毎日新聞オピニオングループ・田中洋之
ニュージーランドで先月、国旗のデザイン変更の是非を問う国民投票が行われました。結果は賛成43%、反対56%で、今の国旗が続けて使われることになりました。
ニュージーランドで100年以上前から使われている国旗は、左上にイギリス国旗(ユニオンジャック)が描かれています。これはイギリス領だったことの名残です。ニュージーランドでは10年ほど前から「国旗を変えよう」という市民運動が起こりました。今の国旗が隣のオーストラリアと似ていて混同されること、ニュージーランドらしさが感じられない、などが理由でした。同じくイギリスの植民地だったカナダは、かつてユニオンジャック付きの国旗でしたが、カエデの葉をモチーフにした国旗に変更されました。ニュージーランドはカナダにならって国旗を変えようとしたのです。
新たな国旗のデザインは昨年12月に1回目の国民投票で5点の候補から一つに絞りました。新デザインは、ニュージーランドに自生する植物シダの葉をあしらったものです。シダの葉はニュージーランド代表のラグビーチーム「オールブラックス」のエンブレムにも使われています。
しかし、ニュージーランド国民の多くは、現状維持を選びました。今の国旗のもとで戦争に参加した元軍人たちも変更に反対していました。日本では、2020年東京オリンピック・パラリンピックの当初のエンブレムが国民不在で決められ、撤回に追い込まれました。国のシンボルを国民自らが選ぶというニュージーランドの取り組みは高く評価できます。
通算8年半にわたりモスクワ特派員をつとめ、ユーラシア大陸の各地を取材した。ロシアが生んだアニメ「チェブラーシカ」を愛する。1965年生まれ。