「スーパー中学生」と呼ばれた男 群馬・東農大二・石田の苦悩と再生 全国高校駅伝

毎日新聞

チームメートに笑顔を見せ、練習に備える石田=群馬県の東農大二高グラウンドで2019年12月6日午後2時45分、生野貴紀撮影

 男子第70回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)は12月22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に7区間42.195キロのコースで開催される。中学時代に三つの「中学新」記録をマークした東農大二(群馬)の石田洸介(2年)はスランプを克服し、初の都大路に挑む。

 「空っ風」が身を切るように吹き付ける。東農大二の石田は名物の強風を切り裂くように、大きなストライドでぐんぐんと進む。1年前、福岡から来た男の顔はたくましさを感じさせた。

トップ選手の一言きっかけにスランプ克服

 1500メートル、3000メートル、5000メートルと三つの「中学新」を出した3年生を、周囲は「スーパー中学生」と呼んだ。進路は指導方針と寮生活にひかれ、遠く離れた群馬の地を選んだ。「将来につなげるステップ」と、自らの成長を疑わなかった。

 10代半ばにして、陸上ではすでに有名人。大会に出るたび、周囲の視線と期待を感じた。「あいつならこれくらいで走るだろうとか。記録を持っている以上、宿命を背負わないといけない」。だが、入学後はなかなか結果が出なかった。高校総体出場を逃し、駅伝も県予選で敗れた。体と心にズレが生じていた。「今思えば中学の自分を引きずり過ぎていた。失敗しても次は成功するだろうと思っていたのに、失敗の連続で……。表に出たくない、行き場がない、陸上をやめたいと思っていたくらい」。精神的に追い込まれていた。

 きっかけがほしかった。スマートフォンを取り出し、連絡を取った。相手は2012年ロンドン五輪5000メートル代表歴もある佐藤悠基(33)=日清食品グループ。中学時代、テレビ番組での共演が縁で知り合った。今もマラソンで東京五輪日本代表を目指して奮闘するベテランに聞きたいことがあった。

 「モチベーションを保っていられる原動力は何ですか?」

 佐藤の答えは「小さい目標を立てて、一つずつクリアしていくことかな」。心にしみた。「試合で結果が出なくても練習で自信を付けていこう」。焦りが消え、スランプを脱した。今年の高校総体5000メートルは9位。11月の記録会では5000メートル13分51秒の自己ベストをマークした。

 初の都大路は恩返しの場にしたいと言う。「家族、先生、チームメート、中学の顧問。結果が出なくても支えて良かったと思ってもらえるように」。誰かを見返すためではない。衝撃的な走りを見せた時、中学時代の幻影は「スーパー中学生」の肩書とともに消え去るだろう。【生野貴紀】