倉敷・男子、歴史刻む熱走 同校レコードで雪辱 /岡山

毎日新聞

優勝し、笑顔でガッツポーズする倉敷・男子の選手ら=京都市右京区で、戸田紗友莉撮影

 京都市で23日にあった男子第69回、女子第30回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)で、男子県代表の倉敷(41年連続41回目)が2時間2分9秒の同校歴代最高タイムで2年ぶり2度目の優勝に輝いた。一時は首位の座を譲ったが、後半に逆転して栄冠を勝ち取った。女子県代表の興譲館(20年連続20回目)も1時間8分32秒で2年連続の入賞。女子・中国地区代表で初出場した倉敷は1時間9分12秒の12位と健闘した。【戸田紗友莉、益川量平】

 1区の八木志樹(もとき)選手(3年)はリベンジに燃えていた。6区を走った昨年の都大路ではトップでたすきを受け取ったが、優勝を争うライバルに抜かれ、チームも2位に終わった。大会1週間前に腰を痛めた影響だった。今年は優勝だけを目標にスタートラインに立ち、走っている間も「これで最後の都大路」と自身を奮い立たせた。8位でたすきをつなぎ、流れを作った。

 2区を走った宍戸来嘉(らいか)主将(同)は初めての都大路。「一人一人抜かしていこう」と必死に前を追い、順位を保って走り切った。そして3区に大会注目のケニア人留学生、フィレモン・キプラガット選手(2年)が登場。「チームメートと『優勝するぞ』と約束していた」。長い手足をテンポ良く揺らし、区間賞の走りで首位に躍り出た。

 4区は昨年と同様、若林陽大(はると)選手(3年)が任された。世羅(広島)の留学生選手に抜かれて「いきなり来て焦った」と話すが、ペースを崩さずに2位で後続につないだ。5区の寺元颯一(そういち)選手(2年)は首位の座を奪い返すことはできなかったが、「最低限の走りができた」と2位をキープした。

 そして勝負の分かれ目となった6区。昨年は首位から陥落した区間だ。石原翔太郎選手(同)は上り坂でじわじわとトップとの差を詰め、下り坂で一気に追い抜いた。「計画通り。絶対に負けられないと思っていた」とチームは再び首位に返り咲いた。

 最後にたすきを受け取ったアンカーの井田春(しゅん)選手(3年)も区間賞を奪う快走。最後は両手を突き上げてフィニッシュテープを切った。「最初で最後の都大路。3年間しっかり練習してきたので、笑顔で終わりたかった」。昨年の雪辱を果たす逆転劇に、白い歯がこぼれた。

女子は12位 初挑戦エンジョイ

12位でフィニッシュする倉敷のアグネス・ムカリ選手=京都市右京区の西京極陸上競技場で、小出洋平撮影

 「自分ができることを出し切れ」と監督に送り出された1区の山本晏佳吏(あかり)選手(2年)は、約2キロ地点まで先頭集団に食らい付いた。「きつかった。持久力のなさを痛感した」と終盤に離されたものの、22位でたすきをつないで役割を果たした。2区の萩原柚乃(ゆの)選手(1年)は「目の前の選手をターゲットに走る」と実力のある選手にピッタリとついた。細かい曲がり角の多いコースを苦にせず、「全国の強い選手と走れて最高だった」と順位を二つ上げて中継所に飛び込んだ。

 3区の山下夏実主将(2年)は後半の上り坂で苦しい場面もあった。それでも「自分の力を全部出したい」と前を走る選手に離されないように粘り強く走り、後続にたすきを渡した。4区の藤田彩希(さき)選手(同)は「メンバーに入れるか、ずっとドキドキしていた」という。県予選、中国大会ともに出場していなかったが、大会直前にメンバー入り。「下り坂でうまくスピードに乗れた」と力走した。

 アンカーでケニア人留学生のアグネス・ムカリ選手(1年)は「プレッシャーなく気楽に走れた」と快走。12人をごぼう抜きしてフィニッシュした。「初めての都大路は楽しくて、疲れなかった」と充実した笑顔を見せた。

声援届いた!

倉敷高の生徒たちも男子の優勝に歓声を上げて喜んだ=岡山県倉敷市鳥羽の同校で、石川勝己撮影

 ○…倉敷高校(倉敷市鳥羽)では多目的ホールの大型スクリーンに中継映像が流れ、生徒や教職員、地域住民らが応援した。男子のレースには約70人が集まった。定期演奏会のため学校に残っていた吹奏楽部員で2年の前川大(まさる)さん(17)は最前列で応援リーダーを務めた。「優勝できると信じていた。豪雨の被災地に勇気と元気を与えてくれた」と興奮した様子。近くに住む武則啓子さん(68)は「ランニング中もあいさつしてくれる。よくやった。帰ってきたら『おめでとう』と声を掛けたい」とたたえた。【石川勝己】

女子・興譲館8位 入賞争い制し涙

8位でフィニッシュする興譲館の落合莉子選手=京都市右京区の西京極陸上競技場で、小出洋平撮影

 1区を走った酒井想(こころ)選手(3年)は4キロ過ぎまで3位集団を引っ張った。大好きな上り坂を前にした4・5キロ辺りから思うように足が進まなかったが、「自分は強い」と言い聞かせて粘り、16位につけた。

 2区はケニアからの留学生、ムワンギ・レベッカ選手(2年)。1・5キロ地点から一気に加速し、12人を抜き去る驚異的な追い上げを見せた。「今日は調子が良かった」と区間新記録にあと8秒に迫る走りで順位を4位に押し上げた。

 3区の山下穂香(ほのか)選手(同)は1週間前から左足首を痛めていた。1キロ地点でペースが落ちたものの、「前を詰めよう」と足を進めた。8位でたすきを受けた4区の舛田華(はな)主将(3年)は初めての都大路。「課題のラストスパートをうまくかけることができた」と3年間の集大成にふさわしい区間6位のタイムで次につないだ。

 5区の落合莉子選手(2年)がたすきを受け取ったのは7位。「(入賞圏内の)8位と9位では全く違う」という監督の言葉を思い出した。一つ順位を下げ、9位のチームと競り合いが続く中、ラスト200メートルでスパートをかけて一歩先にフィニッシュし、入賞争いを制した。その差はわずか2秒。中継所から戻った選手らは泣きながら入賞を喜び合った。

涙未来の力に興譲館酒井想選手(3年)

 伝統校のエースとして「花の1区」を走り終えたその目には涙が光っていた。

レース後、チームメートと話す興譲館の酒井想選手(中央)=京都市右京区の西京極総合運動公園で、戸田紗友莉撮影

 2年ぶりの都大路だった。1年生ながら出場した一昨年は2区。無我夢中で駆け抜けたが、チームは16位と入賞を逃した。その悔しさを晴らそうとしていた昨年3月、左足を疲労骨折した。手術しかないと言われ、涙が止まらなかった。藤井裕也監督(26)の「お前なら戻れる」という言葉に背中を押された。

 手術後の練習は歩くことから始まった。横でチームメートが走る姿を見て、「絶対に負けない」と人一倍リハビリに励んだ。負けず嫌いな性格もあり、今年復帰にこぎつけた。

 この日、「流れを作りたい」とスタートラインに立った。積極的に走ったものの、3キロの通過タイムは予想以上に早かった。その後、ペースが落ちる。大好きな上り坂も今回ばかりはつらい道のりになった。2区の選手が見えた時、申し訳ない気持ちでいっぱいに。それでも表情には出さず、たすきを渡す際に背中を強く押した。

 レース後、自分の走りを振り返り、涙が止まらなかった。それでも、仲間が戻るとうれし涙に変わった。卒業後は実業団に入る。「この悔しさをバネに、実業団ではスーパールーキーになりたい」。彼女は次に向けて走り始めた。【戸田紗友莉】


倉敷の記録

 ◆男子

1区(10キロ)     八木志樹   29分48秒(8) 8位

2区(3キロ)      宍戸来嘉    8分23秒(8) 8位

3区(8.1075キロ) キプラガット 22分55秒(1) 1位

4区(8.0875キロ) 若林陽大   23分37秒(3) 2位

5区(3キロ)      寺元颯一    8分41秒(2) 2位

6区(5キロ)      石原翔太郎  14分24秒(2) 1位

7区(5キロ)      井田春    14分21秒(1) 1位

記録=2時間2分9秒※カッコ内数字は区間順位

 ◆女子

1区(6キロ)      山本晏佳吏 20分15秒(22) 22位

2区(4.0975キロ) 萩原柚乃  13分28秒(20) 20位

3区(3キロ)      山下夏実  10分19秒(33) 22位

4区(3キロ)      藤田彩希   9分55秒(26) 24位

5区(5キロ)      アグネス  15分15秒 (3) 12位

記録=1時間9分12秒※カッコ内数字は区間順位

興譲館の記録

1区(6キロ)      酒井想  20分 6秒(16) 16位

2区(4.0975キロ) ムワンギ 12分32秒 (1)  4位

3区(3キロ)      山下穂香 10分13秒(25)  8位

4区(3キロ)      舛田華   9分35秒 (6)  7位

5区(5キロ)      落合莉子 16分 6秒 (9)  8位

記録=1時間8分32秒※カッコ内数字は区間順位