2018自民総裁選/5止 安倍晋三首相(63) 勝ち方にこだわる 改憲の前に「強い経済」

毎日新聞

地元後援会の新春の集いで支援者らと乾杯する安倍首相。右は妻昭恵氏=山口県下関市で8日、竹内望撮影

 年末年始を東京・六本木のホテルで過ごした安倍晋三首相は、6日から2泊3日で山口県下関市の自宅に帰っていた。昨年10月の衆院選で自民党を勝利に導き、2021年までの長期政権が視野に入った安倍は意気軒高だった。

 「まだまだやるべきことがある。デフレ脱却、人づくり革命、生産性革命、さらには憲法改正だ」

 7、8日は地元の新年会をはしごし、支援者らを前に今後の政策課題を列挙した。口にした順番は安倍の頭にある優先順だろう。

 「まず、デフレ脱却。そのためには賃上げだ」

 安倍は衆院選後、こう言い続けている。デフレ脱却は12年の政権奪還時から最優先課題に挙げてきたが、アベノミクスの5年を経ても実現できていない。政府が経済界に賃上げを求める「官製春闘」はすっかり新春の風物詩となった。

 安倍は5日、東京都内のホテルで開かれた経済3団体共催の新年祝賀パーティーであいさつし、「経済の好循環を回していくためには今年の賃上げ『3%』をお願いしたい」と数値目標を強調して要請した。

「敗北」の記憶

 安倍が見据えるのは、今年9月の自民党総裁選で3選された後の政権運営だ。

 「19年10月に消費税率を引き上げれば、総裁任期の満了と消費の冷え込む時期が重なる」

 昨年12月12日夜、内閣官房参与の藤井聡、参院議員の西田昌司らと首相公邸で会食した際、安倍はこう漏らした。3年間の総裁任期が満了するのは21年9月。景気刺激効果の期待できる20年の東京五輪が終わり、消費増税の反動がそのころに表れると懸念する。

 衆院議員の任期が切れるのも21年10月とほぼ重なる。安倍は昨年の衆院選後、「もう選挙はやらない」と語っている。21年秋まで衆院解散・総選挙は考えず、任期を全うしたうえで後継総裁にバトンを渡す。それまでにデフレ脱却を果たし、人づくり革命と生産性革命によって日本経済の足腰を強くしようというのが安倍の長期政権プランだ。

 12年9月に党総裁に返り咲いて以降、3回の衆院選、2回の参院選で大勝を重ねてきた安倍だが、どうしても雪辱を果たしたい「敗北」がある。12年総裁選の党員投票による地方票で石破茂に大差をつけられた。国会議員による決選投票で石破を破って今の安倍があるわけだが、今年の総裁選では地方票でも石破を圧倒し、敗北の記憶を上書きしておきたい。

 総裁3選へ向け安倍は「勝ち方」にこだわる。自民党の総裁任期は連続3期まで。3期目に入れば、党内の関心は「ポスト安倍」へ向かう。「秋以降、終わりが見える政権からどんどん人が離れかねない。いかに手を打っていくかが重要になる」(首相経験者)

3選後の不安

 12月22日夜、安倍は東京・赤坂のふぐ料理店に参院幹事長の吉田博美らを招いた。吉田は額賀派の実力者で、青木幹雄元参院議員会長の「直系」として参院自民党を取り仕切る。この会合で吉田は総裁選での安倍支持を明言しなかった。

 石破は劣勢を巻き返そうと青木との距離を縮めている。額賀派の中でも特に参院側には「安倍1強」を揺さぶりたい思惑もあるようだ。石破を支援すれば非主流派に転落するリスクを負うことになるが、額賀派の参院幹部は「青木さんが安倍以外をやれと言えばやる。負け戦でも総裁選で参院の力を誇示できれば、国会運営で優位に立てる」と党内情勢をうかがう。

 安倍としては、付け入る隙(すき)を与えないためにも今年の通常国会を無難に乗り切らなければならない。

 昨年の通常国会では「森友」「加計」問題などで1強のおごりが批判を浴び、内閣支持率が急落した。

 安倍は「(森友・加計問題は)役所の陰謀なのではないか」と漏らしたこともある。「強すぎる首相」に対する不満は霞が関にもくすぶり、それが安倍の不安材料となっている。

 憲法改正を急げば、それも混乱の種になり得る。新年の抱負で政策課題の4番目に挙げたのは「無理はしない」という意識の表れか。12月6日には副総裁の高村正彦に「全てお任せします」と伝えている。

 改憲の宿願をかなえるためにも総裁選の「圧勝」と「強い経済」が欠かせない。【高橋克哉】(敬称略)=おわり