仙台育英、男女で奪冠

毎日新聞

 仙台育英(宮城)が男子は「復活」、女子は「常勝」を印象づける男女同時優勝を果たした。京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に22日行われた男子第70回、女子第31回全国高校駅伝競走大会。男女同時優勝は1993年の仙台育英、2015年の世羅(広島)に次ぐ3度目の偉業。

 優勝回数を歴代2位の「8」に伸ばした男子は歴代2位タイの好タイムをマーク。2位は前回優勝の倉敷(岡山)で、上位2チームが2時間1分台を記録したのは大会史上初。2回目出場の宮崎日大と初出場の自由ケ丘(福岡)が初入賞(8位以内)。

 歴代最多タイの4回目の優勝を果たした女子も歴代5位タイの好タイム。前回優勝の神村学園(鹿児島)は2位だった。

 (スタート時の気象▽女子=曇り、気温10度、湿度67%、北北東の風0・1メートル▽男子=曇り、気温10度、湿度65%、南東の風0・1メートル)

 ◆女子

留学生故障、全員で補う

 3区から4区につなぐ第3中継所直前。仙台育英の清水が優勝候補・神村学園の黒川を抜き、トップに躍り出た。「(神村学園に)10回に1回勝てるかどうか」と思っていた釜石監督が優勝を確信した瞬間だった。

 後半勝負を想定していた釜石監督にとって、2区間を残しての逆転はうれしい誤算だった。立役者になったのは1区を担った2年生の小海だ。5・5キロ付近で和歌山北の小倉と先頭に立つと、一度は引き離されながらも中継所直前で抜き、トップでたすきをつないだ。「勢いをつけるためにも区間賞を取りたかった」と小海。1区14位と振るわなかった神村学園に34秒差をつける快走だった。2区での後退は想定内。抜かれた神村学園との差はわずか6秒しかなく、実力者の木村を最終5区に配置した仙台育英にとっては、まさに理想的なレース展開だった。

 28回目の出場にして、初めて日本選手だけで挑んだ大会は新たな挑戦でもあった。エース格だったケニア人留学生のムソニが8月に右大腿(だいたい)骨を骨折。全治1年の重傷で、チーム内に暗い空気が広がった。釜石監督も、その後の合宿で「(都大路優勝の)目標を変更するか話し合ってくれ」と選手に伝えたほど。だが、選手たちがミーティングで出した結論は「優勝を狙う」だった。

 主将で5区の木村は「(ミーティング以降)目的意識を持って練習するようになった」と明かす。さらに学年の垣根を越えて話し合ったことで「仲間意識が芽生え、チームが一つにまとまった」。伸び悩んでいた小海も木村からアドバイスを受けて、急成長した。

 神村学園に敗れて、連覇を逃した前回大会から丸1年。チームの危機を乗り越えた先に2年ぶりの栄冠が待っていた。【大東祐紀】

神村学園、涙の2位

 神村学園が連覇以上に意識したのは、都大路の歴史を塗り替えることだった。「今までと違う勝ち方で(大会)記録にチャレンジした」と有川監督。高校総体1500メートル覇者のケニア人留学生、バイレを2区に起用して先行逃げ切りを狙ったが、出だしから連覇のシナリオに狂いが生じた。

 チームは仙台育英を徹底マークしていた。1区での差を10秒以内と想定していたが、木之下が遅れ、34秒差に。「緊張でメンタルをコントロールできなかった」と木之下。

 たすきを受けたバイレは快走したが、前半から飛ばしたために「最後1キロがきつかった」。区間2位の力走でトップに立ったものの、設定タイムの12分15秒から10秒遅く、仙台育英との差は6秒しか広がらなかった。有川監督は「(バイレは)目に見えないところで力んでいた」と指摘した。

 全5選手が2年生。バイレの2区起用で生み出した「貯金」で、精神面での負担を減らす意図もあった。しかし、思ったより差がつかず、不安の連鎖を生んでしまった。

 アンカーの主将・中須は「来年は(他選手が)走っている背中を見たくない」。涙が乾いた後、目には闘志が宿っていた。【生野貴紀】

筑紫女学園飛躍の3位

 筑紫女学園が優勝した2002年以来のメダル獲得で3位入賞。目標だった入賞を最高の形で成し遂げ、長尾監督は「大舞台で一番の走りをしてくれた」と選手たちをたたえた。

 2区の7位から徐々に順位を上げた。3位でたすきを受けたアンカーの永長は、一時は後続に追いつかれるも残り約1キロでスパート。3人で形成していた3位集団から抜け出し、「思った以上に足が動いた」とそのまま引き離して笑顔でフィニッシュした。

 過去3度優勝の伝統校も昨年大会は15位に沈んだ。悔しさを秘めたチームは選手間競争が激しさを増し、「1秒にこだわるようになった」と永長。出場した5人中4人が1、2年生の若いチームにとって、来年への期待も高まるレースとなった。【丹下友紀子】

藤永監督「ヒヤヒヤ」 諫早10年ぶり入賞

 2年ぶり出場の諫早(長崎)が10年ぶりの入賞となる8位に入った。

 アンカーの2年・畑本は前しか見えていなかった。9位でたすきを受けたが「一つでも上に行こう」と順位さえ分からず、必死だった。

 決してスピードがあるわけではないが、粘り強い走りで区間5位と好走し8位に滑り込み、目を潤ませた。自身も都大路で2年連続1区区間賞と活躍し、マラソンで世界選手権にも出場したOBの藤永監督は「もうヒヤヒヤ。自分で走った方が楽」と苦笑いを浮かべた。

 昨年は出場を逃し、連続出場が「23」で途切れた。「負けた時にも応援してもらえた。感謝の気持ちを示す」(藤永監督)のが出発点だけに、選手たちは8位入賞を目標に掲げてきた。【安田光高】

青森山田エリザベス、納豆力で8人抜き

 女子の青森山田はアンカーのケニア人留学生・エリザベスが8人抜きの快走で区間賞を獲得。チーム順位を過去最高タイの5位に押し上げ、5年ぶりの入賞を果たした。

 1区の布施が10位でたすきをつなぐと、2区以降も「耐える走り」(大島監督)で順位を大きく落とさずにリレー。入賞圏内の8位まで30秒差でアンカーにつなぐ狙い通りの展開に持ち込むと、エリザベスは最初の1キロを3分を切るハイペースで駆け抜けた。

 エリザベスはチーム唯一の3年連続出場ながら、1年生の区間6位(2区)が最高。貧血が課題だったが、今年は食生活を改善し、苦手な納豆も食べて克服した。

 大島監督は狙い通りの展開に「全員が力を出した。上出来」と満足そうだった。【石川裕士】

 ◆男子

1年生 トラックで勝負

 息詰まるトラック勝負。仙台育英のアンカー・吉居駿は、第2コーナーで並走する倉敷(岡山)・長塩の苦しげな表情を横目でうかがうと一気にスパートした。かぶっていた白い帽子を握りしめ、最後は10メートル近い差をつけて右手人さし指を高々と突き上げてフィニッシュ。3区を走った兄・吉居大と笑顔で抱き合った。

 7区の1キロ過ぎで長塩に追いつくと、吉居駿は「負ける怖さもあったが、先頭争いを楽しく走れた」という。真名子監督の「エースの吉居大、喜早に次ぐ勝負勘がある」との見立て通り、1年生らしからぬ冷静なレース運び。並走して競技場に入っても「表情に余裕がある」と真名子監督に勝利を確信させた。

 そんな逸材がそろうチームの強さを支えるのが「リズムジョグ」と呼ばれる練習法だ。徐々にペースを上げて長い距離を走る負荷トレーニングで、「タイムを設定せず、温まった体のリズムに合わせてどんどんペースを上げていく」(真名子監督)。各選手が先頭を競い合い、最後はレースさながらに激しさを増す。「前の選手を追い、後ろの選手から逃げる」走りの原点にこだわる真名子監督の指導法に、吉居駿は「かなりきついけど、サバイバル感覚で楽しい。レース勘も磨ける」。昨年の全国中学校体育大会(全中)1500メートル優勝の実力者が、練習の成果を存分に発揮した。

 東日本大震災翌年の12年、主力部員が豊川(愛知)に集団転校した。直後に赴任した真名子監督が、愛知出身の吉居兄弟ら有力選手を少しずつ集め、ようやくたどり着いた震災後初の優勝だった。さらに04年にマークした大会歴代2位の2時間1分32秒の記録にも並んだ。頼もしい選手たちが、名門復活を最高の形で成し遂げた。【伝田賢史】

貯金守れず、倉敷2位

 3区でケニア人留学生、キプラガットの作った58秒の「貯金」を守れなかった。「先輩がつないでくれた1番のたすきで、本当に申し訳ない……」。2連覇を狙った倉敷で唯一2年生で出場したアンカーの長塩はフィニッシュ後、大粒の涙を流してうなだれた。

 トップと8秒差の5位でたすきを受けたキプラガットは、次元の違う走りで先頭へ。「走っていて楽しかった」と区間記録まで4秒差の快走を見せたが、新監督は「後半を考えれば抜かれる」と覚悟していた。6区で仙台育英・ディラングの猛追を受け、長塩にたすきが渡った時点で貯金は5秒しかなかった。

 この5年間で優勝2回、準優勝2回、3位1回と驚異的な成績を残した。ハイレベルな留学生の存在を励みに意識を高めつつ、故障の予防に気を配って継続して練習を重ねることで力をつけた。

 今大会出場した日本選手は、中学時代に個人種目で全国大会の経験がないという「雑草軍団」(新監督)。わずか3秒差で連覇は逃したが、歴代4位の好タイムは選手の成長を物語っている。【村上正】

九州学院、雪辱4位

 4位でフィニッシュした九州学院のアンカー溝上は、待ち受けた仲間の姿に思わず涙ぐんだ。

 熊本県予選で2位に終わり、地区大会を勝ち抜いての出場。県予選の悔しさを晴らす過去最高2時間2分39秒での入賞に、溝上は「負けをバネにできてよかった」とほっとした表情を見せた。

 流れを作ったのは1区の鶴川。「我慢すれば自然と(集団の)人数は減る」と先頭集団で好位置をキープし、首位と4秒差でたすきをつないだ。その後も波のない走りで、全区間を走り抜けた。

 上位入賞の常連校も14連覇中だった県予選で敗れ、「油断や甘さがあった」と禿監督は振り返る。生活を見直し、地区大会出場で準備期間が少ない中で他の試合に出場しないなど調整方法を変えた。順位は昨年と同じ4位だが、その意味は大きく異なる。【丹下友紀子】

自由ケ丘8位、初出場初入賞

 自由ケ丘の7区・西村。競技場ラスト100メートル。追い続けてきた東農大二の選手の背中を、ついに捉えた。「スプリントはチームで一番苦手」というが「一人でも抜こうと力を振り絞った」。区間2位の走りで初出場初入賞の目標を達成し「1年間、この日のために頑張ってきた。入賞できてうれしい」と笑顔をみせた。

 02年の創部時から指揮を執る岸本監督は「まさか8位なんて、強豪がたくさんいる中で信じられない。自信を持って走る姿に感動した」と目を赤くした。【大東祐紀】


仙台育英(仙台市)

 1905年に私塾「育英塾」として創立。野球、ラグビーなども強豪。主なOBに東京五輪マラソン代表の服部勇馬ら。


男子の優勝回数上位5校◇

(1)世羅  (広島)9回

(2)西脇工 (兵庫)8回

 仙台育英(宮城)8回

(4)小林  (宮崎)7回

(5)報徳学園(兵庫)6回

女子の優勝

  回数上位5校◇

(1)豊川   (愛知)4回

 仙台育英 (宮城)4回

(3)埼玉栄  (埼玉)3回

 立命館宇治(京都)3回

 筑紫女学園(福岡)3回


男子歴代10傑◇

 学校      記録       大会

(1)世羅  (広島)2時間1分18秒★15年全国大会

(2)仙台育英(宮城)2時間1分32秒★04年全国大会

(2)仙台育英(宮城)2時間1分32秒★19年全国大会

(4)倉敷  (岡山)2時間1分35秒★19年全国大会

(5)仙台育英(宮城)2時間2分 7秒★03年全国大会

(6)倉敷  (岡山)2時間2分 9秒★18年全国大会

(7)佐久長聖(長野)2時間2分18秒 08年全国大会

(8)世羅  (広島)2時間2分23秒★18年全国大会

(9)佐久長聖(長野)2時間2分28秒 19年全国大会

(10)倉敷  (岡山)2時間2分34秒★16年全国大会

(予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)

女子歴代10傑◇

 学校        記録       大会

(1)埼玉栄  (埼玉) 1時間6分26秒 96年全国大会

(2)神村学園 (鹿児島)1時間6分32秒★19年鹿児島

(3)仙台育英 (宮城) 1時間6分35秒★17年全国大会

(4)興譲館  (岡山) 1時間6分50秒 10年中国

(5)興譲館  (岡山) 1時間6分54秒 05年全国大会

(5)豊川   (愛知) 1時間6分54秒 13年全国大会

(7)埼玉栄  (埼玉) 1時間6分56秒 96年埼玉

(8)埼玉栄  (埼玉) 1時間7分 0秒 97年全国大会

(8)仙台育英 (宮城) 1時間7分 0秒 19年全国大会

(10)立命館宇治(京都) 1時間7分 6秒 07年全国大会

(予選、地区大会を含む。★は留学生を含む記録)