野田を安倍晋三首相は「率直に耳の痛い話も言ってくれる」と総務相に起用した。野田は女性活躍担当相の兼務を希望する一方、就任直後に次期総裁選への出馬を宣言した。

 前回と違ったのは首相官邸側の反応だ。菅は記者会見で「本人の自由」と容認する姿勢を示した。

 安倍は12年総裁選の党員投票で石破茂に敗れている。国会議員票で石破を上回ったが、今回は党員投票でも石破を圧倒したい。野田が出馬すれば反安倍票が分散する。そんな官邸の思惑は承知のうえで、野田は「そう思ってくれているといい。邪魔されないから」と周囲に語っている。

 昨年12月7日夜、東京・銀座のイタリア料理店に93年初当選の同期9人が集った。「来年で私たちも25年の永年勤続議員表彰だね。よく頑張ってきたよね」と場を盛り上げる野田。正面に座った安倍の視野に後継候補の一人として映っていたのは野田の右隣にいた政調会長の岸田文雄だろう。

 総裁選は話題に上らず、「公務員の60歳定年の引き上げ」に話が及ぶと、63歳の安倍は「そういう人たちを高齢者と呼ぶのは抵抗があるよな」。さりげないその一言に政権継続の強い意思を感じた野田は、長期戦を覚悟した。【田中裕之】(敬称略)=つづく