さいたま市にある私立開智学園中学では、授業の中で「哲学対話」をしています。4年前に始まり、のべ1300人を超える生徒が参加しています。1年生の2クラスの授業をのぞいてみました。【田嶋夏希】
開智中の1年E組とG組では、年35回ある道徳の授業のうち15回を哲学対話にあてています。授業を担当するのは土屋陽介先生(茨城大学講師、専門は子どもの哲学)です。担任の先生も、毎回対話に参加します。
まずは問いを決める
授業はゲームで始まります。場がなごやかになったところで、まずは、これから話し合う問いを決めました。教材も自分たちで選びます。E組はアラビア語の絵本です。絵から内容を想像します。
女の子には大切にしていた人形がありましたが、他のおもちゃをもらううちに、その人形は端に追いやられてしまいます。しかしその人形を弟が大切にし始めると取り返し、最後には他の全てのおもちゃを弟にあげ、人形を再び大切にするというお話です。
「なぜ人は順位をつけたがるのか」「人形とは友達になれるのか」「愛着のわく人形とわかない人形のちがいは何」「物は多い方がいいのか、少ない方がいいのか」。絵本からたくさんの問いが出ました。
「どういう問いが対話を深めやすいかな?」土屋先生が聞きます。生徒たちは「感情、心情に訴えるような問い」「みんなの意見が割れるもの」「日常で当たり前になっていることを一度疑ってみると深まるのでは」「誰もが経験していること」と答えました。結局多数決で「本当の友達とは何か」という問いが選ばれました。
「本当の友達」って?
土屋先生が「友達と知り合いの違いって?」と聞くと、みんな考え込んでしまい、しばらくの間教室は静まりかえっていました。
これでは対話になっていないのでは? と思ってしまいますが、しーんとした時間も重要なものだと土屋先生は話します。哲学対話で一番大切なのは、自分で考えることです。まずは自分の頭の中で徹底的に考えてもらうために、土屋先生は粘り強く待ちます。
「どういう人と友達になりますか?」土屋先生が少し問いを変えます。=2面につづく