最多9度Vの世羅、“兄貴分”29歳監督が進める「変革」 全国高校駅伝

毎日新聞

就任1年目の大工谷監督(右端)の指導のもと、練習に励む世羅の男子選手たち=広島県世羅町の世羅高校で2019年12月8日午前11時55分、田中将隆撮影

 男子第70回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)は22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に7区間42.195キロのコースで開催される。最多9回の日本一を誇る世羅(広島)は監督交代で臨む初の都大路で、前回大会2位の雪辱に燃える。

 高校駅伝界随一の伝統校が「変革」の時を迎えている。第1回大会の優勝を皮切りに、強豪校であり続けている世羅(広島)。最多9回の優勝のうち、5回の日本一に導いた名将・岩本真弥氏が今年3月限りで退任し、今季から大工谷秀平監督(29)が指揮を執る。

 岩本氏は自主性を重んじ、多くを語らず選手と一定の距離感を保ちながら優れた洞察力で力を引き出してきた。一方、大工谷監督は選手と年齢が近い「気安さ」を生かし、笑顔で積極的にコミュニケーションを図る。「岩本監督とは正反対」と自認する大工谷監督は「自主性を持たせることには賛成。ただ、僕は選手と距離を取るのが得意じゃない。伝統は引き継ぎながら、選手がプレッシャーを感じないようにしたかった」。練習法は例年から大きく変えずに、何でも言い合える雰囲気を作った。

 同校OBで東京農大を経て2012年からコーチとして携わった経緯があるからこそ、選手からの信頼も厚い。県予選で4区を走った新谷紘ノ介(2年)は「目線が選手に近い。思ったことは何でも言える、兄貴のような存在」と語る。大工谷監督は「『監督が代わったけえ、世羅はだめじゃろ』と思われる、その隙(すき)を突きたい」と笑う。

 チームの強みは、大工谷監督が「全国でうちが最も強い」と胸を張る3、4区だ。「坂道を走らせたら右に出る選手はいない」と太鼓判を押す中野翔太(3年)が昨年と同じ3区を走る。昨年4区で区間タイ記録の走りを見せたケニア人留学生のジョン・ムワニキ(2年)を県予選で温存。万全を期して4区を任せる予定だ。

 鍵を握るのは1区を走る主将の倉本玄太(3年)。アンカーだった昨年はわずか14秒差の2位。優勝校の背中を見ながらゴールし、「あの光景が目に焼き付いていて一生忘れられない。負けたまま終わりたくない」。王座奪還への思いは、どこよりも強い。【田中将隆】