渋み成分の性質が変わるから
Q 干し柿はなぜ干すだけで渋が抜けて甘くなるの?(横浜市金沢区・小5・藤川清志郎さん)
A 1894年創業の果物店、銀座千疋屋の店長、太田政孝さんに聞きました。
柿には、甘柿と渋柿があります。渋柿が渋いのは、お茶にも含まれる渋み成分としても有名なタンニンがあるからです。
渋柿のタンニンには、「可溶性」といって水に溶けやすい性質があります。唾液と混ざり合って溶け出し、渋さを感じます。
甘柿にもタンニンが含まれていて、実が熟していないうちは渋い味がします。でも実が熟して色づいてくるとともに、タンニンが水に溶けないものに変わります。この変化を「不溶化」といいます。
一般に、果肉に「ゴマ」と呼ばれる茶色いツブが多い柿は甘い、と言われます。この「ゴマ」は、タンニンが不溶化して固まったものです(種類によっては、ゴマがなくても甘いものもあります)。一度不溶化したタンニンは、食べても渋さを感じないので、甘くなったと感じるのです。
人の手でタンニンを不溶化させることを、昔から「渋を抜く」と呼んできました。その一つが干し柿です。干して水分を抜くとタンニンが不溶化し、栄養価も増すので、冬の保存食としても役立ってきました。
家庭で干し柿を作る機会が減った今も、「昔が懐かしい」などの理由で干し柿を買い求める人が多く、銀座千疋屋では12月ごろから売り出される1個約1000円の高級な干し柿が人気だそうです。
干す以外にも、タンニンを不溶化させる方法があります。お皿に焼酎などの酒を少し注ぎ、柿のヘタの部分を2、3回浸したあと、柿をポリ袋に密封して1週間くらい室内に置くのです。アルコールは飛んでしまうので子どもでも食べられます。
どんな味に変わるか、渋柿があったら家族と試してみてください。【阿部祐子】