女子・神村学園、鮮烈逆転 男子・倉敷「2段構え」的中

毎日新聞

 30回の記念大会となった女子は神村学園(鹿児島)が初の栄冠をつかみ、男子は倉敷(岡山)が2年ぶりの頂点に立った。京都・西京極陸上競技場を発着するコースで23日に開かれた男子第69回、女子第30回全国高校駅伝。倉敷は歴代4位の好タイム、神村学園も歴代9位のタイムをマークした。前回優勝校は男子の佐久長聖(長野)が5位、女子の仙台育英(宮城)は3位だった。女子の大分東明は4位に入り、初の入賞(8位以内)を果たした。(スタート時の気象▽女子=晴れ、気温13・9度、湿度62%、南の風0・1メートル▽男子=曇り、気温15度、湿度49%、無風)

 ◆女子

神村学園、鮮烈逆転 「優勝3年計画」結実

 顔色ひとつ変えず悠々と抜き去った。神村学園の5区・カマウが3キロ手前で先頭で逃げる仙台育英・武田を捉えた。「最初の2キロでどんどん近くなり、余裕があった」。トップとの31秒差をはね返し、逆に2位に26秒差をつけた。

 鮮やかな逆転劇には、4区までの理想的なレース運びがあった。1区・主将の平田がスタート直後から集団前方に位置取り、優勝を争う仙台育英や長野東に先行して6位。2区から3人の1年生は不安材料だったが、「(長野東と)一緒にレースができた」と有川監督。2、3区は並走して耐え、4区でも背後についた。ライバルをペースメーカーとしてうまく利用することで、逆転可能な距離を保った。

 立役者になった平田とカマウは3回目の舞台。2人はチームが都大路への20年連続出場を逃した翌年に入学。以降、ケニアから来た初の留学生・カマウと平田はチームの2本柱として活躍してきたが、優勝候補に挙がった前々回は3位、前回も8位。前回は1区で遅れた平田は「チームのブレーキになったが、そこから気持ちを切り替えたことが優勝につながった」と喜びをかみしめた。

 平田たちの入学前から「3年計画」で初の頂点を目指すと心に決めていた有川監督。卓越したレース運びに加え、競うように成長を遂げた選手たち。絵に描いた通りの最高の形で結実した。【長宗拓弥】

念願の舞台 圧巻区間賞 広中璃梨佳(りりか)=長崎商・3年

 前だけを見ていた。「全てを出し切ろう」。トレードマークの青紫色の帽子で狭まった視界から、ほかの57人の存在は消えていた。

 「勝負どころ」と決めていた上り坂となる2キロ手前で早々と飛び出した。4キロで独走態勢となり、首を左右に揺らしながら力を振り絞った。区間記録(18分52秒)には届かなかったものの、2位に31秒の差をつける19分1秒の好記録をマークした。

 中学から陸上を始めた。身長164センチの恵まれた体格と、元実業団監督の定方次男さんの指導で力を伸ばした。高校1年の時の全国都道府県対抗女子駅伝で、実業団選手を含めた11人抜きで全国に名が知れ渡った。

 U20(20歳以下)世界選手権代表などの活躍があっても、本人の頭にあるのは駅伝。長崎県予選で過去2回、1区で区間賞を取ったが、諫早の壁を打ち崩せず、最終学年で初めて都大路のスタートラインに立てた。

 実業団に進む予定で、その視線の先には世界の舞台がある。「どんな3年間だったか」と聞かれると、笑顔で言った。「短かった。長商に来て本当に良かったです」【生野貴紀】

仙台育英、追い上げに焦り

 ○…3位でフィニッシュし、2連覇を逃した仙台育英。アンカー・武田の目からは涙があふれ続けた。2位に20秒差をつけて最終5区に入ったが、迫る神村学園の足音に「焦って力が入り、自分の走りができなかった」。あっという間に首位を譲り、フィニッシュ直前で長野東にとらえられた。故障者が出て前日にオーダーを組み直すなど波乱もあった中で、3位と前回女王の底力は見せた。「悔しさ半分、すがすがしさ半分」。釜石監督は選手たちを誇らしげにたたえた。

大分東明、初入賞4位

 ○…大分東明がチームの歴代最高の4位に入り、初入賞と躍進した。アンカー5区のモカヤがタスキを受けた時点でトップと1分6秒差の12位。しかし、今年の全国高校総体3000メートルを制したケニア出身の留学生は大きなストライドを伸ばし、次々と追い抜いてみせた。モカヤは日本語で「うれしい」と満面の笑みを浮かべた。6回目の出場で過去最高は昨年の14位。1区を走った主将の神田は「目標だった入賞が達成できてよかった」と涙ぐみながらモカヤと抱き合った。

長野東、連続2位

 ○…長野東が2年連続の2位と地力を見せた。アンカーの小林がフィニッシュ手前の直線で仙台育英・武田を抜き、「競技場に入ったら前を抜かすことだけを考えた」。2年連続でアンカーを任され、昨年と同様トラック勝負を制してのメダル獲得に「とてもうれしい」とほほ笑んだ。

 優勝候補にも挙げられていた今大会。2区の萩谷が大会直前に右足の甲に痛みを感じ、玉城監督は「不安はあった」という。それでも、3区までで5位と粘りを見せ、4区の小原が区間賞の力走で2位に浮上した。念願の初優勝には届かなかったが、玉城監督は「昨年とは違うレース展開で、重みが違う。価値ある準優勝」と選手をたたえた。

 ◆男子

倉敷「2段構え」的中 抜かれたら、抜き返す

 この瞬間を待っていた。6区の2・8キロ付近。トップの世羅との17秒差を追いついた倉敷の2年生・石原が、鋭いスパートで突き放す。「下りで(ペースを)上げようと思っていた」。チームは昨年、この付近で佐久長聖に逆転されて2位。因縁の地でリベンジを果たし、そのまま逃げ切って王座を奪還した。

 優勝へのプランは崩れたかに見えた。3区のキプラガットが7人抜きの区間賞で想定通りにトップに立ち、2位と35秒差に広げた。だが、4区にケニア人留学生を置く世羅の戦略がはまり、逆転を許す。「想定していなかった展開」と石原が言えば、1区のエース八木は「正直、駄目かと思った」。

 だが、新監督の思惑だけが違った。昨年の反省を踏まえて「準エース(石原)を6区に持ってきた」。ライバルの力も見極め、終盤でも逆転可能な「2段構え」の布陣が的中。昨年6区を担った八木は「感動した」と後輩の石原をたたえた。

 中学時代に全国レベルだった選手がいない「雑草軍団」。各選手が腹八分のペースながら距離重視の練習で足腰をしっかり作り、5000メートルの平均タイムは全国屈指を誇る。さらに、昨年の屈辱を胸に雑用も率先する3年生を慕い、下級生が試合への心構えなどを聞く機会も増えて全体が底上げされた。八木は「後輩が(レベルが)上がったから、3年生も上がれた」。その選手層の厚さが本番の終盤でも利いた。

 岡山県倉敷市は今夏に西日本豪雨で大きな被害を受け、学校も練習場所のトラックが使えなかったハンディキャップも乗り越えた。「倉敷は元気だとアピールしたかった」。うれし泣きし、さらに満面の笑みを浮かべる選手の横で、新監督が目を細めた。【新井隆一】

世羅、ペース乱し

 その背中を捉えることはできなかった。トップと13秒差でタスキを受けた世羅の7区・倉本は「徐々に追いつける」と自分に言い聞かせた。2キロ過ぎでペースを上げて差を縮めたが、後半は焦りからペースが乱れた。14秒差の2位でフィニッシュ。チームメートに謝るかのように両手を合わせると泣き崩れた。

 5区までは予想以上の展開だった。岩本監督が「一か八かだったが、下りの方が生きる」と留学生のムワニキを4区に起用。これがうまくはまり、区間タイ記録で45秒差を逆転してトップに躍り出た。5区まで首位をキープしたが、倉敷に再逆転を許し、岩本監督は「向こうの執念が上回っていた」と負けを認めた。

 最多優勝9回を誇るが、一昨年7位、昨年20位と優勝争いに絡めなかった。「2年間はトップを走るところを見たことがなかった。今年、優勝争いができたことは自信になる」と主将の梶山。出場メンバーの中で来年も残る5人の後輩たちに期待をかけた。【長田舞子】

九州学院、3人抜き4位

 ○…1区のエース・井川がけがのため振るわない誤算のあった九州学院だが、7区・今村が区間賞の走りで4位に入った。7位でタスキを受け取ると最初から飛ばしていき、先行する集団に追いつく。3人によるトラック勝負にもつれ込んだが、佐久長聖を最後の直線でかわし「スピードには自信があった」と喜んだ。全国高校総体3000メートル障害決勝では障害にぶつかって途中棄権。悔しさを味わっただけに「全国の舞台での悔しさは全国で晴らそうと思っていた」。

区間賞に驚き

 ○…1区で区間賞を取った埼玉栄・白鳥は「びっくりした」と驚きを隠さなかった。7キロまでの上りを終えるまで先頭集団で体力を温存し、「ラスト200メートルは足がもげてもいけと監督に言われていた」とスパートをかけて制した。全国高校総体では5000メートルで予選落ち。その屈辱を力に変えて練習を積んだ。チームは3位だった2014年の記録を塗り替える最高タイムを記録。2年の白鳥を含め6人が来年も残り、神山監督は「経験は力になる」と手応えを得た様子だった。

前回王者5位

 ○…前回王者の佐久長聖は目標に掲げた5位に入り、高見沢監督は「上出来」とたたえた。後半は流れに乗り、5区・鈴木が区間4位、6区・宮内が区間賞、7区・富田が区間4位で合計タイムも想定を6秒上回った。それでも、前回の優勝を経験している富田は「もっと上の順位に入りたかった。悔しい」とこぼす。今季は連覇への期待から練習をやり過ぎて故障が相次いだ反省もある。高見沢監督は「今後、強くなる材料にしたい」と巻き返しを誓った。


神村学園(鹿児島県いちき串木野市)

 1956年創立の私立校。野球部は2005年選抜大会準優勝。女子サッカー部、女子ソフトボール部なども全国屈指の強豪。


倉敷(岡山県倉敷市)

 1960年創立の男女共学の私立校。旧校名は岡山日大。41年連続出場は大会史上最長で2016年に初優勝した。女子は今大会初出場。