都大路、新章つなぐ 男子注目校

毎日新聞

初めての都大路へ向けて調整する自由ケ丘の選手たち=北九州市八幡西区で

 男子第70回、女子第31回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催、SGホールディングス特別協賛)は22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に男子が7区間42・195キロ、女子が5区間21・0975キロのコースで行われる。記念大会の男子は都道府県代表に地区代表を加えた58校、女子は都道府県予選を勝ち抜いた47校が師走の都大路を駆け抜ける。令和最初の大会で栄冠に輝くのはどの学校か。都道府県・地区予選で好タイムをマークし、都大路で頂点を目指す男女の注目校を紹介する。

自由ケ丘、挑む新星

 自由ケ丘(福岡)が“4度目の正直”で都大路初出場を決めた。福岡県予選は2018年まで3年連続2位。昨年は優勝候補の筆頭に挙げられたが、優勝した大牟田に24秒差で敗れた。今年は塚田翔伍主将(3年)ら昨年の悔しさを知る5人がメンバーに残り、雪辱を期した県予選でこの5人が区間賞を獲得。2位の大牟田に50秒の大差をつけ、都大路への初切符を手にした。

 駅伝部の創部は2002年。創部当時から指導する岸本隆雄監督(50)は「最初は部員が足りず、サッカー部員を借りて県予選に出ていた」と振り返る。

 今年の県予選メンバーは全員が高校のある北九州市や周辺の中学出身者。自宅から通学し、多くが難関大学を目指す進学クラスに所属しており、通常の授業以外にも朝や夕方の課外授業に出席する。駅伝の練習に充てる時間は限られるが、「うちはこれが当たり前だと思っている」(岸本監督)と文武両道を貫いてきた。

 中学時代に全国レベルの実績を残した選手はおらず、各選手は高校入学後から着実に力をつけてきた。中学時代はサッカー部だった塚田主将は、「他の競技に挑戦したい」と駅伝部に入部した。当初は5000メートルが15分54秒だったが、「練習の中できつい時の粘り方やタイミングが分かるようになってきた」と順調に成長し現在は14分41秒と1分以上もタイムを縮めた。

 昨年、岸本監督と選手たちは県予選で2位に終わった悔しさを胸に、都大路に足を運んで沿道でレースを観戦した。観客やスタッフの多さ、ランナーへの大きな声援を目の当たりにした選手たちは「夢の舞台。来年はここで絶対に走る」と決意を新たにした。

 初めての大舞台にも「伝統校と比べてプレッシャーは少ない。生半可な気持ちで入賞はできないので、全員が強い気持ちで臨みたい」(塚田主将)と選手たちに気負いはない。県予選では2時間5分49秒の好タイムを出しており、都大路でも序盤から積極的に仕掛けていければ入賞争いも見えてくる。【黒澤敬太郎】

変革・世羅、伝統熟成

就任1年目の大工谷監督(右端)の指導のもと、練習に励む世羅の男子選手たち=広島県世羅町の世羅高校で

 高校駅伝界随一の伝統校が「変革」の時を迎えている。第1回大会の優勝を皮切りに、強豪校であり続けている世羅(広島)。最多9回の優勝のうち、5回の日本一に導いた名将・岩本真弥氏が今年3月限りで退任し、今季から大工谷秀平監督(29)が指揮を執る。

 岩本氏は自主性を重んじ、多くを語らず選手と一定の距離感を保ちながら優れた洞察力で力を引き出してきた。一方、大工谷監督は選手と年齢が近い「気安さ」を生かし、笑顔で積極的にコミュニケーションを図る。「岩本監督とは正反対」と自認する大工谷監督は「自主性を持たせることには賛成。ただ、僕は選手と距離を取るのが得意じゃない。伝統は引き継ぎながら、選手がプレッシャーを感じないようにしたかった」。練習法は例年から大きく変えずに、何でも言い合える雰囲気を作った。

 同校OBで東京農大を経て2012年からコーチとして携わった経緯があるからこそ、選手からの信頼も厚い。県予選で4区を走った新谷紘ノ介(2年)は「目線が選手に近い。思ったことは何でも言える、兄貴のような存在」と語る。大工谷監督は「『監督が代わったけえ、世羅はだめじゃろ』と思われる、その隙(すき)を突きたい」と笑う。

 チームの強みは、大工谷監督が「全国でうちが最も強い」と胸を張る3、4区だ。「坂道を走らせたら右に出る選手はいない」と太鼓判を押す中野翔太(3年)が昨年と同じ3区を走る。昨年4区で区間タイ記録の走りを見せたケニア人留学生のジョン・ムワニキ(2年)を県予選で温存。万全を期して4区を任せる予定だ。

 鍵を握るのは1区を走る主将の倉本玄太(3年)。アンカーだった昨年はわずか14秒差の2位。優勝校の背中を見ながらゴールし、「あの光景が目に焼き付いていて一生忘れられない。負けたまま終わりたくない」。王座奪還への思いは、どこよりも強い。【田中将隆】

東農大、二エースに学ぶ

2年ぶりの都大路へ調整する東農大二の選手たち。2年生の石田(右から3人目)を中心に大きな成長を遂げた=東農大二高グラウンドで

 ドラスチックな改革に必要なのは「敗北」と「エース」の存在だった。2年ぶり28回目の都大路となる東農大二(群馬)は昨年、代表の座を逃したのをきっかけに大きく生まれ変わった。

 福岡・浅川中3年時に1500、3000、5000メートルの三つの「中学新」を記録した石田洸介(2年)。東農大二の指導方針にひかれ入学した「スーパー中学生」が、チームの大きな戦力になるはずだった。だが昨年の県予選で樹徳に敗れ、4年連続出場はかなわなかった。その差は17秒。距離にして約100メートルの差に涙した。

 「失敗した時ほどチームは変われる」。就任11年目の城戸口直樹監督(40)は覚悟を決めた。日ごろから大会を想定させるため、練習前のウオーミングアップ、練習場所への移動などを各自で決めさせた。集団で走ることはほとんどなく、ペースの上げ下げも自ら判断。長年伝統だった丸刈りの髪形も自由にした。

 自立を促す一方、選手間で意識の違いが生じやすくなるリスクもあった。そこで柱となったのが石田の存在だ。宗像直輝主将(3年)は石田について「自分の強さを過信せずに練習を大切にする。下級生でも見習うべきだ」と言う。城戸口監督は選手たちに「競技に向かうためのベース作りは、誰でも石田から学ぶことができる」と繰り返した。細かな準備にも気を抜かない姿勢は、他の部員の最良の手本になった。

 迎えた今年の県予選では2時間5分59秒の大会新記録で圧勝。昨年は伸び悩んだ石田も、11月の記録会の5000メートルで自己新の13分51秒をマークするなど調子を上げて本番を迎える。「やってきたことを信じるだけ」と石田。8大会ぶりの8位入賞を目標に、改革は間違いなかったと証明する。【生野貴紀】


男子歴代10傑◇

 学校       記録        大会

(1)世羅(広島)   2時間1分18秒★ 15年全国大会

(2)仙台育英(宮城) 2時間1分32秒★ 04年全国大会

(3)仙台育英(宮城) 2時間2分7秒★  03年全国大会

(4)倉敷(岡山)   2時間2分9秒★  18年全国大会

(5)佐久長聖(長野) 2時間2分18秒  08年全国大会

(6)世羅(広島)   2時間2分23秒★ 18年全国大会

(7)倉敷(岡山)   2時間2分34秒★ 16年全国大会

(8)世羅(広島)   2時間2分39秒★ 14年全国大会

(9)佐久長聖(長野) 2時間2分44秒  17年全国大会

(10)仙台育英(宮城) 2時間2分46秒★ 19年宮城

(予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)


 ■NHKで生放送

NHKが生中継 女子は午前10時5分、男子は午後0時15分からNHK総合テレビ、ラジオ第1で。