夢の頂点へ駆ける 女子注目校

毎日新聞

走り込み量を増やし、初の都大路に挑む県岐阜商の選手たち=岐阜市で

県岐阜商、走力上昇

 前年は予選2位に終わった県岐阜商だが、初出場をつかめた一因は走り込み量の増加だ。3月まで市岐阜商で指導し、今春就任した今井哲監督(54)は、以前から県岐阜商の練習の様子を見かけるたびに「走る量が足りない」と思っていたという。改善しようと、選手各自に任せていた朝練習のメニューに放課後の練習で使う約1キロの周回コースの走り込みを取り入れた。

 今井監督が来るまで、同校には女子長距離を専門で指導する人がいなかった。県岐阜商出身の今井監督は東洋大で箱根駅伝を走った経験もあり、関商工(岐阜)のコーチとして都大路に出場したこともあった。時には選手から練習内容などについて質問攻めにあうなど、今井監督は「みんな指導に飢えていた」と振り返る。

 練習量の増加と選手の意欲がかみ合い、成果はすぐに出始めた。当初は5周だった朝練習も、夏前にはさらに1周増やし、男子と同じペースで走れる距離が伸びていった。主将の加藤愛結(あゆみ)(3年)は「練習の質が上がり、少しずつ全体のレベルも上がっていった」と語る。

 初の都大路出場を決めた後も選手たちの走力は上がり続けている。6人が出場した11月の記録会では、全員が3000メートルの自己ベストを更新。加藤愛とダブルエースの双子の姉、加藤若葉(3年)は左足を痛めて出場できなかったが、主将の妹は9分49秒で走り、姉の記録を約2秒上回った。加藤若が「悔しいけど愛結のタイムは自分も出せる」と言えば、加藤愛は「本番まで1秒でも伸ばしたい」と意欲を見せる。

 シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さん(47)は県岐阜商OG。出場が決まると、祝福の言葉とともに「皆さんの出場を楽しみにしています」とのメッセージを寄せた。「尚子さんがつかむことができなかった夢をかなえられたのは誇り。全員でベストの走りをしたい」と加藤愛。偉大な先輩が走れなかった都大路での健闘を誓った。【鈴木英世】

仙台育英、底力充実

朝練習で走り込む仙台育英の女子選手たち=宮城県多賀城市で

 連覇を狙った昨年の都大路。レース直前に主力選手2人が故障で出場を回避したものの、最終5区の2キロ過ぎまでトップを守り、3位に食い込んだ。仙台育英(宮城)の釜石慶太監督(32)は「チームの底力を感じられた。ただ連覇の可能性は高かったので、すごくもったいないことをした」と振り返る。

 夏合宿で1日40キロ近く走り込む豊富な練習量で有力選手を鍛え上げ、成し遂げた一昨年の優勝。釜石監督は昨年に故障者が相次いだ反省を踏まえ、今年は練習での走行距離を7割程度に抑え、自主的な追加走行も禁じた。代わりに練習後の栄養補給を促し、栄養講習を受けさせるなど選手の体のケアに細心の注意を払ってきた。

 一方で23年ぶりの優勝を経験したことで、選手たちの意識に変化も生じた。空き時間に補強運動やストレッチに取り組む姿が増えたといい、「私が現役だった頃の雰囲気になってきた。自信をもって練習に取り組めている」。2004年、2時間1分32秒の大会記録(当時)で都大路を制した当時の男子メンバーでもある釜石監督は目を細める。

 ケニア人留学生のエスタ・ムソニ(3年)が今夏に右大腿(だいたい)骨を骨折した影響で不出場だった県予選会も、予選会タイムは全国制覇した一昨年に8秒差まで迫った。5人の主力の3000メートル自己ベストは9分7~16秒台と好記録を連発。ムソニは再び都大路のメンバーから外れるが、釜石監督は「日本人だけで良い勝負ができるはず。各学年に全国トップレベルの選手がそろうバランスが強み」と手応えを深めている。

 昨年優勝を譲った神村学園(鹿児島)を倒してV奪還へ。そのための準備は着々と整っている。【伝田賢史】

興譲館、判断力醸成

都大路に向けて調整する興譲館の選手たち=岡山県井原市の興譲館高グラウンドで、戸田紗友莉撮影

 昨年の都大路。最終5区を走った興譲館(岡山)の落合莉子主将(3年)は入賞となる8位でフィニッシュした。9位とはわずか2秒差。「入賞争いでこれだけの歓声。優勝したらもっとすごいのかな」。そんな思いが頭を巡ったという。

 藤井裕也監督(27)も思いは同じだ。チーム初のケニア人留学生ムワンギ・レベッカ(3年)を招いてから3年目の集大成。新たにケニアからワングイ・エスター・ワンブイ(1年)も加わった。藤井監督は「入賞では満足できない。もう一つ上のステージにいこう」と言い続け、頂点を狙って1年間を過ごしてきた。

 今年は個人練習の時間を大幅に増やし、1週間のうち、2日間を個人練習に充てた。おのおのが自らに必要な練習が何かを考える。大学や実業団では個人練習の時間が増えることから「慣れる」意味もあるが、一番の狙いはレース中の状況判断力の醸成だ。団体競技の駅伝だが、走っている時の判断はほぼ一人でしなければならない。位置取りや勝負を仕掛けるタイミング、さらにはアクシデントへの対応。藤井監督は「日ごろから自分で考えることで判断力が養える。それが勝負強さにもつながる」と説明する。

 1区を任される森陽向(1年)は、個人練習では先輩の助言も参考にしながら体幹トレーニングでフォームの安定に努めてきた。1年で3キロのタイムを40秒以上も縮め、「中学時代はがむしゃらに走るだけだったが、今はレース中に駆け引きもできるようになった」と明かす。

 2005年と10年には優勝も果たし、04年から10年連続3位以内を維持した強豪も、ここ5年間では15年の6位が最高成績。ただ、今年の県予選会タイムは全国3位に位置するだけに「今年は勝負できる。メンバーも理想型」と藤井監督。復活への準備は整った。【大東祐紀】


女子歴代10傑◇

 学校        記録        大会

(1)埼玉栄(埼玉)   1時間6分26秒  96年全国大会

(2)神村学園(鹿児島) 1時間6分32秒★ 19年鹿児島

(3)仙台育英(宮城)  1時間6分35秒★ 17年全国大会

(4)興譲館(岡山)   1時間6分50秒  10年中国

(5)興譲館(岡山)   1時間6分54秒  05年全国大会

(5)豊川(愛知)    1時間6分54秒  13年全国大会

(7)埼玉栄(埼玉)   1時間6分56秒  96年埼玉

(8)埼玉栄(埼玉)   1時間7分0秒   97年全国大会

(9)立命館宇治(京都) 1時間7分6秒   07年全国大会

(10)神村学園(鹿児島) 1時間7分13秒★ 19年九州

(予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)


男子歴代優勝校◇

 第1回(50)世羅(広島)     △1.46.57

 第2回(51)世羅(広島)     △1.44.31

 第3回(52)玉名(熊本)      2.18.42

 第4回(53)筑紫野(福岡)     2.15.37

 第5回(54)筑紫野(福岡)     2.18.40

 第6回(55)飾磨工(兵庫)     2.17.52

 第7回(56)常磐(福岡)      2.16.57

 第8回(57)小林(宮崎)      2.14.10

 第9回(58)常磐(福岡)      2.14.07

第10回(59)西条農(広島)     2.14.27

第11回(60)小林(宮崎)      2.13.17

第12回(61)小林(宮崎)      2.13.40

第13回(62)福岡大大濠(福岡)   2.13.57.8

第14回(63)中京商(愛知)     2.12.46.6

第15回(64)盈進(広島)      2.10.10.0

第16回(65)福岡大大濠(福岡)   2.10.45.2

第17回(66)中京商(愛知)     2.09.28

第18回(67)中京(愛知)      2.11.09

第19回(68)小林(宮崎)      2.11.00

第20回(69)福岡大大濠(福岡)   2.10.08

第21回(70)相原(神奈川)     2.11.36

第22回(71)中津商(大分)     2.11.47

第23回(72)世羅(広島)      2.12.59

第24回(73)小林(宮崎)     ▲2.11.56

第25回(74)世羅(広島)      2.08.40

第26回(75)大牟田(福岡)     2.09.11

第27回(76)大牟田(福岡)     2.09.57

第28回(77)小林(宮崎)      2.10.43

第29回(78)小林(宮崎)      2.10.57

第30回(79)中京商(岐阜)     2.10.55

第31回(80)中京商(岐阜)     2.10.07

第32回(81)報徳学園(兵庫)    2.10.23

第33回(82)西脇工(兵庫)     2.08.46

第34回(83)報徳学園(兵庫)    2.07.04

第35回(84)報徳学園(兵庫)    2.08.05

第36回(85)報徳学園(兵庫)    2.06.43

第37回(86)市船橋(千葉)     2.06.30

第38回(87)埼玉栄(埼玉)     2.05.57

第39回(88)大牟田(福岡)     2.05.53

第40回(89)報徳学園(兵庫)    2.04.49

第41回(90)西脇工(兵庫)     2.05.44

第42回(91)大牟田(福岡)     2.06.47

第43回(92)西脇工(兵庫)     2.05.12

第44回(93)仙台育英(宮城)    2.05.25

第45回(94)西脇工(兵庫)     2.03.21

第46回(95)西脇工(兵庫)     2.05.20

第47回(96)報徳学園(兵庫)    2.05.08

第48回(97)西脇工(兵庫)     2.03.18

第49回(98)西脇工(兵庫)     2.03.32

第50回(99)仙台育英(宮城)    2.05.04

第51回(00)大牟田(福岡)     2.04.48

第52回(01)仙台育英(宮城)    2.03.46

第53回(02)西脇工(兵庫)     2.04.03

第54回(03)仙台育英(宮城)    2.02.07

第55回(04)仙台育英(宮城)    2.01.32

第56回(05)仙台育英(宮城)    2.05.04

第57回(06)世羅(広島)      2.03.18

第58回(07)仙台育英(宮城)    2.03.55

第59回(08)佐久長聖(長野)    2.02.18

第60回(09)世羅(広島)      2.04.09

第61回(10)鹿児島実(鹿児島)   2.03.59

第62回(11)世羅(広島)      2.03.50

第63回(12)豊川(愛知)      2.02.55

第64回(13)山梨学院大付(山梨)  2.03.53

第65回(14)世羅(広島)      2.02.39

第66回(15)世羅(広島)      2.01.18

第67回(16)倉敷(岡山)      2.02.34

第68回(17)佐久長聖(長野)    2.02.44

第69回(18)倉敷(岡山)      2.02.09

 タイム欄の△印は32キロ、▲印は41.795キロ、その他は42.195キロ。校名は大会当時


女子歴代優勝校◇

 第1回(89)市船橋(千葉)     1.09.48

 第2回(90)群馬女短大付(群馬)  1.08.51

 第3回(91)筑紫女学園(福岡)   1.08.28

 第4回(92)市船橋(千葉)     1.08.26

 第5回(93)仙台育英(宮城)    1.07.32

 第6回(94)仙台育英(宮城)    1.07.54

 第7回(95)埼玉栄(埼玉)     1.08.13

 第8回(96)埼玉栄(埼玉)     1.06.26

 第9回(97)埼玉栄(埼玉)     1.07.00

第10回(98)田村(福島)      1.07.56

第11回(99)筑紫女学園(福岡)   1.07.59

第12回(00)立命館宇治(京都)   1.08.05

第13回(01)諫早(長崎)      1.08.10

第14回(02)筑紫女学園(福岡)   1.08.24

第15回(03)須磨学園(兵庫)    1.07.46

第16回(04)諫早(長崎)      1.07.33

第17回(05)興譲館(岡山)     1.06.54

第18回(06)須磨学園(兵庫)    1.07.34

第19回(07)立命館宇治(京都)   1.07.06

第20回(08)豊川(愛知)      1.07.37

第21回(09)豊川(愛知)      1.08.27

第22回(10)興譲館(岡山)     1.07.50

第23回(11)豊川(愛知)      1.07.29

第24回(12)立命館宇治(京都)   1.07.22

第25回(13)豊川(愛知)      1.06.54

第26回(14)大阪薫英女学院(大阪) 1.07.26

第27回(15)世羅(広島)      1.07.37

第28回(16)大阪薫英女学院(大阪) 1.07.24

第29回(17)仙台育英(宮城)    1.06.35

第30回(18)神村学園(鹿児島)   1.07.25


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